TIME LIMIT〜バイト編〜 おまけ〜ヒカル視点〜





明菜は結婚してからもちょくちょく実家に顔を出していた。

それが春休みに入ってから一気に頻度が減る。

そして久しぶりにやって来たのは母の日だった。



「お母さん、いつもありがとう。これ私と大樹さんから」


カーネーションの鉢植えと洋菓子をアキラにプレゼントした明菜。


「ありがとう。大樹さんにも伝えておいてね」

「うん♪」


早速明菜がくれた洋菓子の詰め合わせを、3人で食べようということになる。

アキラが入れてくれた紅茶も飲みながら、明菜のいつもの近況報告が始まった。


「あ、そういえばバイト始めたんだよ」

「バイト?何の?」

「コーヒーチェーンのレジ」

「へー。時給いくら?」

1400円。土日は100円アップ。結構いいでしょ?」

「あ、じゃあこの母の日のプレゼントも明菜のバイト代から?」

「ううん。それは大樹さんが払ってくれた」

「じゃあ明菜は稼いだバイト代、何に使ってるんだ?」

「とりあえず大樹さんへの誕プレは買ったけど…、あとは使ってない。貯金してる」

「へぇ…、堅実だな」

「でしょ」


春休みが終わってからも、土日どっちかだけシフトに入ってるらしい。

それでも月3万くらいは稼げるらしい。

一瞬明菜が働かなくちゃいけないくらい須本家の家計は圧迫してるのか??と不安になったけど、どうやらそうではないらしい。

普段の生活費も友達と遊びに行くレジャー費も、全部大樹君から渡されてるカードで払ってるという明菜。

バイト代は全てお小遣い。

でもまだ大樹君への誕プレ以外に使ってなく、とりあえず貯金してるらしい。


「他の大学に通ってるバイト友達もたくさん出来たし、接客めっちゃ楽しいし、始めてホントよかった」

「バイト先の友達には話してるのか?結婚してること」

「ううん、知ってるのは店長だけかな。バイト友達には彼氏で通してる」

「まぁそうだよな…」


先月ようやくハタチになった明菜。

結婚してる同級生なんているはずもなく、恥ずかしいのか大樹君は彼氏で通すことにしたらしい。


「でも大樹さん…、しょっちゅうバイト先に来るから困る」

「明菜が大樹君の休みの日に働くから寂しいんだろ。仕事の日に働けば?」

「だって向こうもこっちもシフト制だし、上手く休み合わないんだもん」


既に常連客状態の大樹君らしい。

PC
まで持ち込んで、持ち帰りの仕事しながら明菜の仕事姿を眺めてるとか。


「おかげでバイト仲間に、彼氏また来てるねって冷やかされまくりだよ〜」

「年齢差のことは何か言われない?」

「大学の先輩で通してるから」

「は?!さすがに大学生には見えないだろ」

「医科大の大学院生って設定だから大丈夫」


明菜の大学にはもちろん医学部もある。

医学部なんて半分以上が浪人だ。

例えば2年浪人して、6年大学に通って、更に大学院4年目ならそれだけで30歳だから……まぁいけるか?

(大樹君20代後半って言っても全然大丈夫な見た目だしな…)


「大樹さんが言うにはね、大学病院で働きながら博士課程取る大学院生医師ってのもたくさんいるんだって。だからまぁ半分は嘘じゃないしね」

「普通に医師の夫じゃダメなのかよ?」

「ダメだよ!バイト友達の中には奨学金とバイト代で何とかギリギリ生活費してる子もいるんだよ?」

「なるほど…」


世の中の大学生の半分以上が奨学金を借りると聞いたことがある。

更にアルバイトで生活費を補ってると。

そんな子達から見れば明菜は恵まれすぎてるだろう。


「だから私も親がお小遣いくれないからバイトしてるって設定なの

「実際は医者の旦那の家族カード使いまくりな奥様のくせに?」

「皆の前ではカード出さないから大丈夫。ちゃんとsuicaにチャージして使ってるからね」


大樹君のカードと紐付けてオートチャージにしてるらしい。

なんて奴だ。


「まぁ好きにすればいいけど。バイト友達は家に連れて行くなよ?一発で嘘がバレるぞ」

「分かってる」


明菜の自宅は代々木公園に程近いタワマンだ。

しかも35階という高層階、きっと今買ったら購入価格は3億近いだろう。

親がお小遣いをくれない家にはどう見ても見えないからだ。


ちなみにぶっちゃけ年収が2000万いかない、若手勤務医が買えるマンションでもない。

美容系のクリニックをいくつも経営しているという、大樹君の叔父さんの投資物件だからこそ住めてるわけだ。


アキラが

「それはそうと、向こうのお義母さんにもちゃんとプレゼントした?」

と明菜に尋ねる。


「うん、同じようなやつを昨日大樹さんとプレゼントしてきた」

「そう、義実家は大事にね」

「分かってる。大樹さんの両親と夕飯も一緒に食べたんだけど、二人ともすっごく私に優しくしてくれて…、この家にお嫁に行ってよかった〜って改めて思ったよ」

「ご自宅で夕飯頂いたの?ちゃんとお手伝いした?」

「んー、お手伝いさんがいるからしてないよ。あ、でもちゃんとワイン、お義父さんに注いであげたよ」


お義母さんの分は大樹さんが注いであげてた、という明菜。

なるほど、開業医同士の共働きだと家に家政婦がいるらしい。

ちなみに明菜もハタチになったのでワインを一緒に飲んだらしい。


「お酒ってこんなに美味しかったんだね!家でも大樹さんと一緒に色々試しながら飲んでるんだよ」

「また今度オレらとも飲もうぜ。大樹君も一緒に」

「うん♪」



とりあえず今日は紅茶だけ飲んで明菜は帰って行った。

もちろんアキラにくれたはずの焼き菓子の大半を食べて。


(ホント立派な奥様だよ…)


 

 

 

 

 

 

 


END

 

 

 


以上、バイト編のヒカル視点でした〜。母の日のお話です。
バイトを始めてから実家に帰る頻度が減った模様です。

母の日とか父の日とか両親の誕生日とか敬老の日とか、ちゃんとプレゼントする意外としっかりものの明菜です。
既にバイトを始めて3ヶ月近くが経ってますが、まだ須本君の誕プレ以外に使ってないようですな。
普段の友達と遊ぶ時のレジャー費まで全部カードで払ってるからね(笑)

バイト仲間に『大学院生彼氏』と思われてる須本君です。
休みの日に明菜がバイトに行ってしまって寂しいので、バイト先に行って持ち帰りの仕事をPCでしながら明菜の働いてる姿を眺めてたり。
相変わらずめっちゃタイピング早いので、バイト仲間にも周りのお客さんにも(早っ…!)と思われてる須本君なのでした!