●STUDY STYLE●
「お。精菜だ」
「佐為!」
用事で祖父母の家に行くと、緒方先生に連れられて精菜が来ていた――
「どうだった?昨日の院生研修は」
この秋、ついに院生になった彩と精菜。
昨日は初めての院生研修の日だった。
「楽しかったよ。C組はさすがにちょっと…てレベルの子ばっかりだったんだけど、終わった後に何人かA組の子達とも打ったんだ」
新人はもちろんC組の最下位からのスタート。
院生だからそこそこの力はあると思うけど、やっぱり精菜達には物足りないらしい。
で、お目当てのA組の実力は―――
「一人すごい子がいてね!彩と互角に打ってたんだよ」
「え?彩と?…すごいな」
「中三でね、この夏のプロ試験も一勝足りなくて駄目だったんだって」
「じゃあほとんどもうプロみたいなものか」
「うん。でも彩すっごい悔しそうにしてた」
「ああ…だからか」
昨日――研修から帰ってきた彩は珍しく不機嫌だった。
夕飯の時も、いつもは喋りたがり屋のアイツが一言も話さずに、ひたすら黙々と口を動かしていて。
「…彩、院生研修はどうだったんだ?」
沈黙に耐えられなくなった父がそう尋ねると、ただ
「お父さん、後で検討つきあって」
とだけ。
夕飯後、父の部屋で納得するまで打ってたみたいだけど……
「プロレベルって言っても、一応同じ院生に負けたってことがちょっとショックだったみたい…」
「んなことでいちいち落ち込んでたら、とてもじゃないけど若獅子戦なんか優勝出来ないぞって言っとかないとな」
「佐為が言ったらケンカになると思う…」
「…だな。お父さんに言ってもらおう」
でも……ちょっと羨ましい。
僕もその人と打ってみたい。
他のA組の人達とも。
彩達には院生は物足りないのかと思ってたけど、やっぱり上には上がいるってことなら、僕も院生で勉強した方がいいのかもしれない。
「…でもね、彩が打ってるのを横で見てて思った」
「何を?」
「佐為なら勝てたよ。プロ試験だって、佐為ならその一勝を逃したりしないと思った」
「………」
「プロ試験は長いから何があるか分からない、誰がプロになるか予測出来ないってよく言われてるけど、おばさんはそうじゃなかったんでしょ?佐為はそっち側だと思う」
僕の母は……その年断トツでプロ試験を突破した。
誰も寄せつけない力を持っていた。
僕も…そうなのかな。
周りが凄すぎて自分の力が最近分からなくなってるけど……
「佐為は来年プロ試験受けるんでしょ?」
「うん…そのつもりだけど」
「わざわざ院生に入らなくても、プロ試験で院生と打てるよ。昨日彩が負けた人ともね」
「…そうだな」
「佐為は佐為の勉強の仕方を続ければいいと思う。院生の子達はプロ試験プロ試験って躍起になってるけど、私達の目標は試験じゃないもん。その先」
「うん…僕の目標はタイトル戦で両親に勝つことだ」
「あはは、頑張って〜現役名人と本因坊は手強いぞ〜」
精菜の言う通りだ。
僕の場合、焦って院生になっても意味がない。
プロ試験はあくまで通過点。
本当に強い院生は絶対に試験を突破してくる。
僕はその時打てる。
やっぱり今の勉強スタイルを崩さないでおこう。
ただひたすら上を見て打とう―――
「佐為、お父さんとも打っていくんでしょ?見てもいい?」
「いいよ。緒方先生と打つのって勉強になるんだよなぁ…気迫がすごすぎて」
「あはは」
―END―
以上、院生研修の翌日の話でした〜。
佐為の勉強スタイル。それは両親・祖父・塔矢門下を始めひたすらプロと打つことです(笑)
でも結局それが一番上達への近道じゃありません?
アキラが院生になっても意味がないのと同じように、ね?
それにしても緒方さんって佐為に手加減なさそう…。
進藤の息子なんかに俺の可愛い娘はやらん!って感じ?(笑)VS 未来の親子対決〜。
次は彩の話かな〜?