●if side:怜次●
「怜次、今日の放課後碁会所行こ?」
「…また?」
「お願〜い!怜次かお姉ちゃんが一緒でないとお父さんが行っちゃ
「はぁ…、仕方ないな。1時間だけだからな」
「うん♪ありがとう怜次!大好き!」
「……」
俺の名前は緒方怜次。
海王小学校に通う4年生だ。
父親はプロ棋士の緒方精次棋聖。
だから俺も小さい頃から否応なしに碁に触れていて、それなりに打
で、今俺に碁会所に行こうと誘って来たのが、幼なじみの進藤彩。
父親は進藤ヒカル本因坊で、母親は塔矢アキラ名人という、俺と同
彼女の最近の趣味は碁会所巡りをすること。
10歳の女の子の趣味としてどうなんだ?って感じだけど、おじい
彩は人懐っこくて誰にでも愛想を振りまく八方美人だから、碁会所
そんな彼女が、夏休み明けに突然言い出した。
「怜次、院生にならない?」
「院生…?なんで?」
「だって楽しそうじゃん!若獅子戦で院生で優勝したいし!」
「若獅子戦ねぇ…」
「だからお願い!一人じゃ心細いから一緒に院生になって!」
「まぁ…いいけど」
「ありがとう怜次!大好き!」
「……」
俺は彩にとことん甘い気がする。
お願いされたら断れない。
これが惚れた弱みってやつなんだろうか……
いつから好きになったのか分からないけど、俺は彩が好きだ。
顔もあり得ないくらい可愛いが、性格も、仕草も、話し方も彩は全
もちろんいつかは告白出来たらいいなと思うけれど、しばらくは幼
今はその方が楽しいからだ。
下手に付き合うより余っ程。
「棋譜3枚いるんだよね〜誰に打って貰おうかな〜」
院生の志願書には棋譜も付けなくてはならない。
(お父さんが塔矢門下の研究会に行く時付いて行って、まとめて打
彩の頼みだから院生にはなるけど、俺は別にプロになる気は更々な
もちろん既にプロ試験くらい受かる自信はあるけど、どうしても一
父や彩の両親みたいな熱量は俺にはない。
でも他に目指したい職業もないので、習い事感覚でしばらくの間彩
院生試験をすんなりパスした俺らは10月から研修に通うことにな
もちろん最初はC組からのスタートだ。
もちろん俺達には物足りない。
「ね、怜次。A組の子達に打って貰わない?」
「…いいけど」
院生研修が終わった後、彩がA組の人達に声をかける。
三大タイトルを保持している親を持つ俺らには、A組の人達も興味
そこで出会ったのが、院生1位2位の京田さんと柳さんだった――
「悔しい!!」
帰り際、彩が叫ぶ。
彩は柳さんに負けたのだ。
相手は中学3年生で5歳も年上だから仕方ない――では済まされな
彩の目標は若獅子戦で優勝することだ。
同じ院生に負けてるようでは話にならない。
「来週もう一回リベンジしてやるんだから…」
彩が燃えていた。
ちょっとだけ……羨ましくなった。
(今日は観戦してただけだけど、次は俺も打ってみようかな…)
翌週、彩は柳さんにリベンジし、無事勝利した。
そういう俺も、京田さんと対戦してみる。
(へぇ…、確かに強いな)
(これが今の院生のトップの実力か…、ふーん)
口元が緩んだ気がした。
俺は京田さんに完勝とも言っていい内容で勝利する。
呆然とする京田さん――今の院生1位。
「怜次って強かったんだねぇ…」
盤面を覗いてきた彩が呟く。
「…まぁ、彩よりはな」
「ひどーい!」
「はは」
翌年秋に行われたプロ試験。
彩が女流枠で合格出来そうだったので、俺もちょっと本気出して合
一緒にプロとしてスタートすることにしたのだ。
もちろん、一生続けるつもりはないという気持ちに変わりはない。
でも――あの時京田さんに勝って、ちょっとだけ楽しかったのだ。
ああいう碁がまた打てるのなら、プロになるのもちょっとアリかも
とりあえずは、彩に変な虫が寄ってこないよう傍で見張ってようか
その上でプロを続けながら、本当に自分がしたいこと、将来の夢で
俺の前をご機嫌に歩く彩。
「…好きだよ」
彼女がクルッと振り返る。
「え?怜次何か言った?」
「何でもないよ…」
そしていつか彩に気持ちを伝えれたらと思う。
―END―
以上、ifの本編で全く出てこなかった、彩と精菜(怜次)サイド話でした〜。
佐為が女の子なので、精菜は男の子です。精次と怜菜さんの名前を逆にして、名前は怜次君です。
既に精菜と別人ですが、まぁプロを長く続ける気はないってところと、プロになって傍で見張るところは同じです。
男の子になった精菜はめちゃ強ですよ!男の子佐為並みかもよ!中3の京田さんなんて一捻りですよw
でもってifでは佐為が京田さんとラブラブになってしまったので、精菜はもちろん彩とです。
ヒカルと緒方さんが話してましたもんね。もしお腹の子が男の子だったら彩君をいただくぞって。
いつぐらいに告りますかねー。中2くらいかな?