●MENSTRUATION●
(うそ?!やだやだやだ…冗談でしょ?!)
精菜は小4から生理があったけど、私はなかなか来なかった。
結局来たのは小6の夏で、プロになった後だった。
しかも、よりにもよって、手合中。
対局途中に違和感を感じた私は、中座して慌ててトイレに駆け込んだのだった――
「どうしよう……」
下着が真っ赤になっていて、私はトイレの中で途方に暮れた。
こんな状態で対局に戻れるわけがないからだ。
生理になったことのなかった私だから、当然ナプキンも常備してるわけないし、替えの下着ももちろんない。
「ホントどうしよう……」
半泣きになる。
軽くパニックだ。
ただ、唯一の救いは今の時刻が12時前だということだ。
このままお昼休憩に入って、その間になんとかしようと思った。
目指すは駅前のコンビニ。
でも今の状態で自分で買いに行けるわけがない。
誰か……誰か助けて!!
でも運悪く精菜は今日は手合いの日ではない。
いるのは……お兄ちゃん。(絶対無理!)
京田さんもいる。(もっと無理!)
しかも今日の私の対局相手は京田さんだった。
公式戦での記念すべき初対局だった。
めちゃくちゃ気合い入れて臨んでたのに、どうしてこんなことに……
私がなかなか戻って来ないから、今頃不思議に思ってるかもしれない。
でも彼にだけは絶対に知られたくなかった。
だってだって生理って……将来子供を産むために来るものなんでしょう?
京田さんが好きで、一応4年後に付き合う約束もしてる私は、どうしてもその先の未来も想像してしまっているのだ。
いつか彼と結婚出来たらいいなぁ…と。
そしたらいつか彼の子供を産むことになるのかなぁ…と。
ということは、この生理は将来京田さんの子供を産むためのもの?
そう考え出したらカーッと私の顔はもうありえないくらいに真っ赤になった。
いけないいけない、こんなトイレで、悠長にそんな妄想してる場合じゃない。
とりあえずこれ以上下着が真っ赤にならないようトイレットペーパーを大量に取ってナプキン代わりにした私は、今日5階にいるはずのお母さんに助けを求めてトイレを後にしたのだった――
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「あ、お帰りなさーいvv昭彦さん」
「ただいま、彩」
仕事から帰って来た旦那さまを、私は今日も笑顔で出迎えた。
夕飯を一緒に食べながら、さっきふと思い出したことを彼にも話してみる。
「ねぇ、昭彦さん。私達が初めて公式戦で対局した日のこと覚えてる?」
「え?」
「私ね、実はあの時初めて生理になっちゃって。途中から対局どころじゃなかったんだよ?」
「そうだったんだ?あ、思い出した。確か進藤君と昼ご飯食べながら、彩どこに行っちゃったんだろって話してたんだよな」
あの日から早10年。
あの時妄想していたことが今現実になっている。
大好きな京田さんと結婚して。
そして彼の子供を今…身籠っている。
もうすぐ安定期に入るお腹を私は優しく撫でた。
彼も撫でてくる。
この10年間、毎月決まってやって来る生理は苦痛でしかなかったけど。
いつか京田さんの子供を産む為なんだと思ったら我慢出来た。
双子なのには正直驚いたけど。
でも、きっと2倍の楽しみがこれから待ち受けている。
「早く会いたいね、昭彦さん」
「そうだな…」
お腹を二人で撫でながら、私達はそっと唇を合わせた――
―END―
以上、彩の初経の日の思い出話でした〜。
まさかの京田さんとの対局中ですw
あの後「お母さん助けて!!」と5階のアキラの元に駆け込んだ彩〜。
アキラに代わりに買ってきてもらって、着替えて、お昼からの対局に臨んだらしいです。
まぁお腹痛くて全然集中出来なくてボロ負けだったらしいですが。
そんな10年前を思い出した彩ももう22歳。
京田さんは27歳です。
GWの結婚式の2ヶ月後の二人です。
実は結婚式の後すぐに妊娠が発覚しています。
またその時の話も書きたいな〜vv
(いや、むしろ子作りしてる二人が書きたいでしょvv)