●TIME LIMIT〜離別編〜 11●



ねぇ進藤…。

今更キミのことを好きだなんて言ったら……キミはどう思う?


でもね、キミと離れてからこの8年間…キミと子供のことを考えない日は一日もなかったよ?

本当は今すぐにでも捜しに行きたい。

でも倒れるかと思うぐらい綿密なスケジュールで……その暇がないんだ。

キミ達より碁を取ってしまう僕は人として最低だよね。


でも…日に日に会いたい気持ちが募ってくる。

碁は捨てれない。

でも会いたい。

そんな僕は強欲だ。


キミだって写真の一枚くらい送ってくれればいいのに!

僕があんなこと言ったから…遠慮してるのかな?


『僕は産むだけだ。育てないし、僕が母親だっていう事実は周りにもその子にも隠してもらうからな』

『子供なんて産むんじゃなかった』


何でこんなこと口走ったんだろ…。

キミがあまりにも強引でしつこかったから?

キミに好かれて嬉しかったくせに…僕はそれから逃げようとした。

僕らって昔からそうだよね。

追えば逃げられて、逃げては追われる。


恋愛も碁も一緒だ…―



でももし会えたら……今度こそ正直に言うよ。

好きだって。

だから…僕は結婚しない。


キミに再会出来る日を夢見て…ずっと待ってるからね…――













でも……運命って不思議。


転機は急に訪れる。



それを導いてくれたのは――僕らの子供だ。















「…ありません」

「ありがとうございました」

「ありがとうございました」


1月上旬。

十段戦・三次予選。

僕は今日も順調に白星を掴んだ。

続けて検討を始めようかと思った時…


「「塔矢っ!!」」


と和谷君と奈瀬さんに部屋から連れ出されたんだ。


「下のロビーにね、塔矢を尋ねて女の子が来てるのよ!」

と奈瀬さん。

「名前さ…進藤千明って言うらしいぜ」

と和谷君。


聞いたことのない名前。

でもその名字…

その名前…

誰が来てるのかなんてすぐに分かった。


でも……産むだけ産んで母親になることを一度は拒否した僕。

一体どんな顔して会えばいいんだ…?

何て声をかければいいんだ…?


混乱して突っ立ってしまった僕の背中を押して、二人がエレベーターに僕を乗せる。

1階に着いた後、すぐに視界に入ってきた…間違うはずもない僕の娘の姿。


…進藤の姿はない…


一体どうやってここまで来たんだ…?

まさか隣りにいる友達と二人だけで…?

僕を尋ねて…?

僕に会う為に…?

こんな僕を…母親だって認めてくれるの…?



「お母さん…?」



そう言われた瞬間に―――僕は娘を抱き締めた―。


「…ごめんね…会いに行けなくて…」


思いっきり涙を溜めて首を横に振ってくれた。


「お母さん…会いたかった…」






これが僕と娘の再会のシーン。

後に囲碁界中の話のネタにされる…ね。
















―END―


















以上、離別編でした〜。
8年間離れてみたヒカルとアキラ。
ヒカルの気持ちは変わらず、アキラの気持ちは変わった…というより気づいたようです。
後半は母を訪ねて三千里になりました(笑)たぶん…三千里もありませんが。
そして小2でここまでの行動力がある子が果たしているのか??
…と疑問になりましたが、お母さんに会いたいというパワーはスゴいってことで。

今回やけに視点が変わりました。
ちなみに奈瀬さん。既婚です。もちろんお相手は伊角君です(笑)

はい、では離別編の次は再会編に行ってみましょう!
アキラと千明の再会。
そしてヒカルとアキラの再会。
色んな再会があります。
まずはアキラ視点からどうぞ〜。









TIME LIMIT〜再会編〜