MEIJIN 36〜精菜視点〜





「おはよ〜精菜」

「あ…、おはよう彩」


海王囲碁部に指導碁に行った翌日。

私は今日もいつも通り彩と駅で待ち合わせて学校に向かった。

佐為の姿は今日は無くて、ちょっとガッカリしたけれど……


「…佐為は?」

「もうとっくに学校だよ。お兄ちゃん、ついに朝も補講入れられ始めたからね。夕方だけじゃ追いつかないみたい」

「そう…」

シュンとする私に、彩はニマニマいやらしい顔を向けてくる


「で?昨日あれからお兄ちゃんとどこ行ってたの?」

「え?佐為の教室だけど…」

「それだけ?それにしてはお兄ちゃん、家に帰って来るの遅かったけどな〜」


突っ込まれて、途端に顔を赤くする私に、

「まさか教室でエッチしてないよね?」

と、とんでもないことを言ってくる。


「す、するわけないでしょう?ちょっと…、キスしただけよ…」

「なーんだ、キスだけか」


ガッカリ〜と彩が肩を竦める。


「まぁお兄ちゃん、今日は精菜の部屋寄るだろうし、続きはそこでって感じ?」

「…どうして佐為がうちに来るって思うの?」

「だって今日から緒方先生、天元戦で札幌じゃん。お兄ちゃんを連れ込むチャンスだもんね?」

「連れ込むって…」


言い方はアレだけど、今日の放課後に佐為が私の部屋に来るのは事実だ。

あの岐阜での名人戦第3局以来、2週間ぶりにイチャイチャ出来るのだ。


(楽しみ過ぎて鼻血出そう…)


私は浮足立ちながら学校へ向かったのだった――

 

 

 



とはいえ、対局で学校を休みがちなのは私も同じなので、今日も放課後私も補講を受けなければならない。

今日の1科目目は社会で、50分の間にこの1週間で進んだ日本史・世界史・地理を詰め込まれる。

相変わらず成績は学年トップの私には先生達も期待してるみたいで、親切丁寧にじっくり教えてくれる。


(意味ないのにな…)


先生達は私が東大でも行くことを期待してるんだろう。

確かにこのまま真面目に勉強し続けたら、それも夢じゃないと思う

私の母親は東大出身で、お母さんに頼めばいくらでも合格に必要な点数の取り方やコツを教えてくれるだろう。

でも私には他に夢があるのだ。

それはもちろん――佐為のお嫁さんだ。(きゃー///

彼の妻になる為にはぶっちゃけ学校の勉強なんてどうでもいい。

ただ高校だけは卒業するという母親との約束があるので、単位を取るために学校も真面目に行くし、補講だってちゃんと受ける。

でもそれよりこれからの私に必要なのは――地位だ。

すっかり有名人になってしまった佐為の妻になるためには、世間が、ファンが、納得するぐらいの女性にならなくてはならないのだ。

手っ取り早いのは私もタイトルホルダーになることだけど、流石に七大タイトルは無理だ。

せめて女流のタイトルが1つでも取れればと思うけど、女流のタイトルを保持してるのも結局は塔矢名人なので、やっぱり七大タイトル並に頑張らなければならないのだ。


(気が遠くなる…)


とはいえ、囲碁ばかり頑張って佐為を放っておいたばかりに、彼の目が他に移っては元も子もないので、定期的に私は彼の発散に付き合うのだ。

 

 

 

 

 

 


「精菜、お待たせ…」

「お疲れさま、佐為…」


19時近くになってようやく佐為が家にやってきた。

今日は朝も夕方も更に昼休みも返上で補講を受けてきた彼は、着いた頃には疲れ切ってしまっていた。


「大丈夫…?」

「問題ないよ」

とは言うけれど、明日も朝から本因坊リーグを控えてる佐為。

本当は早く帰って休んだ方がいいのではないだろうか……


「でも、ちょっと横になってもいいかな…?」

「もちろん。ベッド使って?」

「ベッドでもいいけど…」

「え?」

「膝枕の方がいいな…」


そんなことを言われてドキンと胸が高鳴る。

(甘えてくる佐為、超可愛いvv)

早速膝枕をしてあげながら、よしよしと髪を撫でてあげた。


「お疲れさま…、何ならこのまま一眠りしちゃう?」

「そんな勿体ないことはしないよ…」

「ふふ…、やっぱり?」

「うん…」


私の髪の先を掬って…、チュッとキスしてくる彼。

その瞳には既に熱を帯びていて…私を誘ってくる。


「精菜…、キスして?」

「う、うん…」


私の方が屈んで…、ゆっくりと彼の口に近付いていって……唇を合わせた。


「――…ん…っ」


いつもならすぐに返してくれて濃厚なキスになるのに、一向に動いて来ない彼。

仕方ないので私の方から舌を挿入して……彼の口内を探っていく。


「ん…、ん……」


変な感じだ。

まるで寝てる彼にキスしてるよう。

何だか物足りなくて、私は唇を離した。


「佐為…、やる気あるの?」

「もちろん」


とは言うものの、一向に動こうとしない彼。

そっちがその気なら、この際だから私も好きにさせてもらう。

膝枕をやめて、ラグに横たわらせた彼に覆いかぶさった。

チュッと首筋にキスをして、そのまま吸って痕を付けてやる。


「僕明日対局なんだけど…」

もちろん佐為の対局は中継される。

「流石にキスマークまでは映らないから大丈夫だよ。そこまでズームされないし」

「そうだな…」


彼の服を脱がしていき、暴かれて来た肌にチュッチュとキスを止め処なくしていく。

いつも彼がしてくるように私も彼の胸を揉むと、

「そこは別にいいよ…」

と手を捕まれた。

「くすぐったい?」

「まぁね。それより精菜のを揉みたいかな…」

と私の胸に手を伸ばしてくる。


「きゃ…っ――」


と思ったら、あっという間に転がされて、上下逆転。

私の上に乗ってきた彼に上から見下ろされる。


「ここでする?」

「ベッドの方がいいかな…」

「分かった」


佐為にヒョイとお姫様抱っこな持ち方で持ち上げられて、ギョッとなる。


「ちょ、佐為、私重たいから…っ」

「重くないよ。全然」


ベッドに優しく下ろしてくる彼。


「この前も言ったけど、ダイエットなんてしなくていいからな」

「…胸が小さくなったら困るから?」

「うん。せっかくここまで育てたのに」

と私の胸を愛おしそうに揉んでくる。

最初は服の上から、次に下着の上から、最後は直に……時間をかけて愛撫される。


「――…ぁ、…は…、ぁ…っ…」


気持ちいい。

私の感じる場所を知り尽くしてる彼。

胸はもちろんだけど……当然下もだ。

「ぁ…っ、…ぁ…ん…」


あっという間に準備万端にされる。

我慢出来なくなる。


「…そういえば一昨日あの講義受けたんだって?」

「あ…避妊のやつ?うん…」

「どう思った?」

「そりゃまぁ……気を付けなきゃなって」

「セックスするなって学校は言いたかったみたいだけど?」

「まぁ……それが出来るなら一番理想だよね…」

「精菜は出来る?」

「え?」

「我慢出来る?また触り合うだけに戻る?」

「そんなの…」

そんなの……言うまでもない。

我慢出来る訳がない。

やっと、やっと高校生になって佐為と本当の意味で結ばれたのに。

やっと本当の彼女になれたのに。


「佐為は我慢出来るの…?」

「まさか」

「じゃあ…、もし私が妊娠したらどうするの?」

「大人しく緒方先生に殴られに行くよ」

「ふふ…」


その一言が嬉しくて、私は彼の胸にぎゅっと抱きついた。


「よかった…」

「僕が逃げると思った?」

「思わない。全然…」

「精菜も逃がすわけないから」

「え…?…ぁ……っ――」


彼の欲望が、私の中に突き刺さった。

激しくて、でも決して痛め付けず優しく動いてくる彼に、愛情を感じずにはいられない。

私が感じる丁度いい強さに上手く調整してくれてるのだ。


「は……精菜……」

「佐為…」

「好きだよ精菜…、絶対に逃さないからな…」

「それはこっちの台詞だよ…」


ずっと私を愛してて。

ずっと私だけを見ていて。

死ぬまで。

ううん、死んでからも。

永遠に――

 


「…ぁ…、も…、だ…め……っ――」


ドクンと登りつめて……私の体は脱力した。

彼の方も私に体重を預けてきたから……達したんだろう。

荒い息が収まるまで、私達は無言で抱き締めあっていた。

しばらくして、チュッと彼が私のこめかみにキスしてくる。


「佐為…、私達ちょっと依存気味かもね…」

「…かもな。精菜がいなくなったら、僕もう打てなくなるかも…」

「それはないんじゃない…?」

「ううん。絶対打てない…」

「そう…、じゃあ傍にいるね。ずっと…」

「うん……ありがとう」

 

 


その後うっかり二人で眠ってしまった私達。

玄関のドアが開く音で私達は目を覚ました。

時計を見ると21:30

ヤバい!お母さんが帰って来た!


慌てて私達は着替えて、佐為は

「すみません、長居してしまって…」

とお母さんに謝って帰って行ったのだった――

 

 

 

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