●TIME LIMIT〜再会編〜 8●


「お母さん!ここが私とお父さんの家だよ!」


東京から車で約5時間。

着いたのは新しい家の連なる団地の一角だった。

車が着くや否や、お隣りの夫婦が美鈴ちゃんに駆け寄ってくる。

どうやら美鈴ちゃんの両親らしい。


「もう!どこ行ってたの!」

「進藤さん、ありがとうございました」

「いえ、悪いのはうちの娘ですから…」

進藤が旦那さんにペコッと謝った。


「お母さんあのね、この人が千明ちゃんのお母さんなんだよ」

「まぁ…初めまして。お隣りの渡邊です」

「初めまして」


簡単に挨拶だけして別れ、早速家の中に入った。



「お母さん案内してあげる!こっちがリビングだよ!」

千明が嬉しそうに僕を引っ張って行く。


「ふぅん…キミの実家とよく似たタイプだな」

「だろ?やっぱこれくらいが落ち着くよな〜。オマエの実家は広過ぎ」

「いくら位?」

「安かったぜ。土地入れて2千万ちょい。都心じゃありえねーよな」

「へぇ…」


千万クラスを安いと言ってしまうなんて、さすがは元四冠…だな。

賞金の収入だけで1億を超えてた男の言うことはひと味違う。


「キミの部屋は2階?」

「ああ」

「お父さんの部屋は私の部屋の隣りなんだよ♪」

「千明ちゃんの部屋も見たいな」

「うん!」

千明が階段を嬉しそうに上って手招きしてくる。


「可愛い部屋だね」

「えへへ〜。このぬいぐるみはね、お父さんが買ってくれたの〜」

「あ、可愛い。良かったね」

「うん!」


続けて進藤の部屋に案内してくれた。

ベッドと机と本棚しかないサッパリとしたシンプルな部屋だ。


「…にしてもやけに雑誌が多いな」

本棚の中も机の上に積み上げてあるのもほとんどが雑誌だ。

しかも女性週刊誌に…女物のファッション誌…?

「全部オマエの記事が載ってるやつなんだ…」

「こんなにあったか…?」

「なんせ8年分ですから」

進藤が気まずそうにははは…と苦笑いした。


「…こんなの見てる暇があったら本人に会いに来ればいいだろ」

「だって…千明の世話があったし。小さい娘を置いていくわけにいかないじゃん…?連れて行ったらオマエが母親だってバレるのも時間の問題だし…」

「……はぁ」

溜め息を吐いてベッドに座ると、進藤もすぐ横に腰掛けてきた。


「今夜は…ここで寝てくれるんだろ?」

「そうだね…。別に千明と一緒に寝てもいいけど?」

「えー!一緒に寝ようぜ〜。もちろんエッチ付きな♪」

「キミって…相変わらずだな」

「だってまだ6回しか抱いたことねぇもん。しばらは一緒に寝て、ヤりまくろうぜ!」

「………」


まるで新婚気分だな…。

いや、実際にそうなるのか。


「進藤、いつ…入籍する?」

「オレはいつでもいいけどさ、取りあえずはお互いの両親に会わないとな。千明連れて行ったら先生達何て言うかな…」

よほど反応が恐いのか、進藤の顔が引きつり出した。


「母は…もう知ってるよ。むしろ千明に会ってみたいって言ってた」

「マジ?良かった〜」

「でも父は知らないから…反応が楽しみだね」

「いや、全然楽しくねぇよ…。うわー…オレ殺されそう」

「上手く言い訳すれば大丈夫だと思う。それに僕だって今年で30になっちゃうし…、両親としてももう誰でもいいからとにかく早く結婚してほしいって思ってるだろうし」

「囲碁界はただでさえ結婚年齢低いもんな…」

「キミと仲の良かった人達は皆もう結婚してるよ」

「マジ?!和谷や伊角さんも?!」

「うん。越智君も本田さんも奈瀬さんもね」

「ひえー…いつの間に」

負けた…と進藤がガックリと肩を落とした。

そんな彼の手を包んで…僕は微笑む――


「進藤…、僕らも早くしようね」

「おぅ!引越と千明の転校の手続きと両親に挨拶が終わったら速攻しようぜ!」

今週中に全部終わらす!…と進藤はやる気満々みたいだ。




彼と出会って17年。


まもなく僕らは他人ではなくなる――

















―END―

















以上、再会編でした〜。
客観的ですが、ヒカルとアキラが無事くっついてくれてよかったです!(笑)
後は結婚してラブラブするだけですね!

てことでラスト、結婚編にいってみましょう!
二人のその後。
またしても視点が変わりまくります。
まずは明子ママ視点からどうぞ〜!(もうどんな内容か丸分かりだと思いますが… 笑)









TIME LIMIT〜結婚編〜