●if side:怜次H●〜怜次視点〜
「Wデート?」
「うん!そう!中学最後の思い出に、楓達とディズニー行こ♪」
中学の卒業式まであと数日となった今週の日曜日に、友達カップル
しかも制服で。
「まぁ…、いいけど(次の日対局入ってるけどな)」
当日、舞浜駅で待ち合わせてパークに向かった。
「緒方君、今日はよろしくね」
「よろしく」
彩の親友の後藤楓に、オープンまでの待ち時間に改めて挨拶される。
後藤さんの彼氏、細川塁斗にも「よろしく」と言われる。
「彩聞いて。昨日宮野さんに初めて勝ったんだよ」
「よかったねー!」
何に勝ったのか。
それはもちろん対局だろう。
何故ならこの後藤さんは、将棋の女流棋士だからだ。
(中学2年でデビューしたばかりだから、まだ2級の下っ端らしい
そういう彼氏の細川君も、将棋の奨励会員だ。
俺らが囲碁カップルなら、この二人は将棋カップルと言っていいだ
「細川君、今日日曜だけど奨励会休み?」
「うん。4月まで休み。先月三段に上がったから」
「へぇ…」
将棋のプロ棋士になるには、その三段リーグを抜けなければならない
40人を越えるリーグ戦で、上位2名が昇段という囲碁以上に厳し
でも15歳で三段はかなり有能だと思う。
「そういえば春休みに、タイトル戦の記録するかもしれないんだ。
「何戦で?」
「棋王戦」
「ふーん…」
将棋には8つタイトルがあって、棋王もその一つだ。
囲碁では碁聖戦や女流本因坊戦と同じ主催者。
(そういえば明日の俺の対局は碁聖戦だな…)
「緒方君は記録取ったことある?」
「無いな。囲碁は低段の棋士が担当してることが多いけど、俺が低
「おおぅ…、さすが12歳七段だな…」
9時になり、ランドがオープンする。
今のディズニーランドは完全にアプリ攻略戦だ。
アプリを制する者がディズニーを制すると言っても過言じゃない。
有名アトラクション一つ乗るにもパスを取る必要がある。
「うう…、久々すぎて難しい」
彩が携帯で格闘していた。
もちろん並んでもいいが、さすがに一つ乗るのに2時間とかは並び
「彩、課金すれば?」
「それは負けな気がする」
まぁ…、彩の好きにすればいいけど。
とりあえずの予約を済ませた後、ようやくパーク入り口から奥へと
朝9時に入場してアトラクション2つ乗って、ランチ食べて、パレ
もちろんその合間合間で買い物したり買食いしたり。
日曜なのに俺らの他にも制服姿の学生は大勢いて、皆考えることは
「ちょっと楓とお手洗い行ってくるねー」
「ああ」
女2人で化粧室に行ってしまったので、男2人で待つことにする。
「…あのさ」
細川君が神妙な面持ちで話しかけて来た。
「実はオレ、楓と別れようかと思ってて…」
「……何で?」
「同門の三段の先輩に言われたんだよな…。女なんかに現抜かしてたら、三段リーグは抜けれないぞって…」
「ふーん…。で?その先輩は四段に上がったの?」
「いや、まだ三段だけど…」
プッ…、と、笑っちゃいけないんだろうけど、笑ってしまった。
「俺は全く反対の考えだけど」
「え?」
「俺は逆に彩がいないと頑張れない」
「……」
「彩が傍でいつも応援してくれるから、このまま棋士を続けていこ
「緒方君…」
「細川君も証明してやれば?彼女がいたから昇段出来たんだって」
「そ、そうだよな……、うん。頑張るよオレ…、4月から」
「4月からじゃ遅いと思うけど」
「え?」
「今から頑張れよ。一つでも多く研究会に参加して、同じ三段の奴
「うん…、そうだよな!」
緒方君に言われたら何かやる気が出てきた――と細川君は意気込ん
そして彩達が帰って来ると、後藤さんに
「オレ頑張るから!応援してて」
と宣言していた。
何故か後藤さんは泣いていた。
「楓ね…、細川君にフラレるかもって心配してたんだよ」
と彩がこっそり教えてくれる。
「最近よそよそしかったんだって…、三段昇段決めたあたりから。
「…さぁな。ま、頑張るってのなら、俺らも応援してやろうぜ」
「うん、そうだね」
最後に一緒に花火を見て、俺達は現地解散をした。
ちなみに細川君が四段昇段を決めるのは3年後の話。
その時にも後藤さんが隣にいたのは言うまでもない話だ――
以上、将棋カップルとのWデート話でした〜。
いや〜、囲碁より将棋の方が詳しい私なのでスラスラ書けるね!(笑)
15歳三段も有能ですが、18歳四段もめちゃめちゃ有能ですよね!将来タイトル戦に絡むかもよ★