●if side:怜次J●〜怜次視点〜
「緒方君、LINE交換しようよ」
「…いいけど」
Wデートの帰り際、俺は彩の親友の彼氏である細川塁斗と連絡先を
その後すぐに春休みに入ったわけだけど、俺らは何故か頻繁に連絡
囲碁と将棋でゲームの種類こそは違うけれど、同じような畑にいる
そして
『よかったら家に遊びに来ない?』
というお誘いまで受けてしまったのだ――
「緒方君、待った?」
「いや、今来たとこ」
指定された駅に着いて合流し、歩くこと10分。
「オレんちここ」
細川君の家に到着した。
男友達の家なんて何年ぶりに来るんだろう。
小学校低学年以来?
ちょっと緊張する。
「何か飲む?」
「何でもいいよ」
「コーヒーでも?」
「うん。出来たらブラックで」
「了解。階段上がってすぐ右の部屋だから、先行ってて」
「分かった」
細川君の部屋は南向きの8畳程度の洋室だった。
部屋の中央に置かれている将棋盤と駒が、いかにも奨励会員っぽい
本棚にも将棋関係の本ばかりが並んでいた。
もちろん机の上にはパソコンも。
将棋は囲碁以上にAIでの研究が欠かせないと聞く。
「お待たせ」
細川君がマグカップ2つをテーブルに置いた。
「ありがとう。そういえば例の棋王戦の記録って明後日だっけ?」
「うん、そう。明日の前夜祭でもちょっと喋らなくちゃいけないら
「そうなんだ?自己紹介とか?」
「うん…、たぶん。あと戦型予想とかかなぁ?」
「何が来ると思う?」
「んー…、対局者二人とも居飛車党だから角換わりかなぁ…」
「ふーん…」
「緒方君はタイトル戦で何かしたことある?」
「大盤解説は1回だけあるよ。父とのダブル解説で」
「へー!それっていつの話?」
「去年の名人戦、第1局。夏休みだからお願い出来ませんかって事
「へー!すっげぇ…」
とりあえずLINEでも話してるような会話を続ける。
でも、わざわざ俺をここに呼んだってことは、何か他に話があるん
LINEでは聞き辛いこと……となると―――
(恋愛関係とかか?)
とりあえず
「後藤さんもここによく来るの?」
と聞いて探ってみる。
すると細川君の顔がほんのり赤くなった。
「いや…、来たこと無いよ」
「そうなんだ」
「でも…、実は今度誘ってて…」
「へぇ…、それって親が留守のタイミング?」
「一応…」
「ふぅん…」
もちろん、期待してのことだろう。
でもこの反応……おそらく細川君と後藤さんはまだ経験が無いと
「緒方君は……進藤さんと、…シたことある?」
「…あるよ」
「そうなんだ…、さすが」
「でも一線越えたのは最近だよ。だからまだ数えるくらいしかして
「へぇ…」
入れて貰ったコーヒーに口付ける。
そういえば彩と初めてした時も直前にお互いコーヒーを飲んでいて
「一応準備はしてみたんだけど…」
「ああ…ゴム?アレ、付ける練習しておいた方がいいよ。焦るか
「だ、だよな…」
「あと意外とすぐ無くなるから、多めに買っておいた方がいいかも
「え…?数えるくらいしかしてないのに?」
「日数的には少ないけど、毎回1回で終わらないから…」
「え、最高何回した?」
「5回…かな」
「いやいやいや…、死ぬでしょ」
「いや、休憩しながらだと意外といける」
「へ、へぇ…」
でもそれは彩が泊まってくれたからであって、今回の細川君みたい
その後も細川君が気になってる点に俺なりにアドバイスしていく。
でも、結局のところは人と人との触れ合いなのだ。
気持ちが一番大事だ。
「ただ性に興味があるからセックスしたいっていうんじゃなくて、
「そうだよな…」
「俺、最中に彩にめちゃめちゃ好き好き言ってるからな」
「え?意外…」
「いや、口が勝手に…。でも彩が私もって返してくれた時はめっ
「へぇ…、緒方君って本当に進藤さんのこと好きなんだね」
「もちろん。今すぐ結婚したいくらいに」
「はは…」
笑われたけど、俺にとっては切実な本心だ。
その為に今頑張ってると言っても過言じゃないくらいに。
「今日はありがとう。俺の周り、他に彼女持ちの奴いないから助か
「上手くいくといいな」
「うん…、頑張ってみるよ」
「その前に記録だけどな」
「そっちは死ぬ気で頑張るよ」
「そこまで気張らなくても大丈夫だと思うけど」
たかが記録だしな…。
そういう俺も、同じ日に大事な一局がある。
彩の父親、進藤本因坊との名人リーグだ。
俺も死ぬ気で頑張ろうと思う。
対局を終えて携帯を触ると、彩からLINEが来ていた。
『明後日、楓と細川君、初エッチするんだって。私も怜次としたい
俺が直ぐ様お誘いメッセージを返したのは言うまでもない――
『いいよ。明後日、俺んち来る?』
以上、男子トークでした〜。
明後日は十段の防衛で緒方先生は留守なのだーv