●LOSE●





「――…んっ、…んん…っ、ん…」


口内中を激しく貪られる。

絡みあった舌からお互いの唾液が混ざっていく。

一週間ぶりにした恋人とのキスは、一週間前とはまるで違う、荒々しくて乱暴な余裕のないキスだった。

目を少しばかり開けると、苦しそうに瞳を閉じた彼がいて。

どうしようもない自分自身への怒りにもがいているように見えた。

私は彼に少しでも気持ちが楽になってもらう為に、再び静かに目を閉じて…彼の全てを受け入れるとこにした――








「…ラブホは私が18歳になるまでお預けなんじゃなかったの?」

「…………ごめん」


コトが終わった後、冗談混じりにそう訊ねると、ようやく頭に上った熱が冷めた彼は静かに謝ってきた。


「痛くなかった…?」

と気遣ってくれるのは、強引に私を抱いてしまったことに負い目があるんだろう。


「大丈夫だよ…」

「……ごめん」


項垂れる彼に、私はヨシヨシと彼の頭を撫でた。

そして身体をぎゅっと抱き締めてあげる。


「検討…付き合おうか?」

「精菜…」


ありがとう…と、彼は鞄からマグ碁を取り出してきた。

情事の後でお互いまだ素っ裸な状況で、今日の一局を振り返っていった。


本因坊リーグ・最終局。

勝てば佐為は四冠に向けて挑戦者になることが決まっていた。

けれど終盤に有り得ない悪手を打ってしまい、一気に形勢は逆転。

結局その失着の差を埋めることが出来ず、格下相手に彼は敗れてしまったのだった。


「一分碁だったんだから仕方ないよ。誰だって間違える」

「……そうかな。普段の僕ならこんなポカはしない」

「うん…そうだね。ちょっと油断した?」

「……そうかもしれない」


世間の期待が重くのし掛かってくる。

佐為が背をってるものは大きい。

きっとプレッシャーは半端ないと思う。

終局後もマスコミが簡単に帰してくれるはずもなく、永遠と敗者インタビューが続いたらしい。

(酷な話だ…)


今日は私も偶然対局日だった。

一緒に帰ろうと近くのカフェで時間を潰していた私は、彼から連絡が来るなり棋院の駐車場に向かったのだけれど……


「佐為……?」

「………」


一週間ぶりに再会した彼は……いつもの彼ではなかった。

一言で言うと、疲れきっていた。

そして有り得ない負け方をした悔しさと自身の不甲斐なさに、苛立ちが爆発寸前の状態。


「佐為……大丈夫?」

「……ごめん精菜。今ちょっと運転出来る状態じゃない」

「うん…」

「頭が冷えるまで僕はここにいるから、タクシーで帰ってくれる…?」


私の眼も見ずそう告げてきた彼を――私は即座に抱き締めた。


「私も一緒にいる…」

「でも……もしかしたら朝までかかるかもしれないし…」

「じゃあ朝まで一緒にいる」

「……」

「辛い時くらい私に甘えてくれていいんだよ…?」

「……」


すると私の腕を解いた彼は車を発車させた。

向かった先は彼のマンションでも私の家でもなかった――










「マスコミにバレても知らないから…」

「その時はカメラの前で堂々と宣言してやるよ。精菜とはもう10年近く交際してるって…」

そして

「いつか結婚するつもりだって…」


そう耳許で囁いてきた彼ともう一度キスをして、私達は再び身体を合わせる為にベッドに横たわる。

きっと今度はとびきり甘く優しく抱いてくれることだろう――








―END―








以上、敗戦後にラブホでエッチしちゃったよ★な話でした〜。
(そんな軽いノリではない)

佐為19歳、精菜17歳(高3になったばかり)の4月のお話です。
17歳で三冠になった佐為ですが、しばらく三冠時代が続きます。
防衛は出来るけど、奪取が出来なくなってしまうというスランプに陥るのです。
今回の本因坊戦も挑戦者まであと一歩のところで敗れる結果に。
でもマスコミは四冠、五冠と煩いのです。
そのストレスはきっと半端ないのです。
そんな佐為をヨシヨシと慰めてあげる精菜です。
車をどんなに飛ばしても家まで20分はかかるので、早く精菜を抱きたかった佐為は仕方なくラブホを選択したのです。
さすがにまだマスコミがうろついてる中、車でエッチする勇気はありませんw
1回目はちょっと乱暴に好き勝手抱いてしまいましたが、精菜の期待通り、2回目はきっとラブラブ甘々なエッチをする二人なのでしたvv


〜〜翌日の学校で〜〜

「精菜〜昨日お兄ちゃん残念だったね。お兄ちゃん落ち込んでなかった?」
「…………えっ?///」

思い出して顔を赤くする精菜〜。

「……精菜、お兄ちゃんと何かあった?」
「え…えへへ……。実はね……」

こっそりと彩に佐為とラブホに行ったことを打ち明けます。
もちろん朝帰りな上、そのまま学校に来たこともvv

「マジで?!お兄ちゃんったら負けた後に精菜を連れ込んだの?!」
「そ、そんな言い方しないでよ〜〜」

もちろん彩はこっそり京田さんにLINEで報告ですよw
さて京田さん、今日はヒカルの研究会の日です。
休憩中にそのLINEを読んだ京田さんは思わず飲んでいたお茶で噎せてしまいます。

「京田さん大丈夫ですか?」
「う……うん」

(進藤君、昨日の今日なのにやけに落ち着いてるなと思ったら、緒方さんにしっかり慰めて貰ってたのか……)
と納得する京田さんなのでした〜!チャンチャンw