●OR●


オレがフラれる直前に言われる台詞は2パターンしかない。

1つは

「私と囲碁とどっちが大事なの?!」

だ。

よくある「私と仕事〜」の棋士バージョン。


…そんなの選べねぇよ。

どっちも大事だし!

でも女は自分を選んでくれねぇと怒りだして……口論になる。

酷い奴は「私のために仕事辞めて」とか言ってきやがる。

冗談じゃないぜ。

当然そんな女とは速攻お去らばだ。

棋士という職業を理解出来ない奴とこれ以上付き合っても意味ないし。


そしてもう1つが

「私と塔矢さんとどっちが大事なの?!」

なんだけど………ちょっと待て。

何で塔矢?!

アイツはただのライバル!同僚だって!

もちろん「お前の方が大事に決まってんじゃん」って即答するんだけど、彼女より塔矢といる時間の方が断然多いオレの言葉を、当然彼女達は信じてくれない。

んでオレも1回や2回ならいいが、3回も4回も5回もしつこく言われ続けるとキレてしまい…つい言ってしまうんだ。


「ああそうだよ!お前なんかより塔矢の方が大事だっ!」


て―。

何言ってんだオレ…。

確かにアイツは碁を高めていくのに欠かせない相手で、大事には変わりないけど…『大事』の意味が違う。

つーかさ、仕事以外じゃあんなに優しく尽くしてやってんのに何が不満なわけ?

お前ら幸せボケしてんじゃねーのか?!

はぁ…。オレって女運ないのかも…―










「進藤、キミまた彼女と別れたんだって?」

「うるせーなぁ…放っといてくれ」


オレがフラれるのは半分オマエのせいなんだからな!!

とキレつつ、バチッと必要以上に煩く音をたてて打った。


「いつもフラれてるんだろう?一体何が原因なんだ?キミの性格の悪さ?」

「なっ…、違うって!仕事だよ仕事!オレが碁一筋なのが他のお嬢さん方は気に入らないみたいなんだ」

「なんで?いいことじゃないか。それのどこが悪いのか僕には理解できないな」

「だろ?!こんなに仕事が大好きで真面目に頑張ってる奴なんて今の時世滅多にいないぜ?収入はいいし、容姿はいいし、好物件だと思うだけどなぁ…」

「それを自分で言う所がダメなんじゃないのか?」

「……」


そうなのかな…。

オレって自信過剰?

でも皆が一番最初に見る所って所詮容姿じゃん?

オレはその良さでだいたい目をつけられるんだ。

んで知名度とか年収が加わり交際を求められる。

でも仕事仕事で会う時間が持てないから……結局はフラれる。


「オレって恋愛には向かないのかな…。この調子だと一生結婚も出来ないかも…」

「そんなことないと思う。恋愛と結婚は別物って言うだろう?たぶん今の進藤は彼氏より夫向きなんだよ」

「夫、ね。じゃあお見合いでもするかな。そしたらいきなり結婚まで話進むし…」

「後援会の人に話持ち掛けてみるといいよ。いい人紹介してくれるかもよ?」

「だな。あー…待って。オレがフラれる原因ってオマエと会い過ぎることも含まれてるんだった」

「僕と?」

「うん…。やっぱ他の女と会うのをよく思う奴っていないじゃん?それは夫になっても一緒な気がする…」

「じゃあ何か?結婚したら僕とは打ってくれなくなるのか?冗談じゃないっ!」

「オレだってヤダよ!まだまだ伸びる時期なのに!」


でもそれじゃあ一体どうすればいいんだ?

オレは一生独り身なんてゴメンだぜ!

出来れば今だって彼女が欲しい!

たまにしか会えなくても…いてくれるだけで心の支えになるんだ。


「…そうだ。いいこと思い付いたよ進藤」

「マジ?いい解決策?」

「うん。僕らが結婚すればいいんだよ」



は?



「そうすればどんなにキミと打とうが誰にも迷惑がかからないだろう?僕なら仕事一筋のキミは大歓迎だし」


…なるほど。


「そうか…そうだよな。オマエなら棋士という職業も理解してるし」

「それはもう嫌って程にね」

「…あ、でもオレ子供欲しいぜ…?産んで…くれる?」

「いいよ。どうせ僕もこのままだとそのうちお見合いさせられて、無理やり結婚させられることになるだろうし。その人の子供を産むのもキミの子供を産むのも大して変わらないしね」

「よし、んじゃ婚約成立な。近いうちに指輪贈るよ」

「ありがとう」


そうだよ!

塔矢と結婚すれば良かったんだ!

あー、何で気付かなかったんだろ。

オレって馬鹿。

まさに「灯台下暗し」だな。



――そして数日後

オレは早速エンゲージリングを買って、塔矢の指にはめてみた。

「7号で良かったんだよな?」

「うん。わ、キレ〜イ」

こんな塔矢でもやっぱり光り物には弱いみたいで、予想以上に喜んでくれた。

「大事にしてくれよ?一応給料の3ヶ月分のにしたんだから」

「通りで大きな石だと思った。ありがとう」

「いえいえ」

手を握り締めながらお互いニコニコ笑いあった。

うん、いい感じだ。

塔矢とならうまくやっていけそう。

今はもうほとんどケンカしたりもしないし、結婚したらきっと今まで以上にいい関係が作れそうだ。

碁も打ち放題だし、一石二鳥三鳥の最高の相手だよな!



そしてオレらは数ヶ月後にスピード結婚して、ゴールインすることになる。











―END―











以上、ヒカアキ突然結婚話でした(笑)
2人とも結構適当です。
にしてもヒカルの彼女達もあんなに毎日毎日アキラに会われたら怒るよ…キレるよ…どっちが大事なの?!って聞きたくなるよ…。
ヒカルの結婚相手にはアキラ以外ありえないと思います!ハイ!

さてエンゲージリング。
今時3ヶ月分もないでしょう…(笑)
しかもヒカルの3ヶ月分だと…うん百万ですね!ワオ(*_*)

実はこれの続きも今書いてます。
結婚式後の2人の初夜話(笑)
当然R15な内容ですので、苦手な方はご注意下さい〜。
ではどうぞ〜。









WEDDING NIGHT