TIME LIMIT〜学歴編〜 おまけ 前編

※マチアプに挑戦する櫻井君





「くっそー、須本だけ彼女作りやがって〜〜」



例の合コンから数週間後。

須本が例の有馬さんと交際を始めたらしい。

それが気に入らない幸野が

「よし!櫻井、一緒にマチアプしようぜ!」

と誘ってきた。


「しない」

「まぁそう言うなよ〜。面倒な登録はオレがしてやるから」

スマホを取られ、幸野が勝手に操作し出した。

仕方ないのでオレは横で仕事をしながら、流し聞きすることにする


「えーと、年齢は26だよな。血液型は?」

O型」

「マジ?Aだと思ってたわ…」

「よく言われる」

「身長は?」

181cm

「は?181cmとか許さん。171cmにしてやる。学歴は大卒……職業は医者、と。年収は?」

1300万くらい」

「は?何でそんなに多いんだよ?」

「たまに実家でバイトしてるからな」

「くそ…開業医のボンボンめ。900万にしたろ。出身と居住地は?」

「埼玉出身で、今住んでるのは高田馬場」

「埼玉出身の都内在住、と。長男?次男?」

「長男」

「タバコは?」

「吸わない」

「お酒は?」

「付き合い程度に」

「休みは?」

「…不定期?」

「だな。婚姻歴は?」

「あるわけないだろ」

「子供は?」

「いるわけないだろ」

「性格は?」

「幸野からはどう見える?」

「そうだな…、真面目。努力家。冷静沈着。誠実」

「そう?ありがとう…」

「趣味は?」

「んー…読書?(医学書だけど)」

「読書、と。理想の相手は?」

「んー…、一緒にいて落ち着く人とか?」

「よし、埋まった。一言メッセージは適当に書いておくな。よし、最後は写真だな。はい、笑って〜」

カメラを向けられ、反射的に口許を緩める。


「うわ、何だこのイケメンは。ちょっと顔面偏差値下げてやる」

AIで顔をイジられる。

チラッと覗き見たが、ぱっと見オレだと分からないくらいの顔になっていた。

マチアプとか知り合いに知られたくないので、むしろ助かる。


「じゃあ登録するな〜」

幸野が登録完了ボタンを押した後、「本人確認と支払いは自分でやって」とスマホを返してきた。

ちょうど昼休みが終わり、デスクに置いたまま午後の回診に向かった。




1
時間後、産科の医局に戻って来ると、医局秘書の新田さんが

「携帯めちゃくちゃ通知鳴ってましたよ」

と教えてくれる。


確認してみると、さっき幸野が登録したマチアプからの通知だった

僅か1時間で100近く「いいね」されていて驚く。


(怖…)


そのまま終業まで放置して、帰るタイミングで幸野がやってきた。

「櫻井は何人にいいねされた?オレなんて50人だぜ!」

と意気揚々とオレのスマホをまた奪われ、通知を確認される。


「はぁ?!何で櫻井の方が多いんだよ!200超えとか普通にムカつくんだけど!」

「知るか…」

「どれどれ…」

いいねしてきた相手を幸野が代わりにチェックしてくれる。


「どの子にする?」

「別に連絡する気はないよ…」

「えー、せっかくなのに一人二人マッチしろよ。この子とかいいんじゃね?」


幸野がプロフィール画面を見せてくる。

24
歳の会社員、都内在住。

身長160cm、大卒、年収400万。

趣味は旅行とカフェ巡り。

写真はどこにでもいそうなメイクと髪型をした、いわゆる量産型女子だった。


「うーん…、良いのか悪いのか」

「とりあえずマッチしといたから。何かメッセージ送ってみろよ」

「えー…」


幸野にせっつかれ、『いいねありがとうございます』から始まり、適当な文章を打って送ってみる。

向こうも携帯を触っていたのだろうか、またすぐに返信が届いた。


「じゃ、頑張れよー!」

と幸野は無責任にも帰っていった。

仕方ないので、家に帰るまでの間、時間潰しのつもりでメッセージを送り合ってみる。


『都内のどの辺りに住んでるんですか?』

『高田馬場』

『私は板橋です。仕事場は新宿です』

『オレも新宿だよ』

『そうなんですね!仕事帰りに一度お会いしたいですね!』


……めちゃくちゃ展開早いな。

こんなにすぐ会おうってなるわけ?


『ちなみに明日の夜は空いてますか?』

とグイグイ来る。


空いてはいるけど……これってどうなんだろう。

マチアプって女はタダみたいだし、こんなすぐ会おうとしてくる女って怪しくないか?

ロマンス詐欺的な。


とりあえず

『明日は当直だから無理かな』

と嘘をついて断ってみた。

『そうなんですね。頑張って下さいね』

という返信が来る。



結局その後もやり取りを続けて様子を見てみる。

『おはようございます。いい天気ですね』

から始まり、

『お休みなさい。今日もたくさん話せて楽しかったです』

まで、空き時間の度に連絡すること3週間。


『今度の土日、どちらか会えませんか?』

『日曜なら』


ついに会うことにしたオレがいた――

 

 

 

CONTINUE