「ねぇねぇ!知ってる?!今日の院生試験の話!」
「緒方精菜と進藤彩だろ?ついに受けるんだってな」
「私さっき、緒方先生と進藤先生が一緒にロビーで話してたの見たよ」
「いやー!試験って保護者同伴だけど、この場合ってやっぱり先生達が保護者になるの?!」
「つーか絶対合格に決まってるよなー」
「あーあ、これでA組から2人落ちるの決定かー」
トイレから試験会場に戻ろうとしたら、院生らしき子達の会話が聞こえてきた――
今日は待ちに待った院生試験の日。
私と精菜はお父さん達付き添いのもと、棋院までやってきた。
付き添いって言っても、お父さん達は私らを白川先生に預けたら、すぐ下に行っちゃったけど。
ちなみに今の院生師範は白川先生だ。
お父さんの時は別の先生だったらしいんだけど、数年前に交代したみたい。
「えーと、進藤さんの方は…――お、初代北斗杯メンバーに打ってもらったんだね」
「はい、そうです」
白川先生が打つ前に棋譜チェックを始めた。
「緒方さんの方は緒方先生に芦原先生に笹木先生か。塔矢門下揃いだね」
「はい。先日父に連れられて塔矢先生宅に行った時に打ってもらいました」
白川先生は納得したように頷いて、棋譜を横に置いた。
「じゃあ早速打とうか。二面打ちになってしまって悪いね。今月試験受ける子が多くて」
その言葉が何を意味するのかは分かる。
つまり私たちのこの試験は形だけのもの。
私は今までに何度か白川先生と打ったことがある。
最初から実力の分かってる子に時間を割きたくないってことなんだろうな。
その証拠にこの対局は互い戦で始まった。
普通は何子か置くところだ。
そして盤面も半ば程で終了してしまった。
「どうして君達は院生になろうと思ったんだい?君らの周りは十分に最初から環境が整ってるし、この実力じゃきっと院生は生温いよ?」
「若獅子戦に出て院生で優勝したいんです!まだ誰もしたことないって聞いたから」
「あはは、なるほど。緒方さんは?」
「まだ社会に出るのは早いと思いますし、同年代の子ともっと打つ機会が欲しかったからです」
「なるほどね。それじゃあ対局場でも見に行こうか。他の皆もキミらが来るのを心待ちにしてるだろうしね」
「「はい」」
あっさりとあっという間に試験が終わり、さっそく対局場を見学することになった。
院生の研修はお父さんの時と同じ部屋で今も行われている。
A〜C組までの各20人、合計60人の院生。
来週の土日からついに私も精菜も仲間入りだ。
私達が対局場に入ると、ざわついていた部屋が一気にシーンとなって、全員がこっちに注目した。
「白川先生、もしかして…」
怖ず怖ずと聞いてきた子に、先生は笑顔で返した。
「うん。来週から一緒に勉強することになった、進藤彩さんと緒方精菜さんです」
「「よろしくお願いします」」
まずは目指せA組!
若獅子戦までに順位を駆け上がってやる―――
―END―
以上、院生試験話でした〜。
さすがに15年以上経つと、師範も代わってるよね…ということで白川先生にお願いしました。
たぶんそのまた15年後は伊角さんあたりな気がする(笑)
さてさてようやく院生になった彩たち。
他の院生たちと果たして上手くいくのかどうか…。
続きます。。。