●TIME LIMIT〜挨拶編〜●
「もう!アンタって子は心配ばかりかけて!いつになったら帰ってくるのかと思ってたわよ!」
お母さんの両親に挨拶に行った後、次はお父さんの両親にも結婚の挨拶に行ったお父さんとお母さん。
私が生まれてからずっと音信不通だった上、今日も突然の訪問。
おばあちゃんはカンカンに怒ってお父さんを怒鳴っていた。
「だからゴメンって。オレも忙しかったんだよ。…子育てで」
「アンタが子育てねぇ…」
「まぁいいじゃないか。連絡が無かったってことは、元気で頑張ってた証拠だよ」
「そうそ。さすが父さん♪」
「…はぁ。アンタのその脳天気さはあなたに似たのね。千明ちゃんに似なくて良かったわ」
おばあちゃんがお母さんの手を取って、
「塔矢さん本当にごめんなさいね」
と謝っていた。
「あ、いえ…」
「ヒカルをよろしくお願いしますね」
「はい」
続いて私の方にも。
「千明ちゃん、今まで大変だったでしょう?」
「え?うーん…まぁ」
大変だったような…大変じゃなかったような?
でも、父親がお父さんで嫌だと思ったことは一度もないよ。
私を一人でここまで育ててくれた、私のたった一人の掛け替えのないお父さんだもん。
「困ったことがあったら、これからは私にも遠慮なく言ってね」
「ありがとう…おばあちゃん」
その日の夕飯は、そのままお父さんの実家で食べた。
「あ…味付けがお父さんと同じだ」
「あらやだ、千明ちゃんそれ本当?ヒカルったら…」
「仕方ないじゃん。家出るまでずっと母さんの料理で育ったんだし」
「でもおばあちゃんの方が美味しいよ」
「あら〜嬉しいわ」
「千明、お前っ」
「ホントのことだもーん」
「う…」
もっと練習しよう…とお父さんは落ち込んでいた。
お母さんはその横で、僕も進藤好みの味を作れるようにならないと、とか力んでいた。
おじいちゃんは黙々と食べ続けている。
ふーん…お父さんはこういう家庭で育ったんだ。
お母さんの家庭とはまた違う感じで面白かった。
今まで私の家族はお父さんしかいなかった。
でも、今日でたくさん増えた。
家族が多いのってやっぱりいいな♪
もっともっと増えるといいなぁ。
―END―