●SCHOOL EXCURSION 2●
修学旅行の夜と言えば恋ばなだ。
一日目の日程を終えて旅館に到着した私達。
夕食もお風呂も終わったら後は寝るだけ。
つまり、ドキドキの恋ばなのスタートだ。
「え?!穂乃花ったらいつの間に岡部と付き合ってたの?!」
「えへへ〜春休みから」
「いいなぁ彼氏〜」
「もうキスした?」
「うん…///」
キャーと盛り上がる。
進藤さんと緒方さんももちろん混ざって一緒に盛り上がっていた。
「じゃあ次は進藤さんの番ね」
「え?!私?!」
途端に進藤さんの顔が真っ赤に染まる。
(可愛い…)
「彩って一体誰が好きなのよ〜?サッカー部のキャプテンよりイケメン?」
「え〜〜言わなきゃダメ?」
「ダメダメ!皆言ってるんだから!」
「言っても皆知らないと思うけど…」
「え?他校の男子ってこと?あ、もしかして同じプロ棋士の人とか?」
進藤さんの顔が更に真っ赤になる。
どうやらビンゴだったらしい。
「うん……棋士だよ。京田さん…」
「『きょうだ』さんね。漢字は京に田んぼ?」
「うん…」
全員が携帯を取り出して一斉に検索し出した。
『囲碁棋士 京田』で検索するともちろんヒットする。
「え?!やだカッコいい!」
「これが彩の好きな人か〜」
「て、年齢19歳って書いてるんだけど!大人じゃん!」
「ホントだー!」
皆一斉に盛り上がる。
確かにまだ13、14歳の私達からしたら、19歳はかなりの大人だ。
進藤さんも「うん……だから好きなだけ。いつか告白出来たらいいなって、思ってはいるけど…」と恥ずかしそうに呟いていた。
「でも19歳でこんなにイケメンだったら普通彼女いるんじゃない?」
「ううん、いないみたい」
「そうなんだ?彩ってばちゃっかり確認済みかぁ〜やるねぇ」
「えへへ」
「でも過去にいたり?」
「ううん、いないって」
進藤さんがムキになる。
それもちゃんと確認済みらしい。
意外に抜かりない。
もしかしたら、ちゃっかりキープしてるのかもしれない。
なぜなら京田さんは『進藤門下』だと書かれていたからだ。
門下ということは頻繁に進藤さんのおうちに彼が出入りをしているということ。
師匠の娘というポジションはかなり有利なんじゃないだろうか?
「じゃあ最後は緒方さんの番ね!」
「……」
「緒方さん誰が好きなの?教えてよ〜」
「……」
緒方さんが黙りこくってしまった。
「皆喋ったんだから、緒方さんだけ言わないのはズルいよ?」
「そうそう。誰にも言わないから教えて?」
緒方さんが疑いの目を彼女達に向けた。
確かに誰にも言わない保証はどこにもないからだ。
進藤さんが横でハラハラしていた。
「私が好きなのは……彩のお兄さんだよ」
緒方さんが溜め息を吐いた後、そう教えてくれる。
「あー…進藤佐為か〜」
「緒方さんて意外にチャレンジャーなんだね」
「ライバル多すぎだよね〜…」
「全国クラスだからねぇ…」
進藤さんのお兄さん、進藤佐為の知名度は半端ない。
海王小にいた時から近隣の他校の子からも人気だったけど、中学に入ってプロ棋士になってからはその人気は全国区だ。
ファッション雑誌の表紙を飾ることなんてザラだし、彼が何か棋戦で優勝する度に新聞どころか、全国ニュースで毎回報じられている。
あとはもうタイトルを取るのを待つだけ。
まるで芸能人。
ちょっと現実的ではなく、本命の名前を言いたくなかった緒方さんに上手くはぐらかされてしまったのかもしれない。
そこにいた皆がそう思った。
もちろん私もそう思った――翌日、偶然進藤さんと緒方さんの会話を耳にするまでは。
「昨日は精菜が本当のこと言うなんて思わなかった」
「佐為を好きだって?本当だけど嘘っぽくてよかったでしょ。きっと皆信じてないよ…」
「まぁね」
「彩は京田さんのこと、話しちゃってよかったんだ?」
「うん……別にいい。例えウワサが広まっても、告白してくる人が減るだけだし。万々歳だよ」
「私も減るといいな…」
「精菜は減らないと思う。皆信じてないからウワサすら流さないよきっと」
「…そうだね」
驚いた。
緒方さんは本当に進藤佐為のことが好きだったらしい。
でも、何より驚いたのが……
「精菜、お兄ちゃんへのお土産は決まった?」
「ううん…悩み中。何がいいかなぁ…」
「何でもいいと思うよ。お兄ちゃん、精菜がくれたものなら何でも一生大事にしそうw」
「えー…一生残されると思ったら更に考えちゃうんだけど」
「あはは。将来結婚したら、断捨離だって言って勝手に捨てたらいいよ」
「ふふ…そうだね」
この会話を聞いて、私は緒方さんと進藤佐為が既に交際していることに気付いた。
(嘘でしょ?!本当の本当に?!)
でも、二人の関係を思い出すと、あり得ない話ではないのだ。
幼なじみで。
親友のお兄さんで。
同じプロ棋士で。
(きっと親も公認なんだろうな…)
もしかしたら、いつかテレビで二人の交際報道が流れるかもしれない。
その時、私は何歳になってるんだろう?
私にも恋人がいるのかな?
まだ中学2年の私達。
これからちょっとずつ大人になっていけるといいな――
―END―
以上、彩と精菜の修学旅行を同級生視点(笑)で書いてみました〜。
ちなみに3泊4日だったらしいです。
札幌・旭川・富良野・小樽を観光したそうですよ。
彩はいつか告白出来たら〜とか健気なことを言ってますが、実際は既に京田さんとキスまでしてキープしまくってます(笑)嘘八百ですw
彩のすごいところは、精菜にまでも内緒にしてるってとこですね。
秘密主義なのはヒカルに似たんでしょうかね〜。
でも佐為には約束のこともキスのこともバレてるので、精菜も佐為から聞いて実は全て知ってたりw
ちなみに精菜は結局佐為に旭山動物園で買ったマグカップをお土産として渡すのですが、そのカップは生涯佐為に大事に愛用されるのでした☆
ちなみに彩は京田さんに動物クッキーとマグネットをプレゼントするのですが、そのマグネットも京田さんちの冷蔵庫に生涯引っ付いてるのでした☆
(物持ちのよすぎる男性陣ですなw)