●TIME LIMIT〜恋人編〜 11●
ピンポーン
「はーい」
「…ん…―」
何やらチャイムの音で目が覚めた。
きちんと浴衣を着てリビングの方に行くと、ボーイがルームサービスを丁寧に並べてくれていた。
「あ、おはよ塔矢」
と窓際のソファで新聞を読んでる進藤。
「おはようございます」
と配膳中のボーイ。
「おはよう…」
二人まとめて挨拶してみた。
支度を終えたボーイは失礼します、と颯爽と帰って行った。
「朝食ルームサービスにしてもらったんだ」
「へぇ…あ、美味しそう」
そういえば昨日のお昼から何も食べてなかったから、思わず唾を飲み込んでしまうほどお腹が減っていることに気付いた。
「んじゃ食べようぜ。いただきまーす」
「いただきます」
たぶん…こうやって進藤と一緒に朝食を食べるのも……これで最後だな。
これで…良かったんだよね?
僕…また間違った選択をしてないよね?
確かに4年前のあの選択が間違っていたとは思わない。
だけど正しかったとも思えないんだ。
だって……そのせいで進藤を苦しめてしまったから。
ごめんね…。
本当にごめん。
失恋の傷を癒すには、新しい恋が一番だって聞いたことあるよ?
僕のことなんか今日限りで忘れて、早くもっといい恋愛してね?
キミに相応しい人はきっとどこかにいるから…。
きっと…――
「…ご馳走さまでした」
「用意出来たら言ってくれよな。家まで送るから」
「ありがとう。シャワー浴びたいから少し時間かかると思うけど…」
「ん、いいよ。テレビでも観てる」
既に帰る準備万端の進藤が、早速テレビの電源をリモコンで点けた。
僕はリビングを後にして、バスルームに向かう。
浴衣を脱ぐと…あちこちにキスマークの痕が見られた。
いつの間に…。
昨夜びしょびしょに濡れた下半身も…今はもう外は乾いてる。
中は微妙に健在かな?
自分のものと彼のものが混ざりあって……何だかすごく気持ち悪い。
直ぐさまシャワーで綺麗に洗い流してみる。
でもいくら洗っても…もう意味がないんだろ?
もうとっくに到達してるよね?
それとも僕の免疫が勝ったのかな?
妊娠したのかな…?
どうなんだろ…。
いつ頃になれば分かるんだろ…。
次の生理が来なかったら…かな?
いつもいつ頃来てたっけ…?
忘れちゃったよ…―
でももし出来てたら……産まないとね。
進藤にあげる約束だもん。
あれ…?
でも新しい恋には子供なんて邪魔だよな?
そもそも一人で育てるつもりなんだろうか…?
碁を続けながら…?
手合いのある時とかどうするんだろ…。
……ま、そんなの今から心配しても無駄だな。
それにどうせお母さんにでも見ててもらうつもりだろうし。
もしくはベビーシッター雇ったり。
彼の収入だったら2、3人雇っても余裕だよね?
せいぜい頑張ってくれ。
僕は知らない。
「…準備出来た?」
「うん」
「んじゃチェックアウトして帰りますか」
「うん…」
今日はもう9月21日。
一応朝まで一緒にいるけど……もう恋人の時間は終わってる。
だから手も繋がない。
キスもしない。
会話だっていつもの碁の内容ばかりだ。
…それでも最後の最後はやっぱり別れるのが辛かったのか、車を家の前に停めた後…降りようとすると――手を掴まれた。
「…進藤?」
「…塔矢、もう一回だけ…キスさせて?」
「……いいけど」
承諾すると直ぐさま彼の顔が近付いてきた。
「ん…っ…―」
舌は入れないけど…何度も角度を変えてついばんでくる長いキス。
すごく…彼の気持ちが籠ってる気がする。
離れたくないって。
本当は終わりにしたくないって…。
「―……は…ぁ―」
口を離した後、進藤は悲しそうに微笑んできた―。
「…今までありがと…塔矢。楽しかった…」
「……」
「じゃあまた明日…棋院でな」
「…うん」
僕が車から降りて玄関に入るのを見届けてから……進藤は車を出した。
…僕も楽しかったよ…
――ちなみに進藤が再びこの家に来るのは9年後
僕らの子供を連れて再び訪れることになる――
―END―
以上、恋人編でした〜。
一日だけ恋人っていうのも何かロマンチックじゃね?と思って書き始めたんですが……全然ロマンチックな内容になりませんでした(笑)
うわー…なんだこれー…。
ヒカル暗〜…。
もうしょっぱなからアキラにフラれたので…お先真っ暗って感じでしたが…やっぱり内容もものすごーく暗くなりましたね(=_=;)
これのどこが誕生日小説なんだ?全然祝ってねぇ!!
もう祝うというよりはヒカルをただイジメてるだけのような…。
相変わらずめちゃくちゃな男です。
そしてそんなヒカルに振り回されてるアキラは本当にご愁傷様です…。
はい、ではこれで序章は終わりましたので、続きまして離別編をどうぞ〜。
題からして暗そうですね…。
はい、すみません…。
二人のその後、激動の9年間をどうぞ〜。
まずは明子ママ視点からです。
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TIME LIMIT〜離別編〜