●REAL●
「僕、実は女なんだ」
18歳の春―――オレと塔矢の関係は大きく変わった。
これは世間に公表する少し前に、オレに告白してきた時のアイツのセリフだ。
もちろんオレは
「…………は?」
と聞き返した。
「今まで黙っててごめん。僕もいつ言おうかずっと迷ってたんだ」
「え…?あの…塔…矢…なに言って…」
「でももう体的にも隠すのが辛くなった。これからは堂々と女として生きようと思う」
「…マジ?」
「でも僕は僕だから。何も変わらない。これからもよろしくね」
「………」
よろしくね、と言って差し出してきたアイツの手を、オレは握れなかった。
少し悲しそうにアイツは笑って、その場を去っていった。
世間に公表した後、アイツはしばらく大変な目にあったらしい。
そりゃそうだ……あの天下の塔矢アキラ様が、実は女だったって言うんだからな。
オレだってビックリだ。
いや、オレが一番ビックリしてるのかもしれない。
そりゃ…まぁ確かに、男にしてはずいぶん綺麗な奴だな…とは思ってたけど……
「オレ…ホモじゃなかったんだ…な」
今更ながら…そう思った。
もうずいぶん前、塔矢への気持ちに気付いたオレは、もちろんその禁断の想いをすぐに握り潰していた。
ただショックだった。
ホモじゃない!オレは絶対にホモじゃない!…って確認するかのように……女の子と付き合って。
別れて。
また付き合って。
また別れて。
女と付き合ってないと、本当にホモになっちゃいそうで怖かったんだ。
だって……どんなに頑張ってもオレの心からアイツが消えてくれないから――
『僕、実は女なんだ』
だが、塔矢アキラは女らしい。
好きになっても何の問題もない相手だったらしい。
「塔矢っ!!!」
気付いたらオレは、アイツの家のベルを連打していた。
出てきた彼女に――そう彼女に(スカートはいてる!めちゃくちゃ可愛い!)、今度はオレの方から手を差し出した。
「塔矢、オレ、オマエが女だって知って…めちゃくちゃ驚いた」
「…そう」
「でも、めちゃくちゃ嬉しいんだ」
「…え?」
「だってオレ、オマエのこと…ずっと好きだったから。男のオマエには絶対言えなかった。でも、女だってのなら、言っちゃうからな」
「……」
「好きだ。オレと付き合って、塔矢」
これはそういう意味の手。
もしOKなら…握り返して?
「……どうして僕が女だと公表することにしたのか…キミは知ってる?」
「え?体が辛くなったからだろ?」
「そうだよ…辛くなったからだ。キミに恋したせいで…二次成長が始まったんだ。今まで来なかった生理が始まった。胸が大きくなってきた。今まで全然だったのに…急にだ」
塔矢がオレの手を掴んできた。
ぎゅっと、しっかりと、すごい握力で握り返される。(ちょっと痛い…)
「全部キミのせいだ」
「うん…じゃあ、責任取らせてよ」
「うん…――」
涙を滲ませてきた塔矢の口に、そっと優しいキスをした。
18歳の春―――オレと塔矢の関係は大きく変わった。
ただのライバルから、プラス恋人同士に。
「…な、どのくらい胸…大きくなったんだよ?調べてもいい?」
「…エッチ」
赤くなった彼女の手をひいて、オレは早速二人きりになれる場所へ向かうのだった――
―END―
以上、実は女の子なアキラさんのお話でした〜。
ヒカル君、ホモじゃなかったね、よかったね。
アキラさんがなぜ男として生きてたのか…という部分は素っ飛ばしました(笑)てへ