TIME LIMIT〜バイト編〜 おまけ〜愛視点〜





明菜ちゃんがバイトを始めた。

私と同じコーヒーチェーンで。



「私バイト初めてだったんだけど、すっごく楽しいね〜」

「だよね、結構料理の勉強にもなるしね」

「だよね!この前朝ご飯にお店と同じようなサンドイッチ作ったら、大樹さんめっちゃ喜んでくれたんだよ」

「へー!」


休み時間にバイト話で盛り上がっていた私達。

すると前に座っていたクラスメートが「プッ…」と笑ってきた。


「時給1400円とかのバイトなんてよくやってられるね」と…

「もっと割のいいバイトたくさんあるのに」と…



「それって家庭教師とか?」

明菜ちゃんが尋ねる。

「違うって」

「じゃあ夜のコンビニ?」

「そんなわけないじゃん」


そのクラスメートはいつもハイブランドのバッグを学校に持ってきていて。

服は綺麗系で、爪はいつもキラキラしていて。

お化粧も髪のセットも完璧な女の子だった。

私や明菜ちゃんとは全く毛色が違う。


(この子はきっと夜の世界でバイトしてるんだろうな…と思う)


キャバ嬢とか。

もしかしたらパパ活かもしれない。



「それだといくらくらい稼げるの?」

「月30万とか余裕だよ」

「すごーい」

明菜ちゃんは本気で感心していた。

「じゃあ須本さんもしてみる?紹介するよ?」




え?!




「しなーい」

即答する明菜ちゃん。

「だって今のバイト気に入ってるもん。それに…」

明菜ちゃんがその子に耳打ちした。



「私、扶養内で働きたいし」

と――



(明菜ちゃんがめっちゃマウント取ってる…!!)



明菜ちゃんが須本先生の奥様であることはクラス中、いやもう大学中が知ってることだ。

夜職なんかでわざわざ自分で大金稼ぐ必要なんてないから、と顔に書いてあるようだった。


(すごい…、これが誰もが羨むイケメン医師を旦那さんにゲットした女の余裕なのね…!)



このクラスには医学科に彼氏がいる子もチラホラいる。

でも「医学生の彼女」と、「医師の妻」とでは全然レベルが違うのだ。


マウントを取られたそのクラスメートがプイッと席を外すと、明菜ちゃんが

「ごめんね、何か私らしくなかったよね…」

と謝ってきた。


「ううん…、何かすっごくカッコよかったよ。さすが須本先生の奥様…」

「やめてよ〜恥ずかしい///


でも…と明菜ちゃんが続ける。


「事情や目標があってどうしてもお金が必要で夜のお仕事をしてる人は仕方ないけど、あの子は違うでしょ?」

「うん、たぶんね…」

「若いうちから楽してお金儲けするのはよくないと思うんだよね。将来絶対身を滅ぼすと思う。やっぱり地道に働くのが一番だよ

「そうだよね、私もそう思う」

「だからこれからも時給1400円でお互い頑張ろうね♪」

「うん!」


明菜ちゃんのこういうところも、須本先生に選ばれた理由の一つだと思う。

(私もいつか慎一さんに選ばれたらいいなぁ…)


私は自分の右手薬指を見た。

慎一さんとお揃いのペアリングだ。



「でも大樹さん、しょっちゅう私のバイト姿見に店に来るから困っちゃう…」

「須本先生も?慎一さんもよく来るよ」

「本当に?やっぱ絶対仲いいよねあの二人、思考回路が一緒だもん

「ふふ」



慎一さんはカフェで働く私を気に入ってくれている。

今度の日曜日、バイト後に会う約束をしてる私達。

きっと日曜も絶対店に来ると思う。

彼に心を込めてコーヒーを淹れてあげようと思う私がいた。



将来の練習を兼ねて――

 

 

 

 

 

 

 


END

 

 

 


以上、新学期が始まり、バイト話で盛り上がる明菜と愛ちゃんのお話でした〜。
しれっとペアリングの指輪を大学にもしてきてる愛ちゃんです。
もちろんクラスメートの何人かはそれに気づくのです。

「惣田さん、彼氏出来たんだ?」
「う、うん…」
「まさか医学科の人じゃないよね?」
「う、うん…違うかな(医者だし…)」
「どこで知り合ったの?」
「友達の紹介…かな(須本先生の紹介だなんて絶対言えない…)」
「へー、今度会わせてよ」
「う、うん…機会があればね(絶対無理…卒業まで絶対隠し通さなきゃ…)


どうやら愛ちゃんは卒業まで隠すつもりのようです。
そりゃ御三家の一人・櫻井先生が恋人だなんて口が裂けても言えんわw