TIME LIMIT〜プロポーズ編〜





育休が明け、職場復帰してから一週間後。

また須本がおかしなことを言い出した。



「一ノ瀬…お前プロポーズってどんな感じでした?」


思わず飲んでたお茶でゴホゴホ噎せる。


「大丈夫か?」

「いやいやオマエの頭こそ大丈夫か?まさか明菜ちゃんにプロポーズする気じゃないだろうな?」

「する気だけど」

「いやいやまだ付き合い始めて2ヶ月だろ?」

「それが?」

「明菜ちゃんだって大学入ったばかりだし…。オマエだって前は卒業まで待った方がいいかなって言ってなかったか?」

「卒業まで待つ意味が無いような気がするんだよな。明菜ちゃんも学生結婚でもいいって言ってくれてるし…」

「え?!マジで…?」

「――で?一ノ瀬はどんな感じでプロポーズしたんだよ?」

「………してないけど」

「は?」

「プロポーズはしてない。オレがされた側だから――」

 

 

 

***************

 

 

 


高校の卒業式の日からずっと交際を続けてきた進藤千明。

もちろんオレだっていつかはプロポーズする気だった。

というか30までにはする気だった。


そんな彼女から

「今度の休み、ディズニー行こうよ」

と誘われたのは29歳の11月下旬。

クリスマスのイベントがスタートしたディズニーシーで、久々にデートすることになった。

夜になるとウォーターフロント前のツリーはイルミネーションがものすごく綺麗で。

二人で眺めてる時に彼女が突然言い出した。


「美鈴と明人がね、結婚するんだって」

「え?!早くないか?」


二人が交際を始めたと進藤から聞いたのはつい最近の話だ。

おそらくまだ一ヶ月は経っていない。

それなのに結婚を決めた理由はおそらく一つ。


「うん…デキたんだって」

「そうなんだ…」


避妊してなかったのか?とか。

もしかしたらワザとなのかな…とか。

オレらもたまに生でするけど、今までよくデキなかったよな…とか、ツリーを見上げながら色々考えていた。


「ねぇ…一ノ瀬」

「ん?」

「私達も……結婚しない?」


一瞬思考が停止し、オレは目を見開いた。

結婚…。

結婚…?

どうやらオレは今進藤にプロポーズされたらしい。

え?嘘だろ?プロポーズって男の方からするんじゃないのか?

最近はそうでもない?

いや、前からそうでもない?


とりあえず、断る選択肢はないので

「いいよ」

と了承の返事をする。

進藤の顔がホッとなって、頬を赤く染めて微笑んできた。


「ありがとう…、改めてこれからよろしくね」

「うん…、こちらこそよろしく」





こうしてオレらも結婚することに決まった。

婚約指輪は後日改めて一緒に買いに行った。

もちろん進藤の両親にも結婚の許しを貰って、オレの親にも報告して。

そして婚約指輪が出来上がった頃にはオレらは既に入籍していた。



プロポーズは自分から出来なかったけど、オレはその指輪を進藤の左手薬指にハメてあげたあと……

「結婚してくれてありがとう」

と指にキスしたのだった――



 

 

***************

 

 




「――なるほど。さすが裁判官、判決は下される側じゃなくて言い渡す側ってことか」

さすが進藤さん、と須本が感心している。

「プロポーズは別に判決じゃないから」

「じゃあつまり一ノ瀬は逆プロポーズを彼女にさせてしまったヘタレ野郎ってことでOK?」

「うるせーよ」

「俺はどうしようかな〜」

「……」


まだ19歳、付き合って2ヶ月しか経ってない明菜ちゃんにするプロポーズを真剣に考えてる須本。

でも3年前、コイツは別の人との結婚を考えていた。

ただ、その時と今とでは表情がまるで違う。

本当に幸せそうで、明菜ちゃんのことが本当に好きなんだなぁ…っていう気持ちがこっちにまで伝わってくる。


「…須本、プロポーズするなら絶対幸せにしろよ。明菜ちゃんを泣かせたら許さないからな」

「それは女の子の父親になった一ノ瀬からの忠告ってわけ?」

「オレは明菜ちゃんのこと、6歳の頃から知ってるからな。一ノ瀬お兄ちゃん好き〜って言われたこともあったし」

「は?ズルすぎだろソレ」

「ははは〜」



オレだって、親友にはやっぱり幸せな結婚をしてほしいと思う。

大事な妻の妹にももちろん幸せな結婚をしてほしい。

ものすごく早い気もしなくもないが、まぁこの二人なら…須本と明菜ちゃんなら、きっと上手くいくと思う。

二人の幸せそうな様子を見る度に、巡り合わせて良かったと心の底から思う今日この頃だった――


 



END

 

 

 

以上、千明と一ノ瀬君の逆プロポーズ話でした〜。
千明からプロポーズしたってのはあちこちで書いてると思うんですが、そういえばそのシーンをちゃんと書いてなかったなと。
ディズニー大好き千明ですので、プロポーズもディズニーでしちゃうよ★
というか一ノ瀬君、30までにはする気とか言ってますが、もう29歳の冬ですよ(笑)いつするつもりだったんでしょうかね…。
あんまり遅くて千明に判決を言い渡されるというねw
でもって須本君は明菜ちゃんともう結婚する気満々みたいですな!