●SEPTEMBER BRIDE●



「まぁ!5ヶ月?!」


いつものように佐為と彩を先生ん家に預けに行くと、居間のあたりから何やら賑やかな声が聞こえてきた――



「こんにちは〜?」

「あら、ヒカルさん。いらっしゃい」


覗いてみると、先生、明子さんの他に緒方さんと見覚えのない女性の姿があった。

明子さんがその女性に、娘婿ですの、とオレを紹介してくれる。


「進藤、紹介する。俺の妻だ」

「……へ?」



は?



ええ?!



「つつつ妻?!緒方さん結婚してたの?!」

「ああ、昨日入籍してきた」

「昨日っ?!」

いきなりのことに頭が回らず茫然と突っ立ってると、明子さんが更に追い討ちをかけた―。

「怜菜さんね、今妊娠5ヶ月なんですって」

「5ヶ月…」


てことはあの緒方さんが出来ちゃった結婚?!

ありえねー!!

この人、そっちの面では絶対に失敗しない完璧主義者だと思ってたのに!



「あら、じゃあもしかして予定日は来年の始めかしら?」

「ええ、2月の頭頃です」

「まぁ!それじゃあ彩ちゃんと同級生になるわね〜」

明子さんがオレが抱いてる彩の方に視線を向けたので、彼女がオレの方に振り返った。

「こちらの赤ちゃんが彩ちゃん?今何ヶ月なんですの?」

「えっと…4ヶ月です。5月に生まれたんで」

彼女が頭を優しく撫でてくれたので、彩もご機嫌に笑った。


「パパ…赤ちゃん?」

「あ、うん。このお姉さんのお腹の中にな、赤ちゃんがいるんだって」

そう佐為に教えてやると、目を輝かせてわずかに膨らんだ彼女のお腹を早速嬉しそうに撫で始めた。

…佐為は相変わらず妊婦さんが大好きみたいだ。



「進藤、まだ時間あるんだろ?今から一局打たないか?」

「あ、そうですね」

「じゃあ彩ちゃんと佐為ちゃんはこっちで預かりますね」

「お願いします」

彩を明子さんに渡した後、緒方さんと別室に移動した―。









「驚いたか?」

「かなり…」

緊張の糸が切れたようにはぁ〜と溜め息を吐いたオレを見て、緒方さんがクックと笑ってくる。


「やっちゃっいましたね…。出来ちゃった結婚でしょ?緒方さん」

「馬鹿言うな。俺はそんなヘマはせん」

「え?じゃあどういう……」

「お前から見て、アイツいくつに見えた?」

「んー…30過ぎぐらい?」

「実は明子さんと3つしか違わない」

「ええ?!てことは…37?!」


あ、でも緒方さんも大して変わらない…か?


「もともとアイツも結婚願望のない自立した女でな。でも子供だけは欲しいと言うので協力してやったんだ」

「協力って…。でも…まぁ年齢的に考えたら結構ギリギリですもんね」

「ああ。40になる前にどうしても産みたかったらしい」

「でも緒方さん、一応は責任取ったんだ?」

ニッと笑うと、腕組みして溜め息を吐いてきた。

「本当は結婚も認知もしてくれなくて構わないって言われたんだがな…。まぁこの歳になると既婚の方が都合がいいことも多いし、いい機会だと思ってな」

「そうそ。いい歳なんだから、いい加減女遊びはやめた方がいいって」

「進藤、女遊びというのは歳ではなく性格の問題だ。やらん奴は一生やらんし、やる奴はいつまでたってもフラフラしている」

「じゃあオレは一生しないかな。アキラ命だもん♪」

「ま、ウザがられない程度にな」

「緒方さん、ひっどーい」


その後も一局打ちながら、冗談まじりでありがちな子供達の結婚話をしてみた。


「じゃあ緒方さんの子供が女の子だったら、将来佐為のお嫁さんに貰おっかな〜」

「じゃあ男だったら彩君を頂くぞ?」

「いいですよ〜。ただし、緒方さんみたいに女ったらしじゃなかったら、の話ですけど」

「はは」










――その冗談が本当になるのは


まだ20年も先のお話――














―END―















以上、緒方さんの結婚秘話でした〜。
下手したら一生独身っぽい緒方さんですから、結婚もこんな感じかと(笑)
結婚願望のない男性には、同じく結婚願望のない女性の方が上手くいくと思います。
関係がサッパリしてて。
重たくなくて。
だから子供も精菜一人なのかしら?(笑)
でも緒方さんはそれなりに子煩悩な気がしますね。
いいパパになってくれることでしょう!
またそんな話も書きたい…な★