●OVER 30●




エレベーターに乗ろうとしたら、横の階段から何やら大声が聞こえた。

聞き間違うはずのないライバルの声。


「だから研究会があるんだって!」


電話の相手は相変わらず聞き分けの悪い彼の彼女だろう。


「明日なんて無理に決まってるじゃん!は?週末なんて空いてるわけねーだろ!前にも言っただろ?泊まりで仕事だって!は?浮気?いい加減にしろよお前!」


…前々から思っていたが、何で彼はあんな女と付き合ってるんだろうかと不思議でならない。

世の中にはもっとキミにぴったりの女性がいるはずだ。


「とにかく明日はダメだって!どうしても!―――あ!切りやがった、くそっ」


はーー…と大きな溜め息をついた彼がエレベーターの方にやってきた。



「大変そうだな」

「塔矢…」

「余計なお世話かもしれないけど、棋士という職業を理解出来ない女性とは早く別れた方がいいよ。意味がない」

「分かってるよ。分かってるけど……」

「いっそのこと、もう棋士と付き合ったら?奈瀬さんとか」

「はは…ありえないって」

「じゃあ豊田三段とかは?鈴木五段とか。本田初段とか。皆キミに気があるみたいだけど?」

「…塔矢九段とか、も?」

「は…?僕?」

ニッと進藤が笑ってきた。


「ダメ?」

「駄目というか……じゃあお互い30歳を過ぎてもまだ独身だったら、いいよ」

「ハハ、それいい。約束な♪」



この時は軽く約束をした僕ら。

まさか数年後。

本当に実現するなんて思いもしないで―――








―END―










以上、30過ぎたら結婚しちゃいますか!話でした〜。
あらら、超短編だわ。

でもこういう約束って素敵だな〜と思います。
お互いそれなりに好きだから、30過ぎてももしお互いが独身だったら結婚してもいいかな〜なんて。
そして実際30になっちゃったら、やっぱり35とか延ばしたり(笑)
ギリギリまで独身を楽しむ二人も人生満喫してていいかな〜と思います。