●TIME LIMIT〜相談編〜●
千明が11歳になったひな祭りの日。
この日の千明は何か変だった。
学校から帰って来たと思ったら、速攻で部屋に閉じこもって。
夕飯の時間になってやっと出てきたと思ったら、すっげー不機嫌で。
というか…めちゃくちゃ顔色悪くて。
「千明…お前大丈夫か?体調悪いのか?」
「お父さんには関係ないでしょ?!放っといて!」
ガーン…
もしかして反抗期?
それともついに娘の父親嫌いが始まったのか?
とショックを受けてると、
「ただいま」
とアキラが帰ってきた。
「お帰り〜」
オレがアキラにお帰りのチューでもしようかと思った矢先、千明がアキラを引っ張ってダイニングを出て行った。
はぁ……所詮父親ってこんなもんだよな。
娘の相談相手はいつの間にか母親になっちまうんだ。
「明人は男だから、パパに相談してくれよな」
とまだ一歳半の息子にいじけてみた。
もちろん「??」って顔されたけど。
「…え?初経…?」
「うん、そう。千明生理が始まったみたい」
アキラと二人きりの時間になった時に、教えてくれた。
あ〜〜なるほど。
だからオレには関係ないって言われたのか。
「明日は赤飯炊かなきゃな!」
「…千明に一生嫌われてもいいのなら、炊けば?」
「うわ、アキラひどい」
「女の子はそういうもんなんだ。まだ体の成長が恥ずかしい時期なんだよ」
「ふーん…」
でも、これでついに千明も大人の仲間入りかぁ〜。
早いなぁ…。
もう好きな奴とかいるのかな?
そのうち彼氏とか出来たり?
うわ、嫌だ!
「アキラ、千明に彼氏が出来たら教えてくれよな!」
「…キミ、絶対に邪魔するつもりだろう。千明に嫌われるよ?」
「だってムカつくじゃん!オレの千明に手を出そうなんて100万年早いっつーか…」
「残念だけど、子供は親に恋愛の相談なんてしないと思うよ」
「母親にも?」
「ああ。キミだって両親にそんな相談したことないだろう?」
「…確かに」
親どころか、友達にもしたことない気がする。
もしかして相談すればよかったのかな?
そしたらもっと早く…アキラと一緒になれてた?
いや…フラれてんだから諦めろって次の恋を押されそうかも…。
それも困る。
「僕も…せめて妊娠した時、母に相談すればよかったのかもしれない。でも…出来ないものなんだよね…」
「オレらは何でも相談し合える家庭を築きたいな」
「そうだね…話してほしいね」
「その為にはさ、オレらも全部話さないとな。せめて千明だけには…8年も迷惑かけちゃったわけだし」
「全部?」
「そ。全部」
「もう?」
「もうちょっとしたら」
結局オレらは、千明が中学に入学した時に全てを話すことに決めた。
まずは何から話そうかな。
誕生日限定の恋人だったことから?
辛かったよな…すごく。
だから、千明にはそんな辛い恋をしてほしくない。
『千明はいい恋愛してくれよな』
これがオレとアキラの一番の願いだ―――
―END―
以上、相談編でしたー。
ひな祭りという女の子の日に女の子になった千明。
いくら絆が深いからって、父親なんかには絶対相談しません!ってことで。
さて、この約一年後に両親から過去を全部話された千明。
ショック受けるかな〜?やっぱり。
でも、やっと納得出来るんじゃないかな?色々とね。
千明はいい恋愛をして下さいってことで、終わります。