●THORN PRINCESS〜未来編〜



「アキラ、夕飯の買い物に行ってくるけど、何か食いたいものある?」

「んー、特にないから僕も一緒に行くよ。スーパーで食材見ながら決めよう」



結婚して早3年。

相変わらず本因坊と碁聖のタイトルを保持してるヒカル。

相変わらず女流タイトルばかりの僕。

3年前と何も変わってないけど、それでもお互いを尊重しながらのこの結婚生活は…順調に上手くやっていけてると思う。


だけど最近…何か物足りないんだ…――








「今日は牛肉が安いな。夕飯はステーキにしない?」

「おう!オレステーキ大好き♪久々〜」


付け合わせの人参やらブロッコリーやら、サラダ用のレタス・ミニトマトなど、野菜コーナーで色々買い込んでいると――スーパーでは当たり前の光景が目に飛び込んできた。

親子の…買い物姿だ。


「ママ〜これ買って〜」

「またお菓子?ダメよ。元に戻してきなさい」

「イヤぁ!買って買ってー」


駄々を捏ねる子供。

ひたすら拒否する母親。

ふと隣りのコーナーを見ると……今度は父親も交えて3人で買い物に来ている家族がいた。

そしてその向こうには…赤ちゃん連れのお母さんが…。



「………」



何だか……二人だけの状況が…異様に寂しくなる…。


「アキラ?もうレジに並んじまっていい?」

「え?あ……うん。そうだね…」


レジを通ってる間も…袋に買った食材を入れてる間も…駐車場まで戻る道でさえも……意識すればするほど、嫌ってほど色んな家族が視界に入って来る。


結婚して3年。

もしかしたらもうそろそろ…本気で子供が欲しいと思い始めてるのかも…しれない…――














「んじゃ乾杯♪」

「乾杯」


チンッとグラスを合わせて、ワインを飲みながらの夕飯が始まった。

一緒に作った食事を一緒に食べて……次第に程よく酔いも回ってきて……その勢いでヒカルは僕に甘えてくる――


「アキラ〜好き好き〜vv」

「はいはい」


普段仕事の忙しさで擦れ違いが多い分、今日のようなオフの夜はベッタリと抱き付いて来て……何度もキスされる。


「アキラ〜、オレ子供欲しいな〜」

「………」


いつもなら「まだ無理だ」と拒否する所だけど……何だか惜しい気がしてならない…。

ヒカルは…欲しいんだろうな。

もうそろそろ解禁してもいいかな…――


「うん……じゃあ作ろうか…」

「マジ?!わーいvv」


やったぁ!とご機嫌に僕を寝室まで引っ張っていくヒカル。

ベッドに押し倒され、上からまたしても何度もキスしてくる―。


「んじゃ今夜は…付けないからな?」

「いいよ…」


そう言うと、体中を愛撫された後――生のまま挿れられて……そのまま中で出された。

酔ってるのかと思いきや、意外とヒカルは真剣な眼差しでコトにあたっている。


「アキラ…」

「ん…、あと一回だけね…」

「うん…」


この3年間、避妊は当たり前のことになってたから……この感触は本当に久しぶりだ…。

何だかすぐにでも出来てしまいそう…。

キミの種はすぐにでも僕の卵子を掴まえそうだね…――













「…ん……」


翌朝――目が覚めると僕はヒカルの腕の中だった…。

目の前の彼の鎖骨にキスをすると―――髪にチュッとキスを返された――


「あ…起きてたんだ?」

「うん。オマエの寝顔眺めてた」


ヒカルが更にぎゅっと抱き締めてくる―。


「昨夜さ…オレすげぇ嬉しかった」

「え…?」

「子供…作ってもいいんだろ?」

「……うん」


顔を少し赤めて頷くと……今度は頬に耳に続けてキスをされた―。


「今夜も頑張ってもいい?」

「ふふ…もう出来てるかもね。昨夜のキミはしつこかったから…」

「しつこい言うなよなー。だってやっと許しが出たみたいで、すっげぇ嬉しかったんだもん♪」

「やっと?」

「うん。この3年間…ずっと欲しいなって思ってた」

「早く出来たらいいね」

「おう!楽しみ〜♪」


ヒカルが嬉しそうに久々に僕のお腹を撫で始めた。


優しく――今度こそは…という気持ちを込めて…――









そしてその3週間後に病院に行き、僕は『妊娠6週目』と診断されることになる。

そのまた9ヶ月後に無事に出産。

産まれてきた女の子はきっと…あの時の子と魂は同じだと思う。

今度は心から欲しいと思って出来た子供。

偽りなくそう思える。




生まれてきてくれてありがとう…ってね――














―END―















以上、番外編でした〜。
うーん…甘い…甘々ですな(笑)
でもやっぱりこれくらい甘かったら安心出来ます。
ヒヤヒヤ話も楽しいですが、やはり甘々話も書いてて楽しいです。
これから幸せになってほしいナー。
…ということで、取りあえずこれにて茨姫は終了です。
ありがとうございました!