●LARGE FAMILY W●





1・2・3人目あたりは子供がとにかく可愛くて、嬉しくて、オレもアキラも両親も大喜びだった。

4・5・6人目あたりになると、普通より多い家族にちょっと恥ずかしさを感じてきて……

7・8・9人目では「マジでまだ作るの?!」とアキラの根性にビックリしつつ、半分開き直ったり……

10人を超えるとむしろアキラの体調の方が心配になってきて……

13人ぐらいにもなると、16人まで後何人だ!ってカウントダウンを始めたりもした。

運良く4・5番目と13・14番目が双子だったりしたから、それで20年で16人という無理な計画にも少し余裕が持てた気がする。

全員が全員順調に成長してるのも喜ばしいことだ。

アイツが大好きなマリア・テレジアは同じ数だけ産んだけど、そのうち6人は成人しないまま亡くなったって聞いてる。

医学の進歩ってすごい。

でもそれより、新しい命を生み出せる女の人ってすごい。

もちろん女の人だけじゃ子供は作れないけど…。


綺麗にアキラが産み分けてくれたお陰で、オレらの子供はちょうど男8人・女8人。

今年成人式を迎える長女から始まって、まだ産まれたばかりの八男まで。

オレに似てたりアキラに似てたり、果ては混合体だったり、どっちにも似てなかったり。

性格も頭の良さもスポーツの得意不得意もバラバラで、全てにおいて十人十色。

同じ両親から産まれて、同じ環境で同じように育ててるのに、こんなに違うように成長するなんて……すげぇ不思議。

でも面白い。

育てがいがある。


ちなみに、少子化が進む時代だからもちろんオレらの子供の数が今の日本でNo.1だ。

(何かの雑誌で特集組まれてて、そう書いてあった)

18歳までの子供に支給される国からの補助金なんて、月40万超えてるから…もしかしたらそれだけでその辺のサラリーマンの月収より多いかもしれない。

ま、それ以上に養育費がかかってるけどな。

取りあえず子供達全員が学校を出るまでは、何としてでもオレもアキラもタイトルを取り続けないとヤバい計算だ。








「おーっす、進藤。今日は子連れか?珍しいな」

「和谷こそ。何で日曜に棋院にいるんだ?」

「出版部にちょっと用事。お前は?」

「コイツが院生試験受けたいらしくてな」

小4になったばかりの娘を和谷に紹介した。

「何番目の子だっけ?」

「9番目。四女のハルカ」

「パパ。私、五女だよ」

「あれ?ごめんごめん」

「もぅ!」


16人も子供がいたら当然名前なんかもう訳が分からない。

オレはしょっちゅう呼び間違えるし、名前が出てこないことも度々。

誕生日なんかカレンダーに印つけておかないと絶対に忘れてる。

でもアキラはさすが母親というか記憶力がずば抜けてるというか…オレみたいな間違いは過去一回もない。

すげぇ…

(というかオレがダメ親父なのか?いやいや、16人もいたら普通こんがらがるだろ)



「お前らの子供なら全員棋士になるのかと思ったけど、全然だったな」

「そういえばプロ目指したいって言ってきたのは…ハルカが初めてだな。一応全員打てるんだけどなぁ…。ま、あと7人下にいるからまだ何人棋士になるかわかんないけど」

「本当に7人かぁ?実は17番目がお腹にいたりするんじゃねーの?」

げらげら和谷が笑ってきた。

「はは…アキラは変に完璧主義だからな。もうこれ以上は作らないよ、絶対」


事実、16人目を産んでからはアキラはオレに避妊避妊うるさくなった。

エッチを拒まれることも多々。

それがちょっと不満だったりする。

この20年間ほぼずーっと妊娠してたわけだから、実はオレとアキラのセックス回数は年に10回にも満たなかったりする。

しかも妊娠してない時しかやらせてくれないから、かなり偏ってる。

やっとアキラが望むだけの人数になって、やっと純粋に夫婦の営みを楽しめると思ったのに……はぁ。



「じゃあハルカ、試験終わったら呼びに来いよ。一階の喫茶店にいるから」

「はーい」


ハルカを師範の白川先生にあずけた後、オレは和谷を連れて一階に移動した。

そこでここぞとばかりに不満をぶちまけてみる。


「子供が揃ったから、オレってもう用無しなのかなぁ…。最近塔矢が冷たいんだよな…」

「はは…何言ってんだよ。塔矢は完璧主義なんだろ?じゃあ何も心配いらないって」

「…何で?」

「知らないのか?マリア・テレジアは夫が死んだ後、生涯喪服を脱がなかったぐらい夫を愛してたんだぜ?きっと塔矢も同じくらいお前のこと好きだって。今はたぶん…ちょっと休みたいんだろ」

「そうなのかなぁ…」

「お前ん家って相変わらず家政婦いっぱいいるんだろ?じゃあたまには子供のこと忘れて、二人でどこかでゆっくりしてきたらどうだ?ただの男と女に戻ればさ、塔矢の態度も変わるかもしれないじゃん?」

「なら…いいんだけど」




娘の院生試験が終わって(あ、もちろん合格な)帰った後、一応アキラに二人でどこか行こ〜と提案してみた。

当然「この子のミルクはどうするんだ!」と却下されたけど。

一番下はまだ三ヶ月だもんな。

離れられないよな。

…くそっ。



「でもやっと出産が終わって落ち着いたんだろ?記念に一泊ぐらいいいじゃん」

「出産なんてもう慣れっこだ。大変でもなんでもない。でも子育てはこれからが本番だろう?」

「これからが大変だから今無理してでも二人の思い出を作るんじゃん。オレらあっての子供だろ?オレらの仲を戻すのに、少しぐらい時間割いてくれたっていいんじゃねーの?」

「今の僕らの仲のどこに問題があるんだ?」

「そういうとこ。オマエは子供子供子供のことばっかり!」

「それが普通の母親だ。だいたい今は夫婦の仲をよくしてる場合じゃないだろ!僕らは何人の親だと思ってるんだ?二人で出かけるってことは、子育てを放棄してるのと同じだ!まだ三ヶ月の子だっているのに!」

「でもっ――」


「もう!やめてよ!お父さんもお母さんも!」

長女が僕らの間に割って入ってきた。


「喧嘩するなら外でしてよね!家の中だと迷惑!皆の顔見てよ!」

「あ……ごめん」


全員がこっちを向いていた。

まだ小さい子達は今にも泣き出しそうな顔をしている。


「旅行に行くだけで仲が良くなるなら、さっさと行ってきてって感じ。ねぇ?市河さん」

「ええ…アキラ君も進藤君もたまには息抜きしてきたらどう?二、三日なら私達だけでも何とかなるし…」

「そうそ。確かにまだ三ヶ月の弟もいるからお母さんの気が抜けない気持ちも分かるけど、でも私なんかもう二十歳よ?あと19に18に16が二人でしょ?上の私達で下の子達の面倒くらい見えるから。いつまでも子供扱いしないでよね!」


長女言うことは尤もだ。

確かにオレらはまだ小さい小学生・幼稚園児、そして乳幼児の親かもしれない。

でも同時に大学生や高校生の親でもある。

しかも上の子達はかなり下の子達の世話に協力的だし、長女なんて将来の夢は保育士ときてる。

市河さんもいるし……ここは甘えさせてもらおう。

アキラもしぶしぶだが

「…じゃあ一泊だけ」

と許してくれた。



もちろん、結局泊まることになったのは、何があってもすぐに帰れる都内のホテルになった。

でも、長女が生まれて以来この20年…二人きりで出かけたことなんてなかったから、久しぶりですごく嬉しい。


「皆大丈夫かな…」

「も〜、言われただろ?子供達を信用しようぜ」

「…うん」


ただの夫婦に戻ったオレら。

アキラは相変わらず綺麗で…オレの胸を一晩中ドキドキさせてくれた。

もちろんオレの心配も無用だった。

アキラに何度も

「好きだよ…」

って言われた。

オレは奥様以上に言い返したけどな。

一晩中新婚気分に戻っていちゃいちゃしたオレら。

翌日帰って来た時には、今までじゃありえないぐらいラブラブな雰囲気を漂わせていて、家族中に安心された。





あ。

一ヶ月後、またしても妊娠が発覚したアキラに、

「もう二度とキミと一緒に寝ないから!」

とキレられたのは内緒だからな♪






―END―












以上、大家族話・パートBでした〜。
相変わらずすごい設定ですね…。なんだこれ…。
ちょっと倦怠期?な二人の話でした〜。
にしても出産を14回も経験してるアキラさんは、きっともう…いつでもどこでも何人でも余裕で産めると思う。
陣痛が始まるまで働いてると思う。
始まってもこれくらいならまだ大丈夫…とか打ってたり?(笑)
そして退院した翌日にはもう働いてたり(笑)
ある意味最強…ですね。
二人でギネスでも目指して下さい…(笑)