●REVENGE おまけ8●
(部活動かー…どこに入ろっかなぁ…どこかには絶対入らないといけないんだよなー…運動部はまずパスだよなぁ…)
中1の春。
廊下の掲示板に貼られている大量のポスター前で悩んでる俺に、同じクラスになった毛利君が話しかけてきた。
「京田君も部活動悩んでるの?」
「うん…まぁ」
「じゃあ一緒に囲碁部入らない?」
「囲碁部?将棋部じゃなくて?」
「うん。人数少なくて楽そうじゃん」
「ふーん…まぁいいけど」
「よし決まりな!放課後入部届出しに行こうぜ!」
「うん、いいよ」
これが全ての始まりだった。
俺と囲碁との出会い。
延いては彩ちゃんとの出会いの幕開けだ――
「…負けました」
「ありがとうございました」
顧問の武井先生が投了した後「うーん」と考え込んだ。
「強くなったな京田君……もう私じゃ相手にならないみたいだ」
「いえ、そんな…」
「もしかしたらもう院生になれるくらいの棋力付いてるんじゃないかな」
「…院生?って何ですか?」
「日本棋院のプロ養成機関で勉強してる子供達のことだよ」
「へぇ…」
「プロ棋士で院生出身は多いよ。京田君憧れの進藤本因坊も院生出身だしね」
「そうなんですか?」
「興味あるなら試験受けてみる?確か1月期の申込締切にはまだ間に合うはず…」
顧問の先生に勧められて、俺は院生試験を受けることになった。
当日、院生師範だという白川先生と一局打った後、先生は俺の棋譜と志願書を見て検討し出した。
「囲碁を始めたのがこの4月だとか」
「あ、はい」
「今まで部活動だけ?」
「そうです…」
「へぇ…」
進藤君並みだね…と白川先生が呟いたのが聞こえた。
進藤君って……進藤本因坊のことだろうか。
院生の研修はこの日本棋院の6階で毎週末行われているらしい。
そのうち進藤本因坊にもバッタリ会えたりしないんだろうか。
会えたらいいなぁ…。
院生試験をパスした俺は年明けから研修に通うことになった。
もちろん一番下のC組からのスタートだ。
ほぼ小学生が占めているC組だけど、皆めちゃくちゃ強かった。
囲碁を始めたのも5歳とか、それ以下の子も大勢いて、皆俺より小さいのに囲碁歴は格段に長かった。
それでも何とか勝ち進んでいき、中2の夏にはA組に上がれた。
A組は上位20名――つまりプロ試験が受けれる。
俺の初めてのプロ試験は残念ながら予選落ちだった。
でも翌年、2度目の試験に臨む頃には院生順位も1、2を争っていて、合格も夢じゃない位置にいた。
だけど結局15戦中11勝4敗で5位という残念な結果に終わってしまう。
そのすぐ直後だっただろうか。
進藤本因坊と緒方棋聖が揃って院生研修が行われている日に6階にやって来たのは。
もちろん来たのはたまたまじゃない。
娘さん達が院生試験を受けるというので、その付き添いでやって来たんだ。
何なく合格を決めた娘さん達。
二人とも今小4らしい。
帰り際、研修会場を見に来た時に――俺は初めて進藤本因坊の娘である彩ちゃんを目にすることになる。
(この子が……)
そして研修2日目で初めて対局することになったのだった――
***************
「京田さん、今度のお兄ちゃんの就位式に着ていくドレス買うのに付き合って♪」
「いいよ」
「何色にしようかな〜」
「彩ちゃんなら何色でも似合うと思うよ」
「え?そう?えへへ〜」
二人で出かける時、彩ちゃんが自然と俺の腕に手を絡めてくるようになった。
あの時初めて会った時、まだ10歳だった彩ちゃんがもう16歳。
俺達はこの春から正式に交際を始めた。
「会場六本木のホテルでしょ?緊張するよねぇ」
「報道陣もめちゃくちゃ多そうだしな」
「言えてる〜」
もうすぐ行われる進藤君の十段就位式。
兄弟弟子としてもちろん俺は近くで祝うつもりだ。
もちろん将来、本当の兄弟になれたらいいのにと本気で思ってたりもする。
「京田さん就位式一緒に行こうね」
「いいよ」
「あ、そういえばお兄ちゃんは終わった後そのままホテルに泊まるらしいよ」
「そうなんだ。まぁ次の日も会見あるもんな」
「私達も泊まっちゃう〜?」
「……進藤先生に殺されるよ」
「あはは」
彩ちゃんと堂々とどこでも泊まれる関係に早くなりたい。
そう思った21歳の初夏だった――
―END―
以上、京田さんの囲碁を始めた時〜彩に出会うまでを簡単に書いてみました〜。
まぁこんな感じらしいです。
最後は付き合い始めて数ヶ月な京田さんと彩です。
佐為の十段の就位式がもうすぐあるそうです。
報道陣はめちゃくちゃ多いよ!
きっと藤井君並みだよ!