●ESCAPE●
進藤ヒカルが好きだった。
ずっと好きだったけど、想いを伝えないまま終わった恋。
その時は、伝えたら終わっちゃいそうで怖かった。
でも伝えなくても結局終わるのだったら、伝えた方がよかったのかもしれない。
後悔してる。
きっと一生後悔し続けると思う。
「僕ね…キミのことが好きだったんだ」
昔ね、とちゃんと付け足して、思い出話のように彼に伝えた。
結婚式の二次会で、たまたま二人きりになった時だった。
絶好の機会だと思った。
今伝えないと、本当に一生後悔する。
「…初耳なんだけど」
「うん…言えなかった」
「じゃあなんで今頃になって?今日結婚式だぜ?オマエのな」
「最後に気持ちの整理を付けたかった」
「…オレにどうしろと?」
「別に…どうも。ただ伝えたかっただけだ」
「それ…嘘だろ」
「え…?」
手を捕まれて――会場から連れ出された。
外に出ると真っ暗で、闇が僕らの姿を隠してくれる。
振り返った進藤が…優しく包み込むように、僕の頬に両手を添えてきた。
「オマエの気持ち…めちゃくちゃ現在進行形に聞こえる。好きだった…じゃなくて、今もオレのこと好きなんだろ?」
「…分からない。でももう間に合わないのは確かだよ」
「誓いの言葉言っちゃったからか?披露宴開いちゃったからか?真面目だもんな〜オマエ」
「……」
「でもまだ入籍はしてないんだろ?ならまだ間に合うぜ?」
「無理だよ…」
「無理じゃない。オマエが望めば、一緒に逃げてやってもいい」
「…キミはそれでいいの?」
「…オレの気持ちも言ったことなかったよな。オレもずっと…塔矢のこと好きだった。怖くて言えなかったけど」
「同じだね」
微笑んだ僕の唇に、優しくキスを落としてくれた。
僕らにとっての誓いのキス。
唇を離した後―――僕らは会場を抜け出した――
―END―
以上、逃走話でした〜。
逃走と言っても仕事柄夜逃げするわけにもいかないので、とりあえずこの日はヒカルの部屋に泊っていちゃいちゃ。
翌日、新郎に謝りに行くんだと思います。
披露宴まで開いておいてなんて迷惑な…。
今回は披露宴後〜でしたが、いつか教会で式を挙げてる真っ最中にヒカルがバーンとやってきて、花嫁(アキラ)をかっさらう話が書きたい…な(笑)