●EARPICK●





「んーー…」

「どうかしたのか?」

「なぁ、耳かきか綿棒ある?」



今日はお昼から僕の家に打ちに来ていた進藤。

さっきから耳の辺りをやけに触ってるなぁ…と思ってたら、ついに聞いてきた。

はい、と耳かきを渡してあげる。


「そういえば最近掃除してなかったんだよな〜」

「ふーん」

「前は彼女が定期的に見てくれてたんだけどさ」

「そうなんだ」


進藤は一ヶ月前に一年付き合った大学生の女の子と別れた。

彼女って、彼氏のそんなとこまで掃除するものなんだ?

ふーん…参考にさせてもらおう。

いつかの為に。



「…やっぱ自分で取るのって難しいな」

「そう?僕はいつも自分で掃除してるけど」

「明子さんにしてもらってないんだ?」

「僕を何歳だと思ってるんだ。してもらってたのは小学校の低学年ぐらいまでだよ」

「じゃあ、他人のをしたことは?」

「……ない」

「ふーん」


進藤がニヤニヤ笑ってきた。

悪かったな、どうせずっと独り身だよ。

彼氏なんていたことないよ。

でも、例え彼氏がいたとしても、耳掃除なんて…するかどうかは男次第だと思う。

世の中はキミみたいな甘えん坊ばかりじゃないからね!


「な、練習してみない?」

「…キミは自分でしたくないだけだろう?」

「何だよ、人が好意で耳を貸してやるって言ってんのに。将来困ってもしらねーぞ!」

「……」


確かに…自信はない。

例え彼氏にすることはなくても、将来子供を産んだら絶対にしてあげなくちゃならないことだし。

もし下手だったら、泣かれて…耳掃除嫌いになるかも。

それは困る。


「…じゃあ少しだけ」

「マジ?してくれんの?」

「うん…」

やったー!と喜んだ進藤はご機嫌に僕に近付いてきた。


げ……そうだった。

耳掃除ってもしかして…もしかしなくても、膝枕じゃないか…!!


「へへ♪」

戸惑う暇もなく、進藤が僕の膝に頭を載せた。

顔の温度が一気に上昇する――


「ほら、早く早く」

「う…ん」

戸惑い気味に彼の耳に手をかけた。


あれ?意外に綺麗?

というか…というか、耳かきより進藤の視線が気になって仕方がない。

ど、どこを見てるんだ??

ちょっと近付き過ぎじゃない??

おへそまで、5cmぐらいしか開いてないんですけど!!


「…塔矢の匂いがする」

「ちょっ…、嗅ぐな!変態!」

「すげー落ち着く…」


進藤の手が僕の腰に回ってきて…まるで抱きしめられてるみたいな態勢になった。

心臓がありえないくらいバクバク鳴る。


「…塔矢、手が止まってるぜ?」

「だっ…て、キミが…」

「オレがなんだよ」


回されてた手を離され、今度は顔を上に向けてきた。

これだと本当の膝枕。

耳の穴は見えない。


「塔矢?」


進藤の手が…今度は僕の真っ赤な顔に伸びてきた。

頬を触られたと思ったら…



プニッと抓られた。



「何をするんだ!!」

「だっておもしれー顔してるから」

「もう降りろ!もう充分綺麗だ!」

「やだ!」


またしてもぎゅっと纏わり付いてきた。


「…膝枕ってすげー落ち着くんだもん」

「なら、また彼女でも作ればいいだろう!」

「塔矢がいれば彼女なんていらねーし」




は…?




「…やっぱオマエの側にいるのが一番落ち着くし…安心出来る」

「進藤…?それって……」

「お母さんみたいだよな…オマエって」



は?

お母…さん?



ドンッと膝から突き落としてやった。


「…ってー、何すんだよ!」

「もうキミなんて知らない!帰れ!」

「はぁ?何怒ってんだよ。意味分かんねー」



キミの方が意味分からないよ!!

もう二度と、キミの耳掃除なんかしてやらないんだから!!










―END―










以上、耳かき話でした〜。
甘えん坊のヒカルに振り回されてアキラさん大変ですね(笑)
最後でもう二度としない!と言ってましたが、たぶん今後もヒカルに求められたらしぶしぶしてあげてそう(笑)