TIME LIMIT〜学歴編〜 おまけ 後編

※マチアプに挑戦する櫻井君





当日14時。

待ち合わせのコンビニ前に行くと、まだ10分前にも関わらずもう彼女の姿はあった。


(マチアプでも本当に会えるもんなんだな…)


写真は少し加工してあったのだろうか。

確かに量産型女子ではあるけれど、写真より少し落ち着いて(地味に)見えた。



「莉音さんですか?」

と声をかけると、彼女が顔を上げる。

「初めまして。慎一です」

と名乗ると、ポカンとする彼女の姿が。


「あ…ごめんなさい。あまりに写真と違ってて…」

「え?あ…、すみません。あれ、同僚にイジられて…」

そういえばオレの写真も思いっきり加工されてたことを思い出した

「…ごめんなさい。私も加工してました。本当はこんな顔ですみません…」

「え?いえ…、お互いさまですしね」



とりあえず目的のカフェに一緒に向かう。

カフェ巡りが趣味だという彼女のオススメの店らしい。


「あの…、身長171cmって書いてましたけど……もっとありますよね?」

「そうですね、本当は181です。何かすみません…同僚が」

「もしかして…、全部嘘な感じですか?医者っていうのも…」

「あ、いえ、それは本当です」

「……私は嘘です。本当はフリーターで…、年収も300万もありません」

「そうなんですね。オレも年収は嘘ですよ。本当はもうちょっとあります」

「……そうなんですか」



カフェに着き、彼女オススメのコーヒーを注文してみた。

待ってる間に、もう少しお互いを深掘りしてみる。


「さっきフリーターって言ってましたけど、具体的には何の仕事をされてるんですか?」

「事務です。入力とか電話番とか…」

「そうなんですね」

「すみません…、何か不釣り合いで」

「え?いえ、事務仕事も大変ですよね。オレも医局秘書がいなかったら正直手一杯だと思うので、事務方にはいつもすごく助けて貰ってます」

「いえ…誰でも出来る仕事なので」

「……」


なんだろう…、物凄く自己肯定感が低い人だな。

メッセージのやり取りだと、全然そんな感じに思えなかったのに。


「そういえばプロフィールに旅行も趣味って書いてましたけど、オススメはどこですか?」

「一番好きなのはインドです」

「インド?一人で行かれるんですか?」

「ほとんど一人ですね。友達には嫌がられるので…」

「危なくないですか?」

「夜間は出歩かないとか、配車アプリを上手く使えば何とか」

「へぇ…、どの地域がオススメですか?」

「ジョードブルは青い都市が映えてオススメかもです」


去年行ったというので、写真を見せて貰う。

その後も旅行の話を続けると、だんだん饒舌になっていく彼女。

どうやら緊張していただけらしい。

あっという間に2時間が経ってしまった。



「あの、そろそろ出ましょうか」

「そうですね」

「あ、ここは私が払いますね。私が誘ったので」

「え?いいですよ。先に出てて下さい」

「え…、でも…、…ありがとうございます」


会計を済ませてカフェを出ると、彼女が申し訳なさそうに

「すみません…、ご馳走さまでした」

と謝ってお礼を言ってきた。

「いえ。これからどうしましょうか?」

「あ…、本屋とか行きませんか?確か読書が趣味って…」

「いいんですか?じゃあ紀伊國屋に行ってもいいですか?」

「もちろんです」



新宿本店まで移動することになる。

デート中にも関わらず医学書コーナーで読み耽るオレに、彼女も時折気になった本を手にして、近くで時間を潰してくれていた。

親切な人だと思う。

そして一緒にいて疲れない。


(こういう人となら、付き合うのもアリかもしれない)

(でも、この人もオレが医者だからいいねして来たんだよな…)


全然そんな風に見えないけど、内心は下心満載なんだろうかと疑ってしまうオレがいた。



「すごく集中されてましたね」

「あ…、すみません。あそこに行ったらいつもそうで…」

「そうなんですね。仕事熱心なんですね」


気付いたらもう夕方で、そのまま夕食も一緒に食べることになる。

インド好きな彼女オススメの、本格的カレー屋で。



「また近々インドに行こうと思ってるんです」

「夏休みとかにですか?」

「いえ、仕事辞めて今度はガッツリと1年くらい」

「へぇ…」

「だからごめんなさい……もう会えないです」


ん?

どうやらオレはフラレたらしい。

まだ付き合ってもないけど……


「ごめんなさい…、マチアプも友達が勝手に登録して、慎一さんと初日にメッセージをやり取りしてたのも友達なんです」

「…そうなんですね」

「マチアプしてる医者なんて絶対遊んでるから、遊んで貰えばって…」

「……」

「でもメッセージしばらくやり取りしてて、思いました。たぶんこの人、友達が言うような遊んでる人じゃないなって」


だから会ってくれたらしい。

でも実物が写真と全然違ってて、困惑したらしい。

「マチアプ怖…って一瞬思いました」

「はは…」




夕食を終えた後、解散になる。


「少しの間でしたけど、ありがとうございました」

「いえ…、気を付けてインド行ってきて下さいね。じゃ…」

去ろうとすると、

「あの…」

と呼び止められる。


「慎一さんはマチアプじゃなくて、普通の出会いの方がいいと思います…」

「…え?」

「今日一日、ずっと警戒してましたよね?もちろん無理ないと思いますけど…」

「……」

「その容姿で医師だと、普通にモテますよね?」

「…そうかもしれません。でも…、そのせいでオレ自身を見てくれる人は……ほぼいないんですよ」


一人でいいのに。

一人でいいから、ありのままの自分を好きになってほしい。

それってそんなに高望みなんだろうか。


「じゃあ…、信頼出来る人からの紹介で出会うのが…いいかもしれませんね」

「信頼出来る人…ですか」


そんなの…一人しか思い浮かばない。




……須本……




確かにアイツが紹介してくれた人なら、迷わず交際しそうな自分がいた。


彼女と別れて帰路につく途中で、もうマチアプを退会してアプリを削除したオレがいた。


 

 

 

 

 

 

 



「え?!櫻井、実際に会ったんだ?!」


翌日、幸野に話すと「どうだった?どうだった?」と興味津々に聞いてきた。


「別に…」

「別にって何だよ?教えろよ」

「とりあえずマチアプはもう辞めた」

「ええ?!何でだよ〜〜」

「オレには合ってない」

「ええ?!じゃあお前、どこで恋人見つけるつもりなんだよ〜〜」

「……」


 

 

 

 

 

 

 


5
年後。



「須本、奥さんに話してくれた?」

「いや、まだだけど…」

「頼んだからな?!」

「ええー…、紹介なんてしなくてもお前なら普通に見つかるだろ…

「その言葉、そっくりそのまま返すから。お前だって一ノ瀬に頼んだくせに」

「…まぁな」



何だかんだ言いながら、奥さんの友達を紹介してくれた須本。

信頼出来る人からの紹介は、確かに安心感が最初からまるで違う



「好きです。オレと付き合ってくれませんか?」

「…はい、私も大好きです…///



10
年ぶりに恋が出来たオレがいた――

 

 

 

 

―END―

 

 

 

以上、櫻井君のマチアプ体験話でした〜。
26
歳の年収900万の医者が現れたら、そりゃ皆「いいね」しますよね〜ってことで大量通知です(笑)

ちなみに幸野君も同じ条件ですが、櫻井君の方がいいね数が多いのです。
それはもちろん写真のせいです。
櫻井君の写真、昼休みに撮ったものなので当然白衣姿なのです。
医者だと職業嘘ついて登録する野郎もいますからね、一気に信憑性が増したんでしょうな。

でも結局ウン百人からいいねされた櫻井君ですが、コンタクトを取ったのは一人だけという…。
しかも会うまでに3週間かけるという慎重ぶりです。

きっとたいして興味のない子とずっとメッセージをやり取りするのが苦痛だったんでしょうね…。
一人で懲りて、即退会した模様です(笑)

ちなみに相手の莉音さんも友達に強引に登録されてしまったみたいですね。

年収とか盛られたそうです。写真も(笑)
長期の旅行にちょこちょこ行きやすいように、フリーターって感じかな。


 

〜紹介する子が決まりました〜


明菜「百合子は年下がいいから無理だって」

須本「そっかぁ…(百合子ちゃんはちょっと櫻井と合わないような気もするけど…)」

明菜「でも惣田さんが会ってもいいって」

須本「本当?よかった(あの子なら容姿も申し分ないし、性格もいいし、落ち着いてるし、医者の妻を狙うような子でもないし、櫻井に合いそうかも!)」


百合子ちゃんは確かにちょっと櫻井君とは合わないかもしれませんね(笑)