if side:怜次A





プロになって2年半。

最近周りが騒がしい。

 


「彩ちゃんてアイドル並みに可愛いよなー」

「さすが進藤本因坊と塔矢名人の遺伝子だよなー」


「聞いた?進藤さんサッカー部のキャプテンに告白されたって」

「これで今年に入って何人目?進藤さん可愛いもんねー」



棋院でも学校でも外野が煩くて、俺はイライラしていた。

彩が可愛いことなんて何年も前から分かりきってることだ。

それなのにどうして今頃になって皆騒ぐんだろう。

 

 


「怜次!一緒に帰ろ♪」


帰りのホームルームが終わり、カバンを手に取ると彩が近付いて来た。

一緒に駅まで歩きながら、横目で彼女の姿を盗み見る。

 


……確かに可愛い……

 


2になって身長が160cmを超えた彩。

確実に少女から大人の女性へと変化していってるのだ。

ただ可愛いだけじゃなくて、綺麗になってきたのだ。

だから周りも気付き始めたんだろう…。

 


……ものすごくムカつくけど……

 

「…ねぇ怜次」

「何?」

「サッカー部の中澤部長に告白されちゃった…」

「……へぇ」

「どう返事したらいいと思う?」

「……」


これは……試されてるんだろうか。

俺の言葉を期待してるんだろうか。

それとも…単に応援してほしいのか…。


(するわけないけどな)



「とりあえず……断れば?」

「どう言って?」

「適当に」

「適当って?」

「好きな人がいるとでも言えば?」

「……好きな人なんて、……いるけど」

「……」



彩が俺の制服を引っ張ってくる。

俺の目をじっと見つめてくる。






(……あーあ)

 


終わりだ。


今日で終わり。

ただの幼なじみとはおさらばだ。


居心地よかったんだけどなぁ……

 


「…じゃ、俺と付き合ってるとでも言えば?」


途端に嬉しそうな顔をしてくる。


「いいの?」

「いいよ」

「私と付き合ってくれるの?」

「…いいよ」


ぎゅっと、俺の腕に手を絡めてくる彼女。

頭を凭れかけてくる。


「怜次…、大好き」

「……俺も」


好きだよ……ずっと前から。

恐らく、彩が俺を好きになる前から…、ずっとずっと好きだ。


でも、出来ることなら付き合うのはもう少し先がよかった。

交際するとどうなるのかは目に見えてるからだ。

きっと…、抑えが効かなくなる……

 


「ね、今から怜次の部屋、遊びに行ってもいい?」

「…絶対ダメ」

「えー何でよー付き合ってくれるんでしょ?」

「付き合ってるから、だよ」

「えー?」


いつまで俺らは清い関係でいられるんだろう。

出来ることなら…、中学の間はこのままでいたい。


「じゃ、私の部屋に来る?」


ズルっとなる。

「何でそうなるんだよ…」

「だって怜次、部屋が汚れてるから私を招きたくないのかなって」

「汚れてないし!」

「じゃあいいじゃん!」

「絶対ダメ!」

「怜次のいじわる!今度緒方先生に会ったら言い付けてやるんだからー!」

 


駅前で、喧嘩するように別れた俺ら。

家に着いた頃、LINEの通知音が鳴る。

彩からだった。


『じゃあデートしよ。カラオケ行きたい』


カラオケかぁ…、個室だな。


『久々にボーリングでもいいよ』


うん、こっちだな。


俺は『それならいいよ』と返事を返す。


『ありがとう怜次!大好き!』

「……」


昔から大好きを大安売りしてくる彩。

でもその度に嬉しい気持ちになる。


『俺も大好きだよ』

と返事をしてみた。

恋人になった俺にだけに許される特権だ。


彩はきっと固まったことだろう。

 

 

 


END



 

以上、ifの彩と精菜(怜次)サイド話の続きでした〜。
2になってる二人です。
もうお互いがお互いを好きだって、とっくに気づいてる感じですかね。

彩がサッカー部のキャプテンに告白されたってのは本編と同じです。(修学旅行話参照で!)
彩は可愛いので昔から告白されまくりです。もちろん即断ってますが。
ちなみに怜次もされまくりだったりするのですよ。もちろん断ってますが。彩LOVEだからね。

怜次はもうちょっと幼馴染の関係を続けたかったみたいですがね。(中2は色々悩めるお年頃なのですよ…w)
次は彩視点ですかね!