●TIME LIMIT〜母親編〜 4●
その晩―――オレは塔矢の夢を見た。
最後の誕生日…二十歳の誕生日に塔矢と過ごした一夜の記憶だった。
何度もキスして、何度もエッチして、何度も好きだと言ったあの夜。
あの時の彼女の体温……オレはまだ忘れてない。
忘れられるもんか。
…でももし他の女と付き合ったり結婚したりしたら……いずれは忘れてしまうのだろう……
そんなの嫌だ―――
「――……ん…」
千明にバレないようにコソッと、塔矢の肌を思い出しながら自慰をした。
確かに結婚したら、こんなことしなくてすむ。
千明にも母親が出来る。
でも、オレらはそんなこと望んでない。
実は似た者親子なのかもな。
オレらが本当に求めてるのは…塔矢だけなんだ―――
「すみません。やっぱりオレ…」
翌日――オレは優子先生にキッパリと断った。
「…そうですか」
「気持ちは嬉しかったです。でもやっぱりまだ千明の母親のことが忘れられなくて…」
「羨ましいです…千明ちゃんのお母さんが。きっと私なんかよりずっとずっと…素敵な女性なんでしょうね」
「…優子先生には、オレなんかよりもっとピッタリの男が現れますよ」
「ありがとう…」
子持ちになっても、オレは結構モテた。
でも、オレが他の女になびくことは一度もなかった。
今回のことで千明には母親は必要ないと分かったから、二度と結婚を考えることもなかった――
時は過ぎ――オレが塔矢と再会した頃、一枚のハガキが届く。
優子先生の結婚報告のハガキだった。
「誰?」
と塔矢が聞いてきた。
「千明の保育所の時の先生。ふーん…結婚したんだ。よかったな」
「…何か意味深?」
「別にー」
お返しに、オレも塔矢との結婚ハガキを送ってみた。
『優子先生も結婚おめでとう!オレも千明のお母さんと結婚出来たよ!』
と添え書きして―――
―END―
以上、千明に母親が必要か悩〜むヒカル話でしたー。
ヒカルはね、子持ちでもモテモテなんです。
新しい恋愛をする機会もいっぱいあったんです。
でもしなかったんです!
アキラのことが好きだから!!
…あははー、本当はただアキラを想像して自慰をするヒカルが書きたかっただけなのに、全く別もの話になっちゃったー(笑)