TIME LIMIT〜帰省編〜 1〜美鈴視点〜





『美鈴久しぶり!若葉がこっち帰って来たんだけど、予定合うならお盆にまた女子会しない?』



そう地元の友達から連絡が来たのは、7月下旬だった。

結婚して以来、孫の顔を見せに年に2回帰省をしている私達家族。

帰省の度に地元の友達とは会っていて、毎回お互いの近況報告をしていた。


(若葉…、地元に帰っちゃったんだ…)


高校卒業と同時に上京した私。

幼稚園の時からの腐れ縁の若葉も同じで、東京の大学に進学した。

そのままこっちで就職して、結婚して、子供も生まれたはず。

それがなぜ地元に帰ることに?


(めっちゃ気になる…)



「明人君、お盆はいつも通りウチの実家に帰省でいい?」

「いいよ」

「また女子会しようって話になってるんだけど、行ってきてもいい?」

「もちろん」

「ありがと♪」


息子と一緒にアニメを見ながら、娘をあやしてくれてる明人君。

対局がない日は積極的に育児をしてくれてるウチの旦那様は、私が数時間留守にしようがなんてことないのだ。

もちろん私がそういう風に旦那を教育したのだけれど。


(帰省楽しみ♪)


鼻歌を歌いながら、私は昼食作りを再開した――










「お帰りなさい、待ってたわ」


予定通りお盆に私の実家にやってきた。

半年に1回しか会えない孫との再会に、両親もニコニコだ。


「明人さん、運転大変だったでしょう?疲れてない?混んでなかった?」

「渋滞もそんなに無かったので大丈夫です。美鈴さんと交代で運転してましたし、疲れもそんなに」

「あら、やっぱり若さかしら」


妻の実家に帰省すると、夫は上げ膳据え膳となるのが世の中の常だ

でも明人君は子供達の世話を家にいる時と変わらずしてくれる。


その上まるで旦那の実家に帰省した嫁のように

「何かお手伝いすることはありますか?」

と母に尋ねていた。

「大丈夫よ〜、夕飯までゆっくりしてね」

「ありがとうございます」


母に断られた明人君は、

「じゃあ美明と公園行ってこようかな」

と私に打診してきた。

「いいね、私も行こうかな」



ということで、娘もベビーカーに載せて4人で近所の公園に向かった。

団地の中心に位置するこの児童公園は、私が小さい時、千明と毎日のように遊びに行っていた思い出の場所だ。

遊具もその時から変わっていなくて、すべり台、ジャングルジム、ブランコ、鉄棒、そして砂場くらいしかない小さな公園。

真夏の今日はだいぶ暑いので、ちょうど木陰になってる砂場で子供達と明人君は遊びだした。

私はすぐ横のベンチに座ってその様子を眺めてみる。


(何か既視感があるんだよね…)


きっと明人君がお義父さんと瓜二つだからだろう。

昔千明と遊んであげていた姿と被るのだ。

千明はお義父さんがハタチの時の子供だ。

美明も、明人君がハタチの時の子供なので全く同じなのだ。


現在23歳の明人君。

先月本因坊を無事防衛し、現在は碁聖の防衛戦真っ只中の五冠だ。

おまけに先週名人リーグを71敗の単独トップで勝ち抜け、名人戦の挑戦権も手に入れてしまった彼。

月末から名人戦の七番勝負も始まる予定だ――六冠に向けて。


(六冠って何…?)


ちょっと勝ちすぎじゃない?

そんなもん?

確かにお義父さんも一時七冠独占してた時もあるみたいだし、六冠時代も長かったみたいだけど……


ちなみに現在五冠ということで、賞金ランキングはもちろんトップの明人君

相変わらず彼の通帳は私が管理してるわけだけど、残高の桁が最近おかしなことになっている。


(もし銀行が潰れたら1000万しか保証してくれないわけだから、もっと色んな銀行に分散した方がいいのかな…)

(それか投資に回した方がいいのかな…)

(住宅ローンなんてもう一括返済しちゃうべき?)


明人君はその辺はおそらく何にも考えてないと思うので、私がしっかりしなければ…!

とりあえず帰ったら一度FPとかに相談してみようと思った。


(そういえば明菜ちゃんの旦那さんの須本さんは、FP資格どころか税理士資格も持ってるらしい)

(一ノ瀬さんも須本さんのアドバイスを元に投資してるって言ってたし、先に彼に一度聞いてみるべき?)


「明人君、明菜ちゃんの旦那さんと一局打たない?」

「須本さんと?いいよ」

「ちょっと相談したいことがあるんだよね。一回家に呼ぼうと思うから、お礼に一局打ってあげてよ」

「別に須本さんならお礼じゃなくても打ちたいけど」

「そうなんだ。とりあえずよろしく」

「うん」



1
時間ほど公園で遊んだ後、実家に戻った私達。

疲れたのか、着くなり子供達はすぐにお昼寝に入ってしまった。

ちなみに明人君も一緒に。


(うふふ…、3人とも可愛い寝顔)


カシャッと記念に携帯で写真を撮った私がいた――

 

 

 


CONTINUE