●CONFLICT 〜おまけ〜●


※これはヒカアキが泊ったホテルのスタッフ視点です※








うちのホテルは当日プランというのもある。

結局空室のままで終わりそうな部屋を通常より割引して提供している。

急遽宿泊が必要となった近隣の会社から重宝がられている人気プランだ。


もちろんカップルもよく利用している。

私も経験があるから気持ちは分かる。

だって、流れ次第でお泊まりに発展することだって、よくある話でしょう?


今日も次々に予約が入ってくる。

今の時代、宿泊予約はネットが当たり前。

よほどでない限り個人の予約で電話や飛び込みなんてありえない。

リアルタイムで続々と送られてくる予約通知に、私はある名前を見つけてスクロールを止めた。




――進藤ヒカル――




あの進藤ヒカル?

本人だろうか?

チラリとロビーを見渡した。

ちょうどその時、エレベーターから降りてくるまさにその張本人。




……カッコいい……




フロントに真っ直ぐ向かってきて、私のすぐ横のカウンターでチェックインを始めた。

彼の所属する日本棋院からここまで、信号に引っ掛からなかったら5分もかからない。

たったの2キロの距離。

スーツではないから、仕事ではない?

一人なんだろうか?


彼が予約した部屋を確認すると、ダブルで、宿泊人数も2名になってて、ちょっとショックを受ける。

え〜〜誰と泊まる気?

しかも高層階フロア指定の朝食付きプラン。

え〜〜




鍵を受け取った彼はまたエレベーターへと姿を消した。

チェックインを担当した横の後輩スタッフに小声で声をかける。


「進藤ヒカルだったね」

「ですね。緊張したぁ」

「誰と泊まるんだろね?」

「え?奥さんじゃないんですか?進藤ヒカルって既婚者ですよね?」

「バカね〜奥さんとわざわざホテルに泊まるわけないでしょ?前々から予約してあったのなら記念日とかの可能性もあるけど」

「あ、そっか。当日予約ですもんね」


しかも予約したのはほんの10分前。

ここに来る直前に申し込んだんだろう。


「気になるよねぇ」

「駄目ですよ、先輩。プロでしょ?」

「別に他言する気はないわよ。あんただってちょっと気になるでしょ?」

「そりゃあ…まぁ」

「よし、調査調査♪」



うちの朝食会場は3つある。

和食、ビュッフェ、軽食だ。

軽食はおそらく無し。

普通はビュッフェだけど、和食会場の方が空いてるし個室もあるから、ほぼ芸能人といえる彼が利用するのはこっちか?

念のため両方の仲のいいスタッフに連絡する。

「明日の朝、進藤ヒカルが誰と一緒にいるのか教えてね」と。


「お疲れ様でした〜」

私が勤務を上がる時、明日のチェックアウトまで担当する同僚にも声をかけておく。

そして明日を楽しみに帰ったのだった。











翌朝。


「え?塔矢アキラだった?」

「はい。奥さんでしょ?仲良く二人でビュッフェ食べてましたよ」

「チェックアウトも奥さんがしてましたよ」

「え〜〜そうなの?何かガッカリ〜。東京に住んでるのに何でわざわざ泊まるかねぇ…」

「進藤ヒカルが人気なのは、愛妻家で有名だからでもあるんですよー。彼に限って不倫とか無いですから」

「だよねぇ…そりゃそうか」


拍子抜けした私は、また他のゴシップネタを密かに探しに仕事に戻るのだった――






―END―







珍しいものを書いてしまったわ〜(笑)
CMに出まくってるヒカルはほぼ芸能人なのですよw
当日プランと言えどもヒカアキの泊った部屋は一泊3万はするのですよw