if side:怜次C〜彩視点〜





「送ってく」

「うん…、ありがとう」



怜次と練習と称してたくさんキスしてしまった私。

あまりに気持ちよくて、まだ頭がボーっとする。

顔もまだ赤いまま玄関のある2階へ降りて行った。

 


「帰るのか」

緒方先生がリビングから出てきた。


「はい、お邪魔しました」

ペコリと挨拶して、私は靴を履き出した。

怜次も履いて、「ちょっと彩送ってくる」と先生に告げた。

メガネをクイッと上げる先生。


「ほぅ…、お前らついにくっついたのか」

「「!!!」」


お互い途端に過剰に反応する私達を見て、「分かり易すぎだ」と先生が苦笑する。


「怜次、一線はまだ越えるなよ。進藤に睨まれるぞ」

「…分かってるし」

「だそうだ、彩君。怜次に襲われそうになったら逃げろよ」

「え…///


襲われるということは、つまり…キスの先を怜次に求められるということ。

ちょっとだけ想像して、あまりのエロさに私は両手で顔を覆った


(きゃーーー///

(逃げるなんてそんな勿体ないこと出来ないーーー!!)

(むしろ早く襲って…!!)


そんな様子を見た緒方先生が

「大変だな…、お前も」

と息子の肩に手を置いたことは知る由もなかった――

 

 

 

 

 



家まで私を送り届けてくれた怜次。


「送ってくれてありがとう。また月曜に学校でね」

「ああ」


手を振って、彼とお別れをする。

家に入ると、和室の方から話し声が聞こえた。

お父さんとお姉ちゃんと京田さんだ。

今日は進藤門下の研究会の日だったらしい。

やがて休憩時間になったのか、お姉ちゃんと京田さんがダイニングの方にやってきた。


「彩、お帰り」

とお姉ちゃん。

「彩ちゃんお帰り」

と京田さん。



「ただいまー…」


お姉ちゃんと京田さんが二人してキッチンに立ち、コーヒーを淹れ始めた。


「京田さん、これお願い出来ますか?」

「いいよ」


狭いキッチンだから、何だか密着してて…、イチャイチャしてるように見える。

というかちょっとしたことで手が肩に触れたり、背中に触れたりしてる二人。


(絶対コレ一線越えてるでしょ…)


現在高校1年生のお姉ちゃんと、大学1年生の歳にあたる京田さん

その歳で既に3ヶ月も付き合ってるんだから、何もない方がおかしいのかもしれないけど……



「彩、お帰り」


お父さんもダイニングの方にやってきた。

途端にお姉ちゃんと京田さんは一歩離れていた。


「どこ遊びに行ってたんだ?」

お父さんが聞いてくる。

「ボーリング。アベレージ200超えたんだよ」

スゴいでしょ、と言うと、

「ふーん。怜次君のスコアは?」

と……

 


え?

 


あれ…?


私、怜次と出かけるなんて一言も言ってないのに…なんで……

 


「…今日棋院で緒方先生と会ってさ、二人で出かけてるって聞いたんだ」

「そ、そうなんだ…」

「昼からはずっと怜次君の部屋にいたらしいな」

「今度試したい戦型があって…。怜次に見て貰ってたんだ…」

「ふーん…、それで?怜次君の感想は?その戦型でいけるって?」

「それは……」


もちろん感想なんて貰ってない私は汗がダラダラ出てくる。

い、言えない…、結局途中からキスし出して、打つのを中止しただなんて……


「彩、まさか怜次君と――」

「え??!!」


声が裏返る。

どどどどうしよう……


もう正直に付き合い出したって言っちゃうべき?!

それとも誤魔化し続けるべき?!

どっちが正解なの?!

 


「彩、お父さんには正直に話した方がいいよ」


お姉ちゃんがキッチンから助言してくれる。

お父さんなら分かってくれるから――と。


(確かに何だかんだでお姉ちゃんと京田さんのことも許してるもんな…一応)



「……お父さん。私…、怜次と付き合い始めた…」

「……そっか」


やっぱりそうなんだ…、と力のない父の返事。


「お父さん…、反対する?」

「…反対なんてしたら緒方先生に話が違うって怒られるし…」

「え?」


まだ怜次がお腹の中にいた時、お父さんと緒方先生は約束したらしい。

お腹の子が男の子だったら、彩君をいただくぞって。


ええええーーーー???!!!

 


「でも何か悔しいから、怜次君に今度会ったら絶対一言言ってやろ

「な、なに言う気よ…、変なこと言うのならやめてよね…」

「んなの、決まってんじゃん」

 


『彩を大事にしないと許さないからな!!』

 

 


END



 

 

以上、前回のキスの続きでした〜。
あと
『彩を泣かせたら許さないからな!』
『緒方先生みたく女っタラシになるようなら速攻別れて貰うからな!』
と一言どころか三言は後日怜次君はヒカルから言われたそうですよw

彩の前で堂々とイチャつく京佐為にビビるわ…。いくらこの彩が京田さんに興味がないとはいえ(笑)