●RUMOR●





「緒方女流って、ちょっとエロいよな」

「あー、分かる分かる。まるでグラドルっていうか」

「Eは確実にあるよな。いや、F?」



都内で開催された小学生向けの囲碁大会で、オレは立会を任されていた。

無事表彰式も終わったので、オレの出番はおしまい。

帰る前にトイレに入ろうとしたら、先客の会話が聞こえてきて……オレは足を止めた。

話していたのは大会の手伝いを任されていた若手棋士のうちの二人だ。

ちなみに精菜ちゃんも手伝いに呼ばれていて、さっきまでオレと一緒に表彰式で舞台に立っていた。



「昔から可愛かったけど、最近色気もヤバイもんな。彼氏とヤりまくってんじゃね?」

「やっぱ彼氏いるんだ?」

「え?進藤名人だろ?昔からウワサされてたじゃん」

「もう別れたんじゃなかった?近くにいてもいつも話すらしないし」

「あれはマスコミ対策だろ?人気者は辛いよなぁ」

「まぁ追い回されて可哀想なくらいだもんな。よく付き合えるよ、俺が女ならそんなデートも大っぴらに出来ない彼氏絶対ごめんだけど」

「そこは金だろ。名人、去年の年収ついに億超えたらしいじゃん」

「マジで?!まだハタチのくせに?!」

「らしいよ。まぁ普通に考えて一度捕まえたら離さないよなぁ、そんな優良物件」

「でも二人が付き合い始めたのってプロになる前だろ?年収とか関係ないんじゃね?」

「青田刈りかもよ。将来有望そうな男をちゃっかりキープってか」

「まぁ何にせよあのエロい体を好き勝手出来るなら、いくらでも刈られるよなぁ」

「お前知ってる?この前札幌であった天元の第4局。進藤名人の部屋から朝方緒方女流が出てくるの見たってウワサ」

「マジで?!だって緒方女流、別に聞き手とかじゃなかったよな?わざわざ札幌まで会いに行ってたってこと?」

「らしいよ。でも帰るのは別々だったとか。隠れて付き合うのも大変だよな…バラしちゃった方がいっそ楽なんじゃ?」

「バレたら終わりだって。今度は緒方女流までマスコミに追い回される羽目になるだろ。それに絶対名人のファンが黙ってない」

「あー確かに。緒方女流のこと詳しく知らないファンからしたら、体で迫って落としたんだろって思われそうだもんな」

「言えてる。実際は名人自身が彼女の体をあんなエロく開発したのにな」

「札幌でもヤりまくったんだろうな〜いいよなぁ。名人第4局勝ったし、心置きなく楽しめたんだろうな」

「何かマスコミにバラしてやりたくなるよな」

「ばーか、緒方先生に殺されるぞ」



大声で喋りまくる二人がトイレから出てきた。

入口にいたオレに気付いて、二人が途端に青ざめる。


「し、進藤先生……」


鋭い視線で睨み付け、(バラしたら殺すからな)と無言の圧力をかけるオレに、二人は

「「失礼しましたー!!」」

と慌てて立ち去って行った。



その後、用を足して駐車場に行くと、入口からは死角になる柱の横に女の子が一人立っているのに気付いた。

よく見ると――精菜ちゃんだった。


「精菜ちゃん…?」

「あ…おじさま今日はお疲れ様でした」

「お疲れ様」


よく見ないと分からなかったのは、彼女が大会の時とはまるで違う格好をしていたからだ。

清楚なアンサンブルのスーツから、華やかなシフォンワンピースに着替えていて。

メガネもかけて、さっきまでは結っていた長い髪も下ろしていた。


「精菜ちゃんも今帰り?よかったら家まで送っていこうか?」

「あ…大丈夫です」


佐為と待ち合わせてるので…と彼女の頬がほんのり赤く染まる。

なるほど、これからデートなわけね。

それは失礼しました。


「そっか。じゃ、またね」

「はい、お疲れ様でした」


オレが車に乗り込んで、少しばかり携帯を弄っていると、精菜ちゃんの元に一台の車が止まるのが見えた。

(プリンスのお出ましか)

途端に笑顔になって、助手席に直ぐ様乗り込んでいた。

(いい車に乗ってんじゃん、さすが年収大台に乗っただけのことはあるな)

でもしばらく発車しなかったので、何してるんだ?と訝しげに目を凝らしてよく見てみると――キスしていた。

(おいおいおい…)

相変わらずラブラブだねぇ…とちょっと感心する。

なぜなら佐為と精菜ちゃんが付き合い始めてから既に10年近くが経とうとしているからだ。

普通なら倦怠期もいいとこだろう。

(マスコミの目を盗んでする逢い引きがある意味刺激になってるのかもなぁ…)


しばらくして、車が発車した。

オレも何か無性にアキラに会いたくなって、急いで家に帰ることにした――







―END―







以上、息子とその彼女のウワサ話を偶然聞いてしまったヒカルパパのお話でした〜。
まぁ有名人の宿命と言いますか、裏では好き勝手言われてると思います。
(ヒカルとアキラの時も色々言われてました〜)

佐為のせいですっかりエロい体になってしまった精菜嬢(18)です(笑)
仕事中は隠す為に地味目の服装にしてますが、佐為と会う時は相変わらず女の子を最大限にアピールする可愛い勝負服に着替えているそうですよw
もちろんそんな可愛い精菜を目の当たりにして家に帰るまで我慢出来るはずもなく、車で早速キスしちゃう佐為なのでした〜。



〜〜帰宅後〜〜

「なぁアキラ〜、佐為って車替えた?」
「え?」
「今日の大会精菜ちゃんも手伝いに来ててさ、帰り佐為が迎えに来たんだけど、いつもの車じゃなかったんだよな」
「ああ…精菜ちゃんとのデート専用の方の車で来たんじゃないかな」
「は?!なにアイツ2台持ちなの?!」
「緒方先生に無理やり買わされたらしいよ。精菜を乗せる時はそれなりの車じゃないと許さんとか何とか言われたとか」
「…ウザい舅だな」
「まぁいいんじゃないか。佐為は囲碁以外興味ないし、ろくにお金の使い道もないだろうから」
「アイツ性格も生活も地味だもんな…」
「ふふ、僕に似ちゃったかな」


アキラは最高だって!!と抱き付くヒカルなのでした〜。
ちなみに車を選んだのはほぼ緒方さんらしいですよw
どんな車になったのかは想像するまでもないね!