●HERSELF●
オレが付き合う女のタイプはだいたい決まっていて。
そして彼女達が塔矢の存在を知ると、たいていすぐにオレはフラれる。
「バッカじゃないの!?さっさと本人に告白すれば!?」
その日は棋院の前でフラれて、しかも運悪く塔矢に一部始終を見られてしまった。
「大丈夫か?」
と去り際に一発くらって赤くなった頬を心配そうに触れてくるもんだから、誰のせいだよ!とオレは拗ねてみた。
「…いい加減諦めれば?」
「やだね」
「でもこの手の顔は気が強い人が多いよ」
「………」
「僕の母だって一見大人しそうだけど、父は母に頭が上がらない。僕の家はかかあ天下なんだ」
「ま、マジで…?」
オレは塔矢の顔が好きだった。
好きなんてもんじゃなくて、めちゃくちゃ好みでドストライクだった。
でも、性格がおっかないコイツとはどうしても付き合う気にはならなかったのだ。
だから他のコイツ似の女の子を探してたのに。
見た目がそっくりで、でも中身がもっと優しくて可愛くて、男の三歩あとを付いてくるような大和撫子を――
でも現実そんな子はいなくて。
おっしゃる通り皆気が強い。
しかも美人はプライドが高いので、自分が他の女の身代わりだなんて許せないらしいのだ。
尤も、オレは別に身代わりになんてしてるつもりはないんだけど、そう勘違いされるのだ。
「あーあ…オマエの性格がもうちょっとマシだったら、こんなに苦労することなかったのになぁ」
是が非でも塔矢を手に入れただろうに――
「失礼な奴だな。だいたい前から思っていたんだが、キミの食わず嫌いには程がある。一度僕と付き合ってみてから結論づけるべきだ」
「食わず嫌いって…、こんな昼間っから下ネタですか塔矢さん」
「揚げ足とるな」
「でもま、一理あるかな。諦めて付き合ってみるか〜オマエと」
「なにその上から目線…」
「ごめんごめん。オレと付き合ってv塔矢」
「のぞむところだ。今まで僕を避けていたことを後悔させてやる」
「はは…期待してるよ」
半分諦めモードでいざ塔矢本人とお付き合いを始めてみたオレ。
囲碁を通すとまるで鬼なコイツだけど、一歩離れると意外と可愛い面があることにすぐに気付いた。
確かに、今までの遠回りをオレは後悔することになったのだった――
―END―
以上、遠回りなヒカル君でした〜。
そうだよヒカル、最初っからアキラと付き合いなさい!