●KAKE 5●


もう嫌だ。

もう限界。

もうこんな賭け碁……終わりにしてやる!!




「じゃあ打とうか」


一緒にお風呂から上がった後、僕は早速碁盤の置いてある机の前へと座った。

進藤も複雑そうな顔をしつつも…向かい合ってくる――


「…マジでオマエが勝ったら……やめるのか?」

「ああ。キミに抱かれるのはもうウンザリだ」

「……」

「お願いします」

「…お願いします」


少し言い方がキツかったかな…?

今にも泣きそうなキミの顔が……少し胸に痛む。

でもね、別にキミとのセックスは嫌いじゃないんだ。

だけど嫌いじゃないからって、これからもずっとずるずる賭け碁を続ける訳にはいかないだろう?

僕の物欲のせいで…キミのお給料が大変なことになってるってことも知ってる。

それにね、神聖な碁をこういう風に使いたくないんだ。

碁打ちとして情けなく思う。


だからね、進藤。

僕が好きなら……

僕をこれからも抱きたいのなら……

先に言うべきことを言ってくれ。



『付き合おう』って――










「……負けました」

「ありがとうございました」

「ありがとう…ございました…」

中押し勝ちした僕は、意気揚々と立ち上がった。


「これで賭け碁は終わりだな」

「……分かってるって…」

「キミも内心ホッとしてるんじゃないのか?もうこれでお金も時間も無駄遣いしなくて済むし?」

「別に無駄遣いじゃねぇよ…。オマエが喜んでくれるんだったら…」

「でも昨日、少しくらい遠慮してくれたって…って言ってただろう?」

「それは…」

「とにかくもうお終い。さっさと朝食食べて、東京に戻ろう」

「………」


隣りの部屋に用意された朝食を食べてる間も……電車で戻る間も……ずっと沈んでる彼。

別に別れを告げたわけじゃないのに。

ただ賭け碁をやめただけなのに。


僕らの新しい関係は…キミが一言言えば始まるのに…――








「送ってくれてありがとう」

「…うん、じゃあ…」

「もう帰るのか?」

「……え?」

「僕に何か言うことないのか?」

「……」


僕を自宅まで送り届けた後、直ぐさま帰ろうとする彼を引き止めてみた。

やっぱり僕って甘いな。

特に進藤には…。

いや、たぶん…進藤だから……甘いのかもしれない――



「オレは……やめたくないんだけど…」

「しつこいな。賭け碁自体にそんなに意味はないだろう?キミは僕を抱きたかったからしてたんじゃないのか?」

「そうだよ…。でもオマエはウンザリなんだよな…?オレに抱かれるの…」

「ああ。まるで僕の体が景品になったみたいで嫌だった。そんなセックス…もうウンザリだ」

「…ごめん」

「だが、別にキミとするのが嫌だと言ってるわけじゃない」

「……え?」

進藤が少し目を見開いてきた。


そんな彼の両頬に…手を添えてみる――



「キミは僕のこと…好きだっていつも言ってくれてたよね?」

「うん…」

「なら、きちんと告白してくれ」

「塔矢、それって…」

「恋人としてのキミとなら、してもいいって言ってるんだ。早く言ってくれ」

「塔矢ぁ…」

嬉しさが抑えきれないように、僕をぎゅっと強く抱き締めてきた――


「好きだよ、大好き塔矢!オレと付き合って!」

「…うん…」

僕の方も抱き締め返しながら…直ぐさま承諾した。


「…ほら、キミだって今は賭け碁が馬鹿らしく思えてきただろう…?」

「うん…。でもオレ…最初オマエにオレのこと好き?って聞いて…、別にって言われたから……オマエを抱くには賭け碁を続けるしかないって思ってた…」

「そうなんだ?でも僕はたぶん…好きじゃなくてもキミから告白されたら…いつだってOKしてたと思う」

「マジ…?」

「うん。キミは僕にとって誰よりも大切な存在だからね…」

「碁打ちとしてのオレが…?」

「うん…ごめんね」

「ううん…それってすげぇオマエらしい…――」


クスって笑っきた彼は、早速僕に恋人同士のキスをしてきた。


その後当然のように…早速僕の家で……体を合わせることになった僕ら。

昨夜と全く同じことをしてるのに、何だか全くの別物に感じるのは……やっぱり『恋人』としてるという安堵感があるから…かな。

進藤も安心したように…僕に思いっきり愛撫してくる。


相変わらず

「好きだ」

といっぱい愛を囁いてくれながら――


そうだね。

せっかく恋人同士になれたんだし…これからは

「僕も…」

と返してあげようかな…――














―END―















以上、賭け碁話でした〜★
賭け碁ネタは大好きです!!><
これこそ『体だけ』の関係の最高峰ですよね!(笑)
でもよくよく考えたら…体を賭けるのってお金を賭けるより最低ですよね(^ ^;)
ヒカアキネタ的にはオイシイのでやりまくり〜の、書きまくり〜、でしたが。あー楽しかったー(笑)

にしてもうちのアキラ嬢は、行洋パパが知ったら怒るどころか泣き出すぐらい簡単にヒカルと体を合わせちゃう傾向があるみたい…です。
好きでもないのにね。
相手はただのライバルなのにね。
ただのライバルに過ぎないけど、アキラにとっては掛け替えのないたった一人のライバルだから……失うわけにはいかないんです。
だから強請られたら断れないんです。
要はヒカルに甘々人間ってことです(笑)
アキラの世界って本当に碁とヒカルしかないんだなぁ…(^ ^;)