●MOVIE●


進藤はデートでよく映画に誘ってくれる。

だけど僕はそれがあんまり嬉しくなかったりするんだ。


確かに映画自体は面白いし、すごく感動したり感銘を受けることも多い。

思わず泣いてしまうこともある。

だけど彼が誘ってくれる映画はほとんどが洋画で……しかもハリウッドが多い。


つまり…

無駄にラブシーンが多いんだ…。


ほんの一瞬キスするぐらいならまだ許せる。

だけど濃厚な深いキスが続いたり、果てはその先にまで進んでしまうと………僕はどうすればいいのか分からなくなるんだ。


じっと見入るのもどうかと思うし…

かといって目を逸らすのも変じゃないか…?

酷い時は前や横に座ってるカップルがいちゃいちゃしだしたりして……僕はもう席を立ちたくなる…。





「お、これもう始まってるんだ」

「え?」

デート中に入ったカフェで、置いてあった雑誌を何気なく読んでいたら、映画の特集ページになったところで進藤が覗きこんできた。


「な、今から見に行かねぇ?」

「…いいけど」

承諾すると手をひかれ、直ぐさま映画館に連れて来られた。


進藤がチケットを買いに行ってる間に僕はパンフレットを買って、その映画の内容を確認してみる。


よし。

アクションものだから、今回は苦手なラブシーンはなさそうだ。

少なくともこれに載ってるカットにはその類いのものは見当たらない。

今日は純粋に映画を楽しめそうだな。


…などと安心して見入っていると見事に予想は裏切られ……主人公とヒロインが抱き合い出したり…。



…もうイヤ…



目を逸らすとふと進藤の顔が視界に入ってきた。

真剣に映画に見入っているようで、じっと前を見つめている。

進藤は…こういうシーンを観ても何とも思わないのだろうか…。

男の子は普段からもっとエッチなビデオとか見てるらしいから……この程度では何とも感じないのかな?

僕には刺激が強過ぎるぐらいなのに…―








「面白かったな〜」

「う、うん」

映画が終わった後、下のカフェに入っていつも通り感想タイムが始まった。


「オレ主人公マジで死ぬんじゃないかってすげードキドキした」

「ちゃんとヒロインも助かったし、ハッピーエンドになってくれて良かったね」

「だよな〜」


進藤が僕の目をジッとみてくる。


「…にしてもオマエ、相変わらずあのシーンの時…挙動不審になるよな」

「え…?」


どういう意味なのかすぐに理解出来たけど、わざと分かってない振りをして首を傾げてみた。

というか……進藤にバレてたんだ…!

途端に恥ずかしくなって顔が赤くなる―。


「な、塔矢気付いてた?」

「え…?」

「オレさー、わざとラブシーンのある映画をオマエに観せてんだぜ?」



え?!



「ど、どうしてそんなこと…」

「え〜、だってオマエが毎回懲りずに目を泳がすところがすげぇ可愛いんだもん」

「なっ…」


ということは確信犯だったのか?!

くそっ!

思いっきり殴ってやりたい…!



「…てのが半分で、オマエに男女の付き合い方を教えてやりたかったってのがもう半分の理由なんだよな」

「は…?」

「だってオマエさー…初めてベロチューした時、不潔!何するんだ変態!気持ち悪い!…みたいな顔したじゃん?」

「そ、そうだっけ…」

「オレすげー傷ついたんだぜ?だからそれは別に普通のことだってさり気なく教えてやりたかったんだよ。直接だとオマエ聞く耳持ってくれねーし…」

「……」


確かに…映画を観て初めて知ったそっちの方面のこともたくさんある。

舌を絡めあってする濃厚なキスも、映画で観てからは進藤がしてくるのを抵抗なく受け入れれたし…。

まだしたことないけど……その先のことも…。



「あと…オマエがその気になってくれねぇかな〜なんて、毎回ちょっと期待も込めてんだけど…」

「え?」

「や、ごめん。何でもない…」

進藤が少し顔を赤くして慌てて下を向き、アイスコーヒーを飲み出した。


今…、僕がその気になったら…って言った?

その気って…どんな気だ?

そっちの気分ってことか…?

そんなの、例えなったとしても女の方から口に出すものじゃないだろう?

少なくとも僕は絶対にそんなはしたない真似はしたくない。

だから…


「キミ次第だよ…」


と言ってみた。

たちまち更に顔が赤くなる僕ら。


付き合い始めて約半年。

僕と進藤も、あの映画の中でしていたようなことをする日が…近いのかもしれない…――














―END―
















以上、映画でアキラに恋のABCを教えよう作戦でした〜。(痛いネーミング…)
ヒカアキはたとえ付き合いだしてもライバルはライバルなので、お互い相手に教えられるのが嫌いだと思うんです。
妙にプライドが高い二人…。しかもヒカルはアキラ限定、アキラはヒカル限定で。
でもお互いない部分を補っているという最高のカップルです。
例えばアキラは流行や今回のようなそっち方面には疎い気がしますが、そこはヒカルがカバーしてくれるでしょ?
ヒカルはヒカルで言葉遣いとか、生活態度の悪さ(笑)をアキラが直してあげてると思います。
んー、でもアキラは多少世間とズレてる方が可愛いかな?(笑)
でもでもヒカルは全てをオールマイティーにこなして、アキラが惚れ直すぐらいの方がカッコいいですよね!
あー…ダメだ。どうもヒカルに夢を見すぎます…(笑)