●RANKING●





毎年年末にその年のランキングが発表される――



「5割9厘かぁ……微妙すぎる」


大晦日の朝、私は今年の対局結果を振り返ってみた。

自分の勝率の悪さにズーンと落ち込むと、PC前に座っている京田さんに苦笑される。


「まぁ5割超えたんだからいいんじゃない?俺だって6割ちょいしかないし」

「でも私と京田さんじゃ対局相手のレベルが違うじゃん!」


既にリーグや本戦入りをしていて、常にトップ棋士と対局している京田さんが6割なのに。

片やタイトル戦の一次予選止まりで、相手も低段ばかりの私が5割しかないなんて情けなさすぎる!

それでも昔は3割とかだったから、まだ上がって来た方なのかもしれないけど……


「お兄ちゃんなんてちゃっかり1位取りまくってるし……」


私は棋院のホームページを携帯で凝視した。

先日発表された今年のランキング。

三冠になったお兄ちゃんは、「最多勝ち星」「対局数」「勝率」の3部門で1位となった。

勝率なんて8割を超えていて「はぁ??」となる。

化け物だ。


ちなみに精菜も女流棋士の中では「対局数」と「連勝」部門でトップだ。

勝率も7割超えで、普通に全体のトップ10にも入っている。

羨ましすぎる……



「彩ちゃん、進藤君の対局数見た?」

「え?78局…?」

「うん、普通にヤバいよな。うち16局は数日拘束されるタイトル戦だったし、うち8局は海外棋戦だろ?そりゃ緒方さんに会う時間無いよなぁって思った」

「……確かに」


1年は365日だから、単純計算で4、5日に一回は対局してることになる。

タイトル戦は移動を含めたら毎回3、4日は拘束されるわけだし、国際棋戦なんて海外でまとめて打つから更に日程は長い。

対局だけならまだマシだけど、お兄ちゃんはイベントにもゲストで呼ばれまくってるし、両親のタイトル戦には必ず大盤解説の仕事も回って来る。

もちろん雑誌の撮影や取材、対談なんかも相変わらず多くて、対局が無い日もしょっちゅう棋院に呼び出されている。

おまけにまだ高校生なお兄ちゃんは当然学校も行かなければならない。

ちょっとハードスケジュール過ぎる気が……


それでも、忙しいのがお兄ちゃんだけならまだ精菜に会えたんだろうけど……


「精菜も対局数女流でトップだもんね。58局って私の1.5倍…」


精菜は女流のタイトル戦は常に挑戦まで行ってるし、七大タイトルでもほぼ最終予選にまで進んでいる。

おまけに見た目がよくて、頭の回転も早い精菜にはしょっちゅう聞き手の仕事も回ってくる。

もちろん学校だってある。

おかげで二人はすれ違いばかりだ。

何だか可哀想になってくる。


「明日は2ヶ月ぶりにまともにお兄ちゃんに会えるって喜んでたもんなぁ…精菜」

「さすがに年始は進藤君も休みだからね」


初詣の約束をしてるらしい二人。

それも、朝6時に。

(6時なんて真っ暗じゃん!)

まぁ人目を避ける為には仕方ないのかもしれないけど…。



「2ヶ月に一回しか京田さんに会えなかったら私なら発狂しちゃう……」

京田さんに近付いて、私はぎゅっと彼に抱き付いた。

「でも俺らももっと頑張らないとな」

「うん……頑張る」

「じゃ、今から打とうか彩ちゃん」

「……一局打ち終わったら、私にも打ってくれる?」

「……彩ちゃん、何だか親父くさいよ」

「エヘ」



来年はどうかもうちょっと勝率が上がりますように!

ご利益も込めて、私は2日にお兄ちゃん達と初詣に行く約束をしたのだった――







―END―






以上、「REWARD」で緒方先生から『ご褒美』を貰った佐為が、どれくらい頑張ったのかを数値化してみようと書いてみたお話でした〜。
去年は64勝14敗と、8割2分だったそうですよ。
国内外のトップ棋士相手にこの勝率は化け物ですな!
彩は京田さんとイチャつく時間を碁の勉強に当てればもっと強くなりそうな気が(笑)




〜〜帰宅後〜〜


「お兄ちゃん4人で初詣行こ!何か分からないけどお兄ちゃんと精菜と一緒にお参りしとけば私も勝率上がりそうな気がするの!」

「別にいいけど…6時出発な?」

「げげっ」