●TIME LIMIT〜新婚編〜おまけ●
※須本さんの担当の生保レディ視点です
「実は結婚したので、受取人の変更をお願いしたくて」
そう須本先生から声を掛けられた私は、思わず言葉を失ってしまった
ついに、ついに、この日が来たのねーーー!!
私が初めて須本先生にお会いしたのは、私がまだ新人の生保レディ
このT医科大学を職域に与えられた私は、毎日毎日この病院に通っ
もちろんここで働くスタッフから契約を貰う為にだ。
でも病院という場所はどの時間に行ってもスタッフ皆忙しそうで、
笑顔で話しかけても、素っ気なく返されたり、無視されたり、逃げ
たまに話を聞いてくれる人もいたけど、中々契約までには結びつか
(こんなに毎日毎日通って本当に意味あるんだろうか…)
(というか今月も契約取れなかったら私クビなんだけど…)
営業の世界というのはどこもシビアだ。
そしてストレスが半端ない。
最近は朝礼時に同僚の成約発表を聞いただけで落ち込むようになっ
それでも習慣のように私の足は毎日病院に向かう。
(どうせダメなのに……ああ……ストレスで胃が痛い)
限界が来て、ちょっとだけ非常階段で蹲ってると、
「元木さん、大丈夫ですか?」
と誰かが声をかけてくれた。
それが――小児科で研修医として働き出してまだ1年目の須本先生
「内科行きます?」
「いえ…、大丈夫です。ちょっと休んだら治るかと…」
「そうですか?」
すると非常階段を上がったところにある長椅子まで親切にも付き添
(うわ…、須本先生って顔もイケメンだけど、中身までイケメンな
「良かったらどうぞ」
とおまけに自販機で温かいお茶まで買ってきてくれた。
「あ…すみません、お金…」
財布を出そうとしたら
「いいですよ、俺の分買うついでだったんで」
と他人に気を使わせないトーク力まで持ち合わせていて…流石だ
「…そういえばさっき、須本先生、私のこと元木さんって…」
「え?元木さんですよね?前に確か名刺くれましたよね?」
「いや、名前覚えてくれてることにビックリして…」
確かに数ヶ月前に一度挨拶して、名刺も渡した。
彼はアンケートにも答えてくれた。
でも保険はキッパリ断られたのだ。
『今は必要ないんで』と――
「俺、結構記憶力はいい方なんで」
「私もいい方なんですよ。須本先生の誕生日だって暗記してますよ
「え、すげ…」
「だからって…、契約取れるわけじゃないですけどね…」
もう潮時かな…とも思う。
この会社に入ったのだって、子育てと両立しやすい仕事を探してる
その誘ってくれたママ友も辞めちゃってもういないし……続ける意
ただ残念なのは、うちの会社の商品自体はものすごくいいところだ
高いけど。
「私の力じゃ皆さんに上手くアピール出来なかったのが残念です…」
「…じゃ、最後に俺にアピールしてみます?」
―――え?
「でも私…、前に須本先生にはお断りされてて」
「ああ…、俺、どの保険会社の人に声かけられても、必ず一回は断
「なんですかその持論…」
「で?どうします?明日のこの時間なら、俺また時間取れますけど
「今すぐ営業所帰って最高のプランを作って来ます!明日またこの
「じゃ、また明日」
須本先生はその後すぐ呼び出しの携帯に出て、慌てて小児科に帰っ
私も急いで営業所に戻り、先輩に手伝ってもらいながらプランを作
これが最後のチャンスだと思った。
これでダメならもう辞めようと思った。
だからもう悔いの残らないぐらい、考えに考え抜いて須本先生に一番相応
翌日同時刻、小児科の医局を訪れると応接室に通された。
「お待たせしました」
と回診を終えた須本先生が約束通り来てくれた。
(もうこれだけで感無量かも…)
昨日練りに練ったプランを提案していった。
医師のみが入れる協会の定期保険と休業補償。
そして医療保険を含むそれ以外の保障をうちの総合保障でカバーする合わせ技だ。
まだ独身だけど、10年後20年後の将来を見据えて設計した私の
もちろんベテランの先輩達と違って、突っ込んだ質問にスラスラ答
何度も中断して、先輩や上司にペルプの電話を掛ける。
約1時間のプレゼンの後、須本先生は
「分かりました。ちょっと考えるので、後日返事をしてもいいです
と。
「あ、もちろんです」
「いつまでに返事をすればいいですか?」
と私の締切事情も考慮くれる優しい先生に感動する。
「…出来たら25日までに」
「分かりました。じゃあそれまでに」
「はい、よろしくお願いします。今日はお時間を取って下さってあ
「こちらこそ」
病院を出た後、私はもうやりきった感満載だった。
もう悔いなし。
これでダメだったら潔く去ろう。
そう思った翌日――須本先生から電話がかかってくる。
25日までまだ5日もあったので何か質問かなと電話に出てみると
「勧めてくれた内容のプランに入ろうと思います」
と告げられ、私の脳は停止する。
(断られたことは数多くあれど、入ると言われたことが無かったの
とりあえず
「ああありがとうございます!」
という台詞を何とか絞り出した。
翌日、私は生まれて初めて契約手続きをした。
失敗したくなかったので、先輩にも付いてきて貰った。
さすが24歳、告知もなくサクサク手続きが進む。
(わ〜すごーい…、研修医でも年収700万もあるんだ…)
「あの…、どうして入って下さったんですか?」
手続きが全て終わった後、私は意を決して彼に尋ねた。
「単純によく考えて設計されたいい内容だと思ったので」
「そうですか…?」
「ぶっちゃけ死亡保障はどこで入っても同じじゃないですか?それ
「…なるほど」
「あとは元木さんの真面目さかな」
「…え?」
「こんなに毎日毎日病院に通い詰める人、滅多にいないから。めげ
「……ありがとうございます」
涙が滲むのを頑張って耐えた。
この契約のおかげで、結果的に私はクビにならずに済んだ。
須本先生の為にも、1日でも長く続けて、彼の担当で居続けたいと思っ
その想いが次第に就業態度にも表れて来たのか、それ以降ちょこち
半年後――私がいつものように病院に行くと、彼は恋人と別れたらし
今にも寝込みそうな雰囲気だったので、
「あの、ごめんなさい……失恋がカバー出来ない保険で」
と冗談を言って彼を笑わせてみた。
2年後、再び恋人が出来て喜ぶ姿も、更に2年後にまた別れて落ち
そして彼が31歳になった8月――
「実は結婚したので、受取人の変更をお願いしたくて」
と彼が少し照れながら教えてくれる。
思わず言葉を失ってしまった。
彼にもついについに、ようやく春が来たのだ――!!
「おめでとうございます!!」
しかも奥様の医療保険も考えてるらしく、紹介してくれることにな
ご自宅に伺った際、奥様の姿を拝見して驚く。
(わ、若い…)
(19?!)
(須本先生やるわね…)
もちろんご希望の女性疾病やガンもカバーした医療保険も提案する
一応死亡保障付きのプランも案内させて貰う。
もちろん須本先生は今や年収1500万超えの高収入だし、まだ学
でも、もしもいざ最悪なことになった場合……きっと須本先生はしばらくは
奥様を愛していれば愛してるほど……きっと壮絶な喪失感を味わう
保険というのは、精神的な苦痛の上に、経済的な苦痛を与えない為
「おめでとうございます…須本先生。末永くお幸せに」
「ありがとう」
契約を終えた帰り際、私は改めて彼にお祝いの言葉を告げた。
見つめ合う二人からは幸せオーラが溢れ出ている。
何だか私の方まで嬉しくなった。
あなたの担当でよかったと、この日ほど思ったことはない。
これから先、お子様が生まれても、いつかご実家の病院を継がれて
そしていつか保険を使う日が来たら、助けてあげたいと思う。
あの日彼が私を助けてくれたように――
――おめでとう須本先生、明菜さん――
―END―
以上、須本さんの保険の担当視点でした〜。無駄に長いぜ。
ネットは自分で調べるのが面倒くさく、保険ショップはわざわざ赴くのが面倒なので、もう職場に来ている生保レディから加入する須本さんです。
元木さんは出会った当時は30歳くらいの入社5ヶ月目って感じかな。旦那と子供(3)がいるらしいよ。
最後須本さんが結婚した7年後には班のマネージャーにまでなってる元木さんなのでした★
〜〜ある日のティータイム〜〜
須本「そういや俺、元木さんから保険入った」
一ノ瀬「あ、そうなんだ?あの人真面目だよな、毎日姿見るもん」
須「見ない日あったら、あれ?どしたんだろ?って思うよな」
一「オレもぼちぼち入ろうかな」
須「すごく現実的な内容で提示してきてビックリしたよ。もっとすげ
一「はは、保険金1億とか?」
てことで一ノ瀬君も加入したそうですよ。後に千明も。
千明は綾ち