●INTERVIEW 3●
遊びがてらに始めた塔矢六段へのインタビューは、思わぬ収穫があった。
塔矢がこんなに真面目に答えてくれるなんて思わなかったし。
でも…でも…
初恋は15歳で、今でもその人のことが好き?
その回答はオレにとって衝撃だった。
誰だ…?
誰なんだよ…!
「…同い年の方なんですか?」
「それも秘密です」
ちっ
何とかして聞き出さないと―
「付き合って…らっしゃるんですか…?」
「いいえ、単なる僕の片思いです」
よしっ
ひとまずセーフだ。
付き合ってはないらしい。
「15の時からということは、もう4年も思い続けてる訳ですよね?告白はなさらないんですか?」
普通、雑誌の記者はこんなに根掘り葉掘り聞いたりしない。
芸能人ならともかく―。
でもオレは記者じゃない。
一友達として…一塔矢を好きなものてして――聞きまくってやる!
「…いつかはしようと思っています。でも今はまだ囲碁の方が大事ですのでそんなことに時間を割いている暇はありません」
ふんっ
本当にご丁寧に答えてくれちゃって。
囲碁の方が大事?
今は?
ずっと碁一筋のくせにっ!
「でももうすぐ塔矢六段も二十歳ですよねぇ?早く告白しないと相手も彼氏作ったり結婚したりしちゃうんじゃないですかぁ?」
嫌味っぽく言ってみた。
いや、待て。
するな!
告白なんてするな!
塔矢に告られて断る女なんているか?!
囲碁界のプリンスだぞ?!
「…そうですね」
え…?
それだけ…?
「…その方と結婚を考えたことはないんですか?」
「……出来るならしたい…いや、あ、いえ、したくありません!」
??
「つまり…塔矢六段に結婚願望はないと…?」
「いえ、結婚はいつかはすると思います。30・40過ぎても一人なのは周りが許さないと思いますし」
やけに早口で答えた。
塔矢の言ってる意味が分からない。
「つまり…結婚は仕方なくするけど、初恋の人とはしない、と?」
「…もうノーコメントでお願いします」
オレがポカンとしてると、塔矢が立ち上がった。
「もういいだろ!次はキミの番だ!」
「へ?」
見えないマイクを取り上げて、塔矢もゴホンと咳払いした。
「では進藤四段、よろしくお願いします」
「…はい」
な、何を聞いてくる気だ?
「初恋はいつですか?」
「え?あー…小学校低学年の頃だったと思います。クラスの女の子に―」
「そうですか…」
何か塔矢の顔が微妙に怖いんだけど…。
口は笑ってるのに目が笑ってねぇ!
「今付き合ってる方はいらっしゃるんですか?」
「今はいません」
「進藤プロというと女性関係が少々派手〜な噂があるんですが、今まで付き合った方は何人ぐらい?」
うわっ、何かめっちゃ言葉にトゲがあるんだけど!
つーか、何人だ?!
覚えてねぇよ!
「5人ぐらい…?」
嘘つけ!という視線が痛い…。
はい、嘘です…。
「始めて付き合ったのは何歳の時ですか?」
「15」
「お相手は?」
「友達に紹介してもらった子です」
「年上?」
「はい、一つ上…」
「ということは高校生だったんですか?」
「はい…?」
何かインタビューというより、尋問されてる気分だな…。
「最近まで付き合ってた方と別れた理由は?」
「あー…」
何だったっけ?
何かある日突然別れよって言われたんだけど。
理由なんて聞かなかったし。
「ノーコメントで!」
「ふぅん…」
ふぅんって何?!
「告白はする方?される方?」
「される方です。オレの方からしたことないし」
「……」
お、ちょっと塔矢の顔の厳しさが戻ったか?
「…今は好きな方いないんですか?」
「えっと…、います」
「………誰?」
「秘密♪」
さっき塔矢が使った答えだ。
オマエが言わないのに、オレが言うわけねーじゃん!
「告白…しないんですか?」
「するよ、いつか」
オマエに――
「…結婚は何歳ぐらいでしたいですか?」
「んー…まぁ20後半…30代ぐらい?自分に合った人と巡り会え次第です」
「自分に合った人とはどういう…?」
「ノーコメで」
「……」
この回答は実際にいつもオレが記者に使ってるいい回しだ。
自分に合った人…。
よく分からねぇけど、そう答えるのが無難だし。
「好みのタイプは…?」
「可愛くて〜美人で〜わがままで〜負けず嫌いで〜頭良くて〜キッツイ性格の子v」
「……」
塔矢が一体どういう趣味してるんだ?って顔してる。
全部オマエのことなんだけど…。
まぁ、まず自覚してないよな…。
「…最後に一つ」
「どうぞ?」
「友達だと思ってた子から告白されたら…どうしますか?」
え…?
CONTINUE!