●COHABITATION●
塔矢と同棲を始めて早一年。
最近気付いたことがある。
毎晩決まって寝る前に、アイツが必ず薬を飲んでるってことだ――
「何の薬?オマエどこか悪いの?」
「別に。ただの栄養剤だよ」
「ふーん…オレにも頂戴?」
「駄目」
「ケチ」
同棲しているとはいえ、塔矢の要望でオレ達は部屋が別々だ。
基本寝るのも別。
エッチがしたい時だけ塔矢の布団に潜り込むか、オレのベッドに引っ張り込むか。
同棲して一年経つけど、それでも結局週に二、三回は一緒に寝てるかな。
結構いい関係だと思う。
結婚は?ってよく聞かれるけど、オレ的にはいつしてもいいと思ってるし。
避妊はしたりしなかったりだから、そのうち子供が出来るだろうし。
そしたら籍入れようかな〜なんて考え中。
「じゃあ進藤、お休み」
チュッと軽くキスをして、自分の部屋に帰ろうとした彼女の手を掴んだ。
「…進藤?」
「へへ。今夜…いい?」
リビングのソファーで、そのままなだれ込もうと押し倒した。
「あ…待って」
「待てない」
「本当に、ちょっとだけ待って。ちょっと部屋に…。すぐ戻ってくるから」
「じゃあオレも行く。今日はオマエの部屋でする」
「……」
部屋に戻った後、引き出しから慌てて取り出したのはいつもの薬。
こんな時にまで栄養剤か?
「ごめん。お待たせ」
「……オマエって、そんなに体力ないの?」
「え?」
「栄養剤なんだろ?」
「うん…栄養剤というか…ホルモン剤というか……」
「ホルモン?」
「……」
何だか嫌な予感がして、引き出しに片付けられたその薬を再び取り出した。
毎晩寝る前と印が付けられた処方薬。
どう見てもただの栄養剤じゃない。
添えられていた説明書を流し読むと―――
「オマエこれって…」
「……」
「もしかして…ピル?」
「……うん」
ハッキリと頷かれて、ショックで頭が真っ白になった。
何でショック?
偉いじゃん。
避妊を男任せにしないで、ちゃんと自分の身体を管理出来てる。
ああ…そうだな、オレのせいだ。
オレが毎回きちんと付けてれば、コイツがこんなもの飲む必要なかった。
偉いよ、さすが塔矢。
でも…やっぱり……ショックかも……
「オレがズボラだったせいだよな……ごめん」
「キミのせいじゃない。僕の勝手な都合なんだ。今はまだ欲しくない…って」
「オレの子供なんて欲しくない…か、そうだよな…」
「違う!そこは勘違いしないでくれ!今はまだ仕事を優先したいし、結婚もしてないし、出来たら困るだけだ。でも、いつかは欲しいって僕も思ってるよ」
「塔矢…」
珍しく彼女の方から抱き着いてきてくれた。
真剣な顔。
少しでもコイツの気持ちを疑ったオレが馬鹿だった。
それに、出来たら結婚しようとか…軽く考えてた自分が情けない。
「僕は…生涯を共に過ごすのはキミしかいないって思ってる。僕にはキミしかいないんだ」
「オレもだよ。オマエさえいれば…」
「栄養剤とか嘘ついてごめん。これからはきちんとキミに話すよ」
「うん」
同棲して一年。
ただの彼氏彼女から、気持ち的に少し夫婦に近付いた夜だった――
―END―
以上、ピル話でした〜。
ええ、ヒカルなんかに避妊任せてたら大変なことになりますよねアキラさん(笑)
うちのヒカルはアキラには基本避妊に消極的なので困ったものです。
出来たら結婚という考え、もしくは結婚したいが為に子供を作っちゃうのです(笑)