●if side:怜次A●〜彩視点〜
小さい時からずっと一緒だった緒方怜次。
5つも年上の院生1位に、圧倒的な強さで完勝したこの幼なじみに
私は胸の鼓動が速くなるのを感じずにはいられなかったのだった――
「好きです。オレと付き合ってくれませんか?」
この日、私は学校でも1・2を争うイケメンなサッカー部のキャプ
もちろん即お断りする。
「私、好きな人いるから…」と。
でも私が告白されたことは瞬く間に校内に広がっていて…、きっ
(どう思ったんだろ…)
(ちょっとは動揺してくれてるのかな?)
お姉ちゃんがこの春から京田さんと付き合い始めた。
ずっと苦しそうだった二人を見ていたから、私も自分のことのよう
でも、今度はイチャイチャする二人を見て…、とてつもなく羨ま
(私も彼氏がほしいな…)
(怜次と付き合いたいな…)
その日の帰り、私は怜次と一緒に帰ることにした。
彼の気持ちを確かめる為に。
そして、あわよくば彼を手に入れる為に――
『俺も大好きだよ』
恋人になったばかりの怜次からこんなLINEが送られて来て、私
そして急に恥ずかしくなって、一気に顔が真っ赤になる。
はわわわわ……
恋人同士になったからって、すぐに何かが変わるなんて思ってもなかっ
私と怜次だし。
でも、こんな風に彼から愛を囁いて貰えるようになるのだと、この
恋人同士って……すごい……
次の土曜日、私達は約束通りボーリングデートに出かけた。
ボーリングだけじゃなく、クレーンゲームやガチャガチャ、ビリヤ
その後ちょっと遅いランチに駅ナカのレストランに入る。
「楽しかったねー。昼から何する?」
「んー…、ちょっと休憩する」
「そう?」
目の前に座る怜次は確かに少し疲れているように見えた。
それもそのはず。
木曜日に大阪で対局のあった彼は昨日帰って来て、昼から授業受け
(誘う日間違えたかな…)
(映画とかにすればよかったかな…、そしたら眠れただろうに)
「じゃ、昼からは怜次の部屋でゆっくりしよ♪」
「……はぁ」
溜め息を吐かれてしまった。
怜次はよほど私を部屋に入れたくないらしい。
(エッチな本でも隠してるのかな…)
既に175cmはある怜次。
父親の緒方先生は180cmって言ってたし、母親の怜菜さんも170
中学に入って声も変わって、低くなった。
確実に大人に近付いていっている彼。
棋力も相変わらず強くて、リーグ入りしてる彼は既に七段だ。
(私なんて二次予選止まりなのに…)
上には上がいるプロの世界。
改めて両親やお姉ちゃん、怜次の強さを痛感する。
このままじゃもっともっと置いていかれる。
「来週の女流棋聖戦で試したい戦型があるの…。ちょっと怜次に
だから一局打たない?
そう誘うと、彼は少し考えて
「いいよ」
とOKしてくれたのだった。
(やった…!怜次の部屋に久々に行ける♪)
緒方家は海王中の近くにある。
徒歩10分くらい。
「ただいま」
家の鍵を持っている怜次は当然チャイムなんて鳴らさない。
二人して靴を脱いでいると、
「帰ったのか」
とリビングから緒方先生が。
「彩君、いらっしゃい。ボーリングは楽しかったか?」
「えへへ〜アベレージ200超えました!」
「ほぉ…、そいつは凄いな」
(怜次、私とボーリングに行くことを親に話してたんだ…)
ちょっとだけ驚いた。
親に何でもかんでも話す、そういうタイプには見えなかったからだ
ちなみに私は親には「友達と遊んで来る」としか伝えてない。
怜次と付き合い始めたことも、もちろん秘密にしていた。
「彩とちょっと打つから。邪魔しないで」
父親にそう冷たく告げた怜次が階段を上がっていく。
私も「緒方先生、また後でね」と挨拶して、彼の後に続いた。
怜次の部屋は3階。
何年ぶりになるのかもう覚えてないくらい久しぶりに足を踏み入れ
ドキドキドキと胸が高鳴る。
(確かに全然汚れてないな…)
きちんとし過ぎて生活感がないぐらいだった。
部屋の真ん中にある碁盤。
怜次は直ぐ様その片側に座った。
私も反対側に座る。
「どっちがいい?」
「先手」
そう言うと、黒の碁笥をくれた。
「「お願いします」」
怜次と打つのは本当に久しぶりだ。
小学生の頃、毎日気軽に打ってたのが嘘のようだ。
院生の時はまだたまに打ってたけど、プロになってからはほぼ無い
中学に上がってからは皆無に等しかった。
(大きな手…)
私の手とは全然違う。
ゴツゴツしていて…、硬そう。
でも綺麗な指で、思わず見惚れてしまう。
(触ってみたいなぁ…)
私達は交際を始めた恋人同士だ。
なら、ちょっとぐらい触っても許されるんじゃないだろうか……
碁石を打つその指に、私はそっと手を伸ばした――
「…何?ここに打つなって?」
「違う。ちょっとだけ…、触らせて」
「…え?」
手の甲をなぞる。
やっぱり、すごくゴツゴツしている。
骨だらけだ。
しばらくさわさわ触っていると、耐えられなくなったんであろう彼
「彩、打つ気ないなら帰れよ」
「そんな言い方しなくてもいいでしょ?ちょっとくらい触らせてく
「駄目だ」
「何で?私達、付き合ってるんでしょ?」
「じゃあ、彩も触らせてくれるのかよ?」
「いいよ」
「…絶対意味分かってないくせに…」
ムッとなる。
「分かってるよ!子供じゃないんだから!」
怜次の傍に移動する。
でもって徐々に顔を近付けていく……
「…怜次…、……ん…――」
唇が重なる。
キスなんてもちろんしたことないから、合ってるのか分からないけ
怜次は固まっている……目を見開いたまま。
(何か怒ってる…?)
「――……は…ぁ」
やがて息苦しくなって、私は口を離した。
私達の間で微妙な空気が流れる。
やっぱりちょっと…、強引過ぎたかな。
でも私は男女交際ってこういうものだと思ってる。
キスしたり…、その先をしたり。
それこそがカレカノというものだろう。
「……彩」
「な、なに?やっぱ嫌だった…?」
「……もう一回してもいい?」
―――え?
怜次の顔が近付いて来て……唇を塞がれた。
「――……ん…」
今度は目を閉じてる彼。
優しく啄まれて…、うっとりするようなキスをされる。
私がしたやつとは全然違う。
きっとこれこそが本物のキスというやつなんだろう……
「……は……」
唇が離れると、彼は頬に続けてキスしてきた。
「彩…、好きだ…」
と耳元で囁かれる。
カーッと顔が赤くなった。
「れ、怜次…、キス上手だねぇ…」
「まぁ…、彩よりはな」
「私もそのうち上手くなるかなぁ…?」
「じゃ…、一緒に練習しようか」
もう一度唇を合わせ始めた。
「…ね、怜次。キスの理想の身長差って15センチなんだって。
「ふーん…、じゃあ立ってしてみる?」
今度は立ち上がって、再びキスし始める。
(確かにいい角度…)
その後30分、私達は練習し続けたのでした……
―END―
以上、ifの彩視点でした〜。
佐為と京田さんが付き合い始めたことを自分のことのように嬉しかった〜とか言ってるぐらいだから、この彩は京田さんに丸っきり興味がないことが分かりますね(笑)
怜次は中1の冬から名人リーグ入りしている七段です。ちなみに佐為もそうです。有望すぎる二人ですw
最後は彩にキスされて、すっかりたかが外れてしまった怜次君(13)です。
彩も怜次のキスが上手すぎて、すっかり虜になってしまってたり(笑)
もちろんベッドのすぐ横でキスしてるので、必死に理性と戦っている怜次なのでした〜w
ENDになってますが、たぶん続くよ!