●LARGE FAMILY 2●
「…あれ?和谷やん」
対局も中盤に差し掛かった頃、その聞き覚えのある関西弁に振り返ると――社がいた。
「自分も進藤ん家に遊びに来たん?」
「違うって。ちょっと進藤に用があって…。社は?」
「俺は昨日からここに泊まらせてもらってんねん。この家客室が溢れかえっとうしな」
「はは…確かに」
いくら今現在10人家族と言えども、赤ちゃんはもとより幼稚園までの子供達は進藤や塔矢と一緒に眠っている。
個人部屋が与えられるのは小学校に入ってから。
つまりこの家には特に使用目的が決まっていない部屋が五万とあるんだ。
ちなみにバスルームも3つあるし、トイレも各階に2つずつ、キッチン(既に『厨房』と言った方がいいかもしれない)までも2つある。
「…にしても、泊まりに来る度に子供が増えとう気がするわ。しかも今も妊娠しとう言うし……アイツら一体何人作れば気がすむんや?」
「お母さんね、16人産みたいって言ってたよ」
「え?!ほんま?!って、それやとまだ折り返し地点やん!」
…そうなんだよ。
この出生率1.2人の時代に信じられないぜ…。
「ただいま」
そのいきなりの声にガバッとドアの方を振り返ると――塔矢がいた。
「アキラ君、お帰りなさい」
「お母さんお帰り〜」
「ママおかえり〜」
市河さんに続いて子供達が塔矢に挨拶をし、かけ寄った次女が塔矢のお腹を撫で始めた。
そんな次女に塔矢は優しく髪を撫でてあげてる―。
「和谷君、いらっしゃい」
「お…おぅ。進藤が帰って来るまでお邪魔させてもらうぜ?」
「構わないよ。ゆっくりしていって」
ここはゆっくり出来る環境じゃねぇけどな……とツッコミたい。
ちなみによく出産で太るという話を聞くが、塔矢は相変わらずスタイルがいい。
確かに昔よりは太ったかもしれないけど、ガリガリからようやく普通の体形になったって感じだ。
さすが家政婦とベビーシッターをそれぞれ複数人ずつ雇ってるだけあって、子育てで疲れてる感じも全くしないし、まず8人の子持ちには見えない。
家が広い分子供達のあのドタバタ感もあまり感じないし、同じ大家族でも環境次第(というか金次第)でこんなにも違ってくるんだな…と改めて感心する。
「なー塔矢、お前ほんまに16人も産む気なん?」
「産めるか分からないけど、一応頑張るつもりだよ」
「オレは17人でも18人でもオッケーだけどな♪」
塔矢の後ろからヒョコっと進藤が顔を出した。
「あ、お帰りヒカル」
「ただいまアキラv」
俺と社、市河さんや子供達までもいる前で、進藤が塔矢の口にキスをした―。
「ママー、カオル君がお菓子とったー」
「アンナちゃんが先に僕のとったからだもん」
「とってないもん」
「ウソつき!」
「こら!やめなさい二人とも!」
進藤のキスを解いて、直ぐさま妻から母親に戻る塔矢。
少しガッカリした進藤だったけど、進藤の方も直ぐさま父親に戻り、ケンカする子供達を止めに入った。
「8人もおったら大変やなぁ…。オレには絶対真似出来んわ」
「俺も。2人で精一杯だし…」
――その後10年間でまたしても8人産んだ塔矢。
彼女が国母ならぬ『囲碁界の母』と呼ばれることになったのは言うまでもない――
―END―
以上、大家族話でしたー。
えーと…取りあえずごめんなさい(笑)
最近一人を産むか産まないかの悩みまくるアキラばかり書いてたので……ちょっと気分転換がしたかっただけです。
ありえない話です。
このままいくとギネスに載ります(笑)
FEMALEシリーズでは2ケタ欲しい〜とヒカルが言ってましたが、アキラが見事に却下。
だけどアキラの方が欲しい〜となると、あっさりこんな展開になるみたいです…ね(痛)
全てはアキラ次第ってことでしょうか。
今度は逆に不妊に悩むアキラとかも書いてみたい…な。