●OUTPATIENT QUALIFYING 3●
10人でリーグ戦を行った外来予選。
僕は全勝で突破した。
「おめでとう、佐為!」
世間は夏休み終盤。
今日も朝から彩のところに遊びに来ていた精菜と、帰り際に玄関で会った。
「次の合同予選は私も出るからよろしくね」
お手柔らかに、と笑顔を向けてくる精菜に僕は顔をしかめた。
「精菜、ちょっと話せる?」
「え?うん…」
彼女の手を取って自分の部屋に引っ張っていった。
「佐為の部屋久しぶり…」
少し顔を赤めてキョロキョロ見渡していた。
「…院生順位、13まで落ちたんだってな」
「あ…うん」
「ふざけてるよな。いつまで親と遊んでるんだよ」
「え…?」
「院生の連中バカにしてないか?」
「し、してないよ。何でそんなこと言うの?」
「いや、してるだろ。研修なんか出ても出なくても同じ、プロ試験だって受かっても受からなくてもどっちでもいいって、本当は思ってるんだろ?」
「思ってないよ!」
「今回の外来予選受けてて思った。皆人生かけて試験に挑んでるんだって痛感した。もちろん僕だってそうだ」
「私だって…本気だもん」
「じゃあ何で先週の研修も休んだんだよ?緒方先生と旅行に行ってたらしいじゃん!」
「それは…」
「どうせ今度の合同予選も適当に打つつもりなんだろ」
「そんなこと…ない」
「嘘だね。6人も通過出来る。だからちょっとくらい手を抜いたって平気とか思ってるくせに」
「佐為…ひどい」
「どっちが。全部図星だろ」
「……」
精菜の瞳に涙が浮かんでくる。
まだ小学5年の女の子に何を言ってるんだろう。
「本気だもん…」
「じゃあちゃんと打てよな」
「分かってるよ!」
「今度の予選、全部並べてもらうからな。手を抜いてたら、もう別れるから」
「……え」
「もちろん僕との対局も」
「佐為……」
「無様な結果は許さない。僕とこれからも付き合う気があるなら、真剣に打てよ」
「佐…為…」
「話は以上。じゃあな。気を付けて帰れよ」
精菜の背中を押して、部屋から追い出した。
バタンッとドアを勢いよく閉める。
しばらくして、精菜が階段を降りる音が聞こえた。
母に「お邪魔しました…」と消え入るような声で挨拶しているのが微かに聞き取れた。
窓から外の様子を伺う。
泣いているんだろう。
精菜が指で目尻を拭っているのが見えた。
罪悪感が僕を襲う。
父のあの悪魔の提案が何度も頭を反響する。
――じゃあ、こうすれば?――
――本気にさせるのなんて簡単だって――
――怒らせればいいんだよ――
「お兄ちゃん!!どういうつもり?!精菜に何言ったの?!」
精菜を泣かせたことで怒り狂った彩がドンドン部屋のドアを叩いてきた。
「うるさい!彩には関係ないだろ!」
と叫んでおく。
「もうお兄ちゃんなんて知らない!」
バタバタ豪快に階段を降りていった。
夜に精菜からメールが一通送られてきた。
そこには
『私予選全勝するから』
と一言だけ書かれてあった。
全勝――それは僕にも勝つということ。
僕も一言だけ返す。
『楽しみにしてる』
勝負だ――
―END―
以上、佐為のプロ試験、外来予選編でした〜。
あれれ、最後ヒカル君のアドバイスのせいで何か大変なことに・・・
佐為はよっぽど精菜と本気で戦いたいみたいですなぁ〜
次は合同予選編でーす☆