●CHILDFOOD FRIEND V●
「塔矢さん♪」
「あ、藤崎さん。こんにちは」
「こんにちは〜。今年も同じクラスですね」
「みたいだね。よろしく」
GW目前の4月下旬。
毎年この時期に行われる参観日の為に、私は小学校を訪れた。
そこで同じように来ていた塔矢さんに出くわした。
私の娘も、ヒカルと塔矢さんの双子の子供達も、同じ海王小学校の5年生。
双子は絶対にクラスは離される。
娘は去年は葵ちゃんと一緒だったけど、今年は奏君と一緒だ。
「そういえば、佐為君結婚されたんですか?おめでとうございます」
「ありがとう」
18歳で結婚したヒカルと塔矢さん。
一番上の子供の佐為君はもう22歳で、あり得ないほど美形に成長していた。
プロ試験に受かったあたりからメディアに姿を見せるようになり、囲碁雑誌はもちろん、一般の雑誌でも頻繁に姿を見かけるようになった。
ファッション誌の表紙を飾ることもザラで、実は私も買っちゃったことがある。
そして今年に入ってついにテレビCMにまで出てしまった彼。
しかも、航空会社の。
CMの内容もちょっとリアルで、三冠の彼がタイトル戦の為に飛行機を利用して対局地に向かう一連の流れが上手くストーリー化している。
めちゃくちゃカッコいいCMで、ファンの数は何倍にも膨れ上がったそうだ。(お昼のワイドショーで言っていた)
でもここにきてその佐為君の結婚!
今世の中は佐為ロス現象が起きているのだ。(それもワイドショーで言っていた)
「お嫁さん、緒方女流棋聖なんですね」
「うん」
お相手の緒方精菜女流棋聖。
この塔矢さんから去年女流棋聖のタイトルを奪取した、女流では桁外れの棋力の持ち主だ。
夫婦揃ってタイトルホルダーだなんて憧れる。
ヒカルと塔矢さんみたいだ。
「でも精菜ちゃんはもう今月いっぱいで引退するみたいだよ…」
「そうなんですか?」
「勿体ないと僕も思うけどね…。佐為を支えることに集中したいみたい」
「でもプロを続けながらでも支えることって出来ますよね?ヒカルと塔矢さんみたいに…」
塔矢さんが「ふふ」と笑ってくる。
「僕はヒカルを支えたことなんて一度もないよ」
「……え?」
「ヒカルと僕はライバルだからね。どうやって蹴落としてやろうかとか、お互いそんなことばかり考えてる」
「……」
塔矢さん曰く、佐為君とお嫁さんはそういう関係じゃないそうだ。
佐為君がタイトルを取れたのも彼女の支えがあったから。
そもそも近くで支える為に彼女はプロ棋士になったらしい。
プロを辞めることに、ひと欠片の迷いもないそうだ。
「二人が決めたことなら僕らが口を挟むことじゃない。二人が幸せになってくれるのが……親としての一番の願いだからね」
「塔矢さん……まだ40なのに、もうそんなこと考えてるんですね…」
「本当にね。ヒカルのせいで僕の人生が狂ってしまったよ」
いい方にも、悪い方にも――と。
一緒に笑ってしまった。
「きっとすぐお孫さんも出来ますよね。40で孫がいるなんてちょっと複雑ですね…」
「本当にね。家族が増えるのは楽しみでもあるけどね」
授業参観が始まった。
奏君と娘は隣同士の席だった。
ヒカルと同じで前髪が金髪の奏君は小さい頃のヒカルと瓜二つだ。
私の娘も私にそっくり。
懐かしい光景がそこにはあった。
きっと娘も奏君が好きになるんだろうな。
既にプロ棋士を目指して院生になってる奏君に近付きたくて、娘が囲碁を始めるのも時間の問題だと思う。
私が教えてあげようかな。
ヒカルが始めたから私も始めた囲碁。
今でも私は続けている。
きっと、娘の為に続けていたんだと思う。
私が叶えられなかった夢を、娘が代わりに叶えてくれたらいいのにな。
……なーんてね。
―END―
以上、40歳になったあかりちゃんのお話でした〜。
娘ちゃんと双子は同級生みたいですね。
海王小学校はひと学年4クラスという設定です。
双子は必ず離されるので、2分の1の確率で同じクラスになりますね。
お話的には佐為の結婚直後あたりの4月です。
世の中は佐為ロス現象が起きてるらしいです(笑)
さて、その佐為がしぶしぶ出た航空会社のCMは実は2パターンあります。
一つはあかりちゃんも言っていたタイトル戦の為に地方に向かうバージョン。
もう一つは国際棋戦の為に海外に向かうバージョンです。
こっちはエアバス新機体の宣伝も兼ねています。
てことで実は羽田の第3ターミナルはもちろん、成田も関空もセントレアも佐為の広告だらけなんですよw
次の視点リレーはヒカアキの次女、双子の妹の葵ちゃんです。
YouTuberな葵ちゃんが佐為のハワイ挙式をリポートしてくれまーす!