●DON'T HATE●





「無理すんなよ塔矢…。今日はもう終わろうぜ…」

「………うん」




そう言って僕から体を離した進藤は……そのまま部屋から出て行ってしまった。

戸を閉められた瞬間に安堵の溜め息を吐く僕。

最低だ。

ホッとしてる自分が憎くて情けなくなる。

大好きな彼氏と体を合わせてるはずなのに…。

触れられて嬉しいはずなのに…――



『痛い』

『苦しい』

『気持ち悪い』

『汚い』



こんなことしか感じない僕は……きっとセックスが嫌いなんだと思う。

もちろん抱きしめられたり、キスしたりするのは嫌いじゃない。

だけどそれ以上のことをするのは…――







「塔矢、オレもう帰るな」

「え…?泊まっていかないのか?」

シャワーを浴びてきたばかりで、まだ上半身が裸の進藤が、髪を拭きながら苦笑いしてきた。

「ごめん。一緒に寝たらまた我慢出来なくなりそうだし…」

「…そう」


不完全なまま終わって、まだ物足りなさそうに僕の体に視線を移してくる。

シーツで体を隠して軽く拒否をする僕を見て…進藤は諦めたように服を着始めた。


「じゃあ…また明日な。おやすみ」

「おやすみ…」



進藤は優しい。

いつも僕の気持ちを優先してくれる。

僕らぐらいの歳だと、本当はしたくてしたくて堪らないはずなのに…。


ごめんね進藤…。

本当にごめん…――
















「塔矢、今日もオマエん家で検討していい?」

「…いいけど」


それでも進藤は事あるごとに僕の家に来たり、僕を彼の家に誘ったりしてくる。


そして対局や検討が一通り終わると――



「――ん…っ」



僕にキスして…そのまま畳に押し倒してきた。

遠慮気味に僕の胸に触れ…そのうち下半身にも手を伸ばしてくる。


「塔矢…イヤ?」

「………」


一応首は横に振っても、ずっと眉間に皺を寄せて…涙を滲ませてる僕を見て……進藤は少し僕から体を離した。

僕の目をじっと…見つめてくる。


「……な、塔矢」

「え…?」

「オレに触られるのイヤ?」

「そんなことは…」

「嘘だろ。だってオマエ、体中でオレを拒否してるじゃん。あんまし濡れないのがいい証拠」

「………」

「オレが嫌い?」

「まさか…」

「オレが下手だから?」

「そんなの…分からない」


キミ以外の人としたことないし…


「じゃあ…オレが他の奴ともヤったこと…あるから?」

「………」


それは…一理あるかもしれない。

進藤は僕と付き合うまで、色んな女の子と遊んでいた。

別に病気があるんじゃないかとか…そういうのじゃなくて、僕もその中の一人にすぎないんじゃ…ていうそういう不安。


「他の奴とオマエは違うぜ?アイツらは体が目当てだったっていうか…ちゃんと付き合ってたわけでもねーし」

「………」

「でも、それがオマエの拒否る理由になってるなら、マジ謝る。反省する。ごめんっ」

「………」


本当に焦ってる進藤を見ると…僕への気持ちは嘘じゃないってことは分かる。

つまり、男の人の心と体は違うっていうアレ…なのかな?


「もう…二度としない?」

「しないって!するわけねーじゃん!オマエがいるのに!」

「僕も遊びだったりしない?」

「しない!しない!」


進藤が上からぎゅっと抱きしめてきた―。


「オレにはオマエだけだから…。塔矢を抱いて…初めてオレ、エッチで満足出来たんだぜ?他の奴の時と全然違った…」

「………」

「今こうやって抱きしめあってるだけでもさ…、なんかすげー嬉しくなる」

「………」

「好きだよ…塔矢」

「………僕も」


小声で同意すると、進藤は少し微笑んで――優しく僕に口付けてきた。



「ん…っ…――」



何度も何度も長いキスをされながら……彼の手は僕の体を煽っていく――



「……いい?」

「嫌…」

「とーやぁ」

「嘘だよ…いいよ」

「今夜は途中で止めないからな…?」

「うん…」



僕の両足を大きく広げて……彼はゆっくりと中に挿れてきた―。



「――あっ…あ…ん…っ…ぁ…」



最初は優しく…徐々に激しく動かされていって――



「と…やっ」

「ひゃ…っ…――ぁ…ん」


奥に出された瞬間に僕も達っして…まるでそれを吸い取るかのように体が痙攣した―。



「…は…塔…や」

「ん…っ――」



繋がったまま何度も唇を合わせて――まだ冷静さを失ったままの僕らは…再び行為を開始した。



「あ…っ、あっ…、やっ…ぁ…―」




ここ最近、未完のまま終わってばかりだったからかな?

進藤は結局外が薄明るくなるまで続けて――僕もそんな彼を受け止め続けた。


















「中に出すとさ、なんか子作りしてる感じがしていいよな〜」

「本当に出来てもしらないから」

「いいよ。責任取るし」

「…もう」


進藤が僕の髪にキスしながら…そんなことを言ってくる。

優しく抱きしめられたままで行われるこの事後行為は…僕は好きだ。


進藤も満足して…

僕も満足して…

ゆっくりと眠りに落ちた。


…不思議。

今はそんなに…セックスが嫌いじゃない。

確かに相変わらず痛かったし苦しかったし…動物的で汚い行為には変わりないんだけど、『気持ち悪い』とは今は思わないかな。

むしろ…気持ちいい?

心地いい感じ。

そんなことを考えながら…僕も眠りについた。













―END―












以上、H嫌いのアキラ嬢のお話でした〜。
久々の更新なのに…どうよ?この内容…(笑)
まぁ深い意味もないのでさらっと流し読みしちゃってくださいなー。
でもね、アキラのことだから、他の女と関係の持ったことのあるヒカルを本気で『汚らわしい』とか思っちゃってるかもしれませんねー。
典型的な潔癖症。
ヒカルとはしたいけど…体が勝手に拒否する、みたいな。
ヒカル君もこれを機に反省するがいい。ハハハ〜(逃)