●HIKARU TOHYA●
進藤と付き合い始めて早3年。
そろそろ結婚を匂わせてくる彼。
だが僕の中では進藤は『遊び』でしかなかった。
彼と結婚なんて考えられない。
ありえない。
「進藤、大事な話があるんだ」
『奇遇だな。オレも大事な話あるぜ』
「明日直に話そう」
『おう』
電話を切った後、僕は覚悟を決めた。
明日―――9月20日は進藤の誕生日。
もうこの遊びに終止符を打つ日にしよう。
別れよう。
ごめんね。
三年間……楽しかったよ。
「塔矢〜こっちー」
「お待たせ。進藤」
駅前で待ち合わせて、一緒にお目当てのレストランへ向かった。
ここは彼が僕に告白してくれた思い出のレストラン。
僕なりに悩んで悩んで悩んで……結果、付き合うことにした。
彼は『遊び』でも付き合いたい大きな存在だった。
「塔矢、あのさ…」
「進藤、その…」
オードブルに手をつけながら、同じタイミングで話し出した。
「結婚しよう」
「別れよう」
またしても同じタイミング。
「「え…?」」
同時に耳を疑った。
「塔矢…今なんて…」
「…別れようって言ったんだ。だからキミのプロポーズは受けれない」
「なん…で?意味分かんねぇ…」
「キミとの恋人ごっこはすごく楽しかったよ。いい思い出になった。でも、僕は元々キミとは結婚する気がなかったんだ。これ以上この関係を続けるのは無意味だから…別れよう」
「マジ…かよ」
少しキツイ言い方かもしれない。
でも、これが僕の本音。
このくらい言わないと、彼は僕を諦めないだろう。
「…オレのこと…嫌いなのか?」
「そうじゃない」
「じゃあオレが仕事のライバルだからか?両立出来る自信あるよ?公私混同なんかしないし」
「そうじゃないんだ」
「じゃあ何なんだよ!実は独身主義だとか?!」
怒鳴った進藤が、怒りにまかせてガタンッと椅子を倒して立ち上がった。
ああ…そうだね。
キミが怒るのは当然だ。
三年間も付き合っておいて、一方的に僕が断ち切ろうとしてるんだから。
「…結婚はするよ。たくさんお見合い話が来てるし…その中から選ぶ」
「はあ??何言ってんだよオマエ!それこそ理解出来ねー!なんでオレが駄目で、よく知りもしない見合い相手がいいわけ!?」
「キミが僕の結婚条件に合わないからだ」
「は?結婚の…条件?」
「ああ。僕の中でどうしても結婚に譲れない条件がある。キミはそれに合わないから…」
「何なんだよ…その条件って」
「それは…」
『長男じゃないこと』
途端に進藤の目が点になって、笑われた。
「なぜ笑うんだ!僕は一人っ子なんだ。家を継がなくちゃならない。だから、昔から婿養子を貰おうって決めていたんだ」
「はは…真面目なオマエらしいな」
「キミは長男じゃないか。しかもキミも一人っ子…絶対に結婚なんか出来ない!」
「出来るって。オレ、婿養子に入ってもいいぜ」
え…?
「うちの親、家を継ぐとかそんなことに興味ないし。つか親父だって次男だし、長男のおじさんには息子三人もいるからオレ一人くらい出ていっても進藤家的には何にも問題ねーよ」
「そうなの…?」
進藤が茫然と椅子に座ってる僕の手を引っ張って、起こされた。
そっと抱きしめられる。
「…他は?オマエの結婚条件ってそれだけ?」
「あ…ああ」
「なんだ、ずいぶん簡単なんだな。じゃあオレのプロポーズ受けてくれるよな?もう一回言うから」
『結婚しよう』
耳元で囁かれた申込に、僕は頷くしか出来なかった。
…あんなに悩んだ時間は一体何だったんだ。
この三年間、僕はずっと『遊び』だと割り切って…ずっと罪悪感を抱いていた。
なのに、こんなにもあっさり……
「あーよかった。せっかくの誕生日が最悪になるとこだった」
「すまない…僕てっきり…」
「いいよ。もう最高の日になったし。それよりさ、おめでとうって言って?」
「ああ…おめでとう、進藤。23歳だね」
「ありがと。へへ」
この後――ホテルに移動して一晩中愛し合った僕ら。
進藤の誕生日に婚約をした僕達は、僕の誕生日に入籍をする。
こうして進藤は『塔矢ヒカル』となった―――
―END―
以上、婿養子話第一話でした〜(笑)
はい、こうしてヒカルは塔矢ヒカルになったのです。
(続きは『アキラ子なんですっ!』参照で 笑)
進藤家にお嫁に行くアキラさんも素敵ですが、塔矢家に婿養子に入るヒカルも何だかいいよねvv
たぶん小さい時から婿を貰うと心に決めていたアキラさん。
ヒカルが一人っ子だと知った時はショックだったことでしょう…。
そんな大好きなヒカルから告白されて、結婚は出来ないけど…少しぐらい付き合うだけならいいよね…と交際。
これは遊びなんだー!と頑張って自分に言い聞かせてたんだと思います(笑)
一言ヒカルに相談すればいいのにね。
勝手に突っ走るのがアキラ嬢なのです。。。
あ。この話は一応ヒカルの誕生日話でもあるので、おめでとう!ヒカル!!