if side:怜次D〜彩視点〜





12
歳七段というとんでもない最年少記録を持つ私の恋人・緒方怜次。

更にはこのルックスに頭脳、そして落ち着いた性格も、女の子達に人気の的だった。

 


「すごい数のチョコ…」


毎年バレンタインになると、男性棋士にはたくさんのチョコがファンから棋院に送られてくる。

もちろん怜次にも紙袋いっぱいどころか段ボールにいっぱいの量が今年も送られて来ていて、それは緒方家に宅配便で転送される。


「一つ食べていい?」

ベッドに寝転がって詰め碁集を読んでる彼に聞いてみた。

「全部いいよ」

「それはさすがに虫歯になりそう…」

手作りではない、既製品の有名高級チョコを一粒いただくことにする。


「美味し〜さすが一粒300円超えだわv」

「よかったな」


全く興味なさそうな怜次。

バレンタインに興味がないんだろうか…。

そういう私も一応怜次の為にチョコを買ってきた。

この段ボールいっぱいのチョコの山を見てしまい、渡すタイミングを完全に逃したけど……


「…怜次も食べる?」

「いらない。チョコそんなに好きじゃないし」

「…そうなんだ」


う…、これはますます渡し辛い。

去年ももちろん怜次にチョコをあげていた私。

義理だよ〜って気軽にあげれてたあの頃が懐かしい。

本命チョコって難しい……


このまま持って帰ってももちろんいいけど…、

「じゃあ私からのチョコもいらない…?」

と一応確認する。

するとガバっと起きてきた。


「…いるに決まってるだろ」

と――


「え、でも、チョコそんなに好きじゃないんでしょ?無理しなくてもいいよ…?」

「チョコは確かに好きじゃないけど」


俺は彩が好きだから。

彩がくれるものなら何だって嬉しい。


――と、頬を少し赤めた彼に言われる。

当然私の顔ももう真っ赤っ赤だ。


「じゃ、じゃあどうぞ…」

カバンから取り出したチョコの箱をドキドキドキと差し出す。

「ありがとう…、嬉しいよ」

「ホント?よかった」

「食べてもいい?」

「いいよ。でも無理しなくてもいいよ…」


包装を解いた彼が早速一粒口にする。

その様子をじっと見つめてみた。


「…甘」

「ほら〜無理しなくてもいいのに。来年からはお煎餅とかにしようか?」

「いや、大丈夫。でも、他のものもほしいかな…」

「何がほしいの?今年もあげようか?」


そう言うと、怜次の顔が近付いて来て――キスされた――


「……ん…、…ん……」


お互いチョコを食べた後だから、ものすごく甘い味のキスだった。

啄まれて…、そして彼は私の口内に舌をも侵入させてきた。

私の舌を絡め取られる…、すごく大人のキスだった……


「んん…、ん…」


あまりに官能的過ぎる初めてのキスに…、自分の体がちょっと火照るのが分かった。

その気になる…って、たぶんこういうことなんだ…と理解する。

キスだけじゃなくて……もっともっと触ってほしくなる。

怜次と一つになりたくなる――

 


「――…は…ぁ…」


やがて唇が離れると、怜次は私の体をぎゅっと…抱き締めてきた

密着し過ぎてて…彼の表情は見えない。

でも、たぶんだけど…彼もきっと私と同じ気持ちなんだと思う。

私を抱きたいって…きっと思ってくれてる。

でも、きっとまだ我慢しなくちゃって…きっと思ってる……


「…怜次」

「…何?」

「…私達って、いつになったら先に進むの…?」

「…あと1年くらい?」

「…そんな先なの?」

「…本当はもっと先がいいけど、そのくらいが俺の限界だと思う……たぶん」

「…そう。じゃあ、来年のバレンタインにしちゃう?」

「……しちゃう」


彼らしくない反復の台詞に、思わず笑ってしまった。

「いいよ。じゃあ…、約束ね?」

「うん…」


もう一度、私達はキスをした。

約束のキスだ。

来年のバレンタインが待ち遠しい……

 

 

 


END



 

 

以上、付き合い始めてから7ヶ月後、バレンタインの彩と怜次でした〜。
まだ我慢で来てる怜次君です。でももってあと1年だそうですw
てことで、中3のバレンタインに二人は一線を越えることに決定したそうですよv