●SAKURA 4●
「内海さん、ちょっといい?」
進藤君が私のクラスにやってきたのは翌々日の昼休みだった。
相変わらずのカッコよさに、諦めなくちゃいけないのに、胸がドキドキ鳴り響く。
私を校舎裏に連れて行った進藤君。
そこで待っていたのは――進藤君の妹と……緒方さん。
「「ごめんなさい!!」」
と二人に謝られる。
この前のことは本心じゃないからと。
才能あるからと。
これからも諦めずにプロ目指してと、妹さんに言われる。
妹さんにあれを言わせたのは緒方さんだったらしい。
進藤君を取られるかと思って不安だったらしい。
そんなことあるわけないのに。
進藤君は私なんて眼中にないのに。
「ごめんね…」
と進藤君にも謝られる。
緒方さんともう2年以上前から付き合っていて、一生一緒にいるつもりだから。
私の入る隙はないと――キッパリ拒否される。
進藤君て一途なんだな…
あんなにモテモテなのに、きっと生涯で出会う女の人の半分にもまだ出会ってないと思うのに、もう緒方さんに決めてるんだ……
素敵だな…と思った。
応援してあげたくなった。
ちゃんと失恋出来た瞬間だ。
私もいつか……私だけを想い続けてくれるような、そんな人に出会いたいと思った。
5月。
若獅子戦が始まった。
私の一回戦の相手は緒方さんになった。
「よろしくお願いします、内海さん」
と私の前に座った緒方さん。
とても小学生には見えないくらい美人で大人っぽくて落ち着いていた。
「こちらこそよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた。
「1月に院生になったばかりなのに、若獅子戦に出れるなんてすごいですね」
「そう?ありがとう…」
「8月までに10位に入るとプロ試験予選免除ですよ。あと少しですね。頑張って下さい」
「ありがとう…?」
「私は去年予選免除にはしませんでした」
「え?」
「免除にならなかった…じゃなくて、わざと免除にしなかったんです。どうしてか分かります?」
「…さぁ?」
「佐為と一緒に予選を受ける為です」
「え…?」
「私がプロになったのも、佐為を横で見張るためです」
「……」
「プロになっても無駄ですからね。私がずっと横で見張ってますから」
にこりと笑ってない笑顔で笑ってくる。
「ふふ…」と笑ってしまった。
「何が可笑しいんですか?」
「ううん…進藤君、いい人を見つけたなぁって」
「え?」
「緒方さんみたいな人が側に付いていたら、進藤君囲碁に集中出来るね」
「……」
「頑張ってね。進藤君を狙ってくる人、これからもたくさん出てくると思う」
「……!」
「進藤君が囲碁に集中出来るように、これからも頑張って」
「あなたに言われなくても。佐為は私のものですから、一生」
一生――長い人生なのに、もうこの子も決めちゃってるんだ。
こんなに美人なのに。
この子こそ将来男の人なんて選り取り見取りだろうに、もう決めちゃってるんだ。
進藤君一人に――
(……お似合いだなぁ……)
時間になって私達は頭を下げた。
「「お願いします」」
もちろん私は緒方さんに全然敵わなかった。
さすが緒方先生の娘。
さすが一般のプロ試験に受かって正棋士になっただけのことはある。
昼からの対局も見ていたけど、金森女流二段に圧勝していた。
この子に勝てる女流っているんだろうか?
頂上にいる塔矢名人くらいじゃないだろうか。
将来が楽しみだ。
ひとまず私もプロ試験を頑張ろうと思う。
女流枠になると思うけど、無事突破して同じ棋士の舞台に上がりたいと思う――
―END―
以上、内海さくら嬢のお話でした〜。
何か…可哀想な子やね。
誰か幸せにしてあげて…!
えーと、私は別に内海さんの話を書きたかったわけじゃくて、佐為が小3で出た大会をちゃんと書いてみたかったんですよね。
準決勝の大阪代表はもちろん西条、決勝の千葉代表はもちろん大桑部長ですよ。皆全然敵いませんでした〜
あと、精菜がプロになった理由もどこかで書いておかねばと。
精菜がプロになったのは、佐為と約束した為でもありますが、佐為を横で見張る為でもあるのです!変な虫が寄ってこないようにねw
おかげで佐為は余計な恋愛をしなくていいので、囲碁に集中出来るはず。
まぁ余計な恋愛はしませんが、精菜自身とも色々あるので、本当に集中出来てるかどうかは別ですが。
次はもうちょっと重要キャラの視点話を書きたいなーと思います〜。
内海さんは脇役過ぎたねw失敗★