●if side:怜次A●
「彩ちゃんてアイドル並みに可愛いよなー」
「さすが進藤本因坊と塔矢名人の遺伝子だよなー」
「聞いた?進藤さんサッカー部のキャプテンに告白されたって」
「これで今年に入って何人目?進藤さん可愛いもんねー」
棋院でも学校でも外野が煩くて、俺はイライラしていた。
彩が可愛いことなんて何年も前から分かりきってることだ。
それなのにどうして今頃になって皆騒ぐんだろう。
「怜次!一緒に帰ろ♪」
帰りのホームルームが終わり、カバンを手に取ると彩が近付いて来
一緒に駅まで歩きながら、横目で彼女の姿を盗み見る。
……確かに可愛い……
中2になって身長が160cmを超えた彩。
確実に少女から大人の女性へと変化していってるのだ。
ただ可愛いだけじゃなくて、綺麗になってきたのだ。
だから周りも気付き始めたんだろう…。
……ものすごくムカつくけど……
「…ねぇ怜次」
「何?」
「サッカー部の中澤部長に告白されちゃった…」
「……へぇ」
「どう返事したらいいと思う?」
「……」
これは……試されてるんだろうか。
俺の言葉を期待してるんだろうか。
それとも…単に応援してほしいのか…。
(するわけないけどな)
「とりあえず……断れば?」
「どう言って?」
「適当に」
「適当って?」
「好きな人がいるとでも言えば?」
「……好きな人なんて、……いるけど」
「……」
彩が俺の制服を引っ張ってくる。
俺の目をじっと見つめてくる。
(……あーあ)
終わりだ。
今日で終わり。
ただの幼なじみとはおさらばだ。
居心地よかったんだけどなぁ……
「…じゃ、俺と付き合ってるとでも言えば?」
途端に嬉しそうな顔をしてくる。
「いいの?」
「いいよ」
「私と付き合ってくれるの?」
「…いいよ」
ぎゅっと、俺の腕に手を絡めてくる彼女。
頭を凭れかけてくる。
「怜次…、大好き」
「……俺も」
好きだよ……ずっと前から。
恐らく、彩が俺を好きになる前から…、ずっとずっと好きだ。
でも、出来ることなら付き合うのはもう少し先がよかった。
交際するとどうなるのかは目に見えてるからだ。
きっと…、抑えが効かなくなる……
「ね、今から怜次の部屋、遊びに行ってもいい?」
「…絶対ダメ」
「えー何でよー付き合ってくれるんでしょ?」
「付き合ってるから、だよ」
「えー?」
いつまで俺らは清い関係でいられるんだろう。
出来ることなら…、中学の間はこのままでいたい。
「じゃ、私の部屋に来る?」
ズルっとなる。
「何でそうなるんだよ…」
「だって怜次、部屋が汚れてるから私を招きたくないのかなって」
「汚れてないし!」
「じゃあいいじゃん!」
「絶対ダメ!」
「怜次のいじわる!今度緒方先生に会ったら言い付けてやるんだか
駅前で、喧嘩するように別れた俺ら。
家に着いた頃、LINEの通知音が鳴る。
彩からだった。
『じゃあデートしよ。カラオケ行きたい』
カラオケかぁ…、個室だな。
『久々にボーリングでもいいよ』
うん、こっちだな。
俺は『それならいいよ』と返事を返す。
『ありがとう怜次!大好き!』
「……」
昔から大好きを大安売りしてくる彩。
でもその度に嬉しい気持ちになる。
『俺も大好きだよ』
と返事をしてみた。
恋人になった俺にだけに許される特権だ。
彩はきっと固まったことだろう。
―END―
以上、ifの彩と精菜(怜次)サイド話の続きでした〜。
中2になってる二人です。
もうお互いがお互いを好きだって、とっくに気づいてる感じですかね。
彩がサッカー部のキャプテンに告白されたってのは本編と同じです。(修学旅行話参照で!)
彩は可愛いので昔から告白されまくりです。もちろん即断ってますが。
ちなみに怜次もされまくりだったりするのですよ。もちろん断ってますが。彩LOVEだからね。
怜次はもうちょっと幼馴染の関係を続けたかったみたいですがね。(中2は色々悩めるお年頃なのですよ…w)
次は彩視点ですかね!