●SEINA U おまけ●
海王小学校と海王中学校は目と鼻の先に立地している。
徒歩数分の距離。
冬休み明けの今日は短縮授業で、僕は精菜と校門で待ち合わせることにした。
キーンコーン
終業のベルが鳴り、低学年から次々に生徒が出てくる。
高学年が増えてくると、僕を知ってる人も多い。
「きゃーvv進藤さんだぁ」
「こんなところで見れるなんてラッキーvv」
チラチラ振り返られる。
そして――
「佐為!お待たせ」
と精菜が来た。
「お兄ちゃんどしたの?」
と彩のおまけ付き。
「ちょっと精菜に話があるから、彩は先に帰ってくれる?」
「別にいいけど…」
じゃ、精菜また明日ね!と彩が元気に駅に向かって走って行ってしまった。
「話って?」
「…歩きながら話そうか」
「うん…」
精菜と並んで僕は歩き出した。
精菜に会うのはあの金曜日以来だ。
あの時は大人っぽく見えた彼女だけど、今は学校帰り。
つまりランドセルを背負っている。
やっぱり小学生なんだな…と嫌でも実感する。
「精菜と付き合い出して、もう2年になるな…」
「そうだね…」
「付き合い出した頃は僕も今の精菜と同じ小5だったよな…」
「……うん」
「身長も155くらいしかなかったのかな?」
「佐為、今170くらい?」
「うん…」
「大きくなったね…」
「うん…自分でも成長したと思う」
「……」
「成長し過ぎちゃったのかな…」
「……」
「昔の方が良かったな。こんな思い…しなくて済んだし…」
「佐為…辛いの?」
「うん…辛い」
「私が子供だから?私が高校生になるまで…我慢しなくちゃいけないから?」
「付き合ってるのに何も出来ない今の生殺しの状態を、あと4年以上も続けるなんて…僕には出来ないよ」
「じゃあ…もう我慢するのやめよう?私は受け入れれるよ?」
「出来るわけないだろ?!」
小学生の彼女とこれ以上先に進める訳がない。
傷付けたくない。
大事にしたい――本気だから。
誰よりも――大切だから。
「別れよう……精菜」
「……やだ」
「いっそ別れた方が楽だよ…」
「やだ…絶対やだ…」
精菜の瞳から涙が溢れてくる。
「……ごめん。本当に」
「やだ…嫌だ…そんなこと言わないで…」
「……ごめん」
「ひどい…佐為…ひどい…」
「本当にごめん!」
一方的に別れを切り出して、僕は逃げるようにその場を立ち去った。
酷い男だと思う。
嫌われてしまったかも。
でもこのまま付き合ってたら、もっと嫌われてしまいそうだったから。
いつか絶対我慢の限界がきて、もっと傷付けてしまいそうだったから。
心も――身体も、なにもかも――
「お兄ちゃんお帰り〜。精菜は?」
「……」
「お兄ちゃん?」
返事もせず無視して前を素通りし、二階に上がっていく僕を、彩が不思議そうに首を傾げた。
自分の部屋に入った途端、僕は脱力して座り込んだ。
楽しかった二年間の思い出が頭を過る。
ずっとこのまま…いくんだと思ってた。
今年も来年も、そのまたずっと先も、僕の傍には常に精菜がいてくれるものだと思ってた。
まさか傍にいることが、こんなにも辛い日が来るなんて思いもしなかった――
ハッと目が覚めた。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
横を見ると、さっき初めて結ばれたばかりの精菜がすやすや眠っていて……僕はホッと胸を撫で下ろした。
「夢か……」
嫌な夢を見てしまった。
変な汗もかいていた。
「……」
僕らがまだ中1と小5だった時の夢。
初詣の帰り、彼女の胸に手を伸ばしてしまった時から……僕らの関係は変わってしまった。
実際はそれから触り合うようになったのだけれど、でも、今の夢みたいに一度別れるのも確かに一つの手だった。
でももしそうしていたら……きっと僕は精葉をそのまま失っていただろう。
二度と関係は修復出来なかっただろう。
夢の中の彼女の涙がそれを物語っていた。
考えただけでゾッとする……
「よかった……夢で」
僕はすやすや眠る彼女の額にキスをした。
「好きだよ精菜…」
と耳元で囁く。
ずっと一緒にいてくれてありがとう。
精菜が傍にいてくれたから今の僕がいる。
これからもずっと大事にしようと心に誓う。
「ありがとう…精菜」
僕はもう一度、今度は彼女の頬に優しくキスをした――
―END―
以上、初めてのHの後に悪夢を見てしまった佐為の話でした〜。
実際は触り合い出した二人ですが、精菜が高校生になるまで一度別れる方法も一応あったんですよね。
西条の「一旦別れて、4年間他でちょっと場数踏んでからまた付き合い直したらどうや?」というとんでもないアドバイスを実践してみたバージョンです。(新初段シリーズ編、3話参照で)
それにしても別れ話は辛すぎますね(。>д<)
夢でよかった!本当によかった!
ちなみにこの悪夢のせいで目が完全に覚めてしまった為、佐為は仕方なく詰碁集を読み始めるのですよ。
でもって起きた精菜に呆れられるのですよ。
でもって囲碁より精菜が好きvvと二度目のエッチに突入なのですよ〜w